夏色の物語たち

神崎漓莉

文字の大きさ
3 / 3

風車が静かに回る

しおりを挟む
 近所のお祭りに来たのは、ずいぶん久しぶりのことだった。小さい頃はいっつも楽しみにしていたけれど、大きくなるにつれてだんだん近所の、いつもと同じ顔ぶれの人たちとわざわざ会ったりするのが煩わしくなってしまったからだ。
 たぶん、言っちゃえば反抗期みたいなもの。
 それで顔を出さなくなったら、なんだかそっちの方が楽になってしまったのだ。お祭りに顔を出しているんだったら、友達とちょっと遠くのショッピングモールに行ってる方が楽しかったし、お祭りで見るお神輿よりも、隣街で見るイルミネーションの方が見ていて目を奪われたし、心も奪われた。

 そんな風にしてすっかり離れていたお祭りに、久しぶりに出ることになったのはわたしの意思ではなくて、呼ばれたから。
 昨夜、急に絵茉えまから『明日のお祭り一緒に行こうよ』って呼び出されて、慌てて浴衣とか探して今に至る。

 神社の鳥居の下には、よく見ると小さい落書きがちょこちょことある。昔人気だったキャラクターとかも描かれていたりして、ちょっと歴史を感じる?みたいな感じ。
 何組かの人たちが鳥居を潜って通り過ぎていくのを見送った頃、絵茉が「ごめ~ん!」と笑いながら走ってきた。

「あっ、絵茉! どうしたの、もうお祭り始まってるよ?」
「せっかくだからもうちょっと気合い入れようかな、とか思ってたらすっかり時間かかっちゃって!」
 申し訳なさそうな、そうでもなさそうなはにかんだ笑顔。まぁ、学校のみんなが揃ってこの笑顔にコロッといっちゃうのも、なんとなくわかるかな……?

「ん、ていうか、何それ?」
「えっ、あー、えっとね……なんかさっきそこで風車かざぐるまもらったんだ。なんかね、『願い事がある人に』って配ってる人がいて」

 うわぁ、怪しい……。ていうか、さっき来たときはそんな人いなかったけどな……。
 それに、ちょっとだけ気になることがあった。

「なんか、その風車《かざぐるま》、動き方変わってない?」
「えっ?」
 風車《かざぐるま》の回転は、風を受けているにしてはゆっくりしたもので、より近いもので喩えようとしたら、たぶん時計の秒針の動きに近いような気がした。
 だから、つい言ってしまった。

「この風車《かざぐるま》が止まったら、時間が止まっちゃいそうだよね」
「――――――、」

 少しだけ呼吸の音が大きく聞こえて、さすがに変なこと言ったかもと思って「……そんなわけないか」と言おうとした瞬間、周りから何の音も聞こえなくなった。
 急にどうしたの? 慌てて回りを見ると、通行人の動きがピタッと止まっていた。よく見ると、近くで子どもが落としてしまったらしいかき氷も、空中で止まっていて。

「え、え……?」
 何これ、怖い。ありえない、怖い……!
 混乱するわたしの前で、絵茉が止まった風車《かざぐるま》を持って、とても嬉しそうに微笑んだ。

「ほんとだ、ほんとに、お願い叶った……」
 赤く染まった頬を、わたしはとても綺麗だと思ってしまっていた……。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

愛してないから、離婚しましょう 〜悪役令嬢の私が大嫌いとのことです〜

あさとよる
恋愛
親の命令で決められた結婚相手は、私のことが大嫌いだと豪語した美丈夫。勤め先が一緒の私達だけど、結婚したことを秘密にされ、以前よりも職場での当たりが増し、自宅では空気扱い。寝屋を共に過ごすことは皆無。そんな形式上だけの結婚なら、私は喜んで離婚してさしあげます。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...