彼は私を妹と言った薄情者

永遠みどり

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01エドワード

①私の贖罪

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エドワード・サン・グラウィール。 グラウィール王国の王太子。 僕の……私の記憶を無くす前の正式名称である。

――記憶を思い出したのは、いつも通り狩りに出かけている時だった。いつもと違ったのは、昨日の雨の影響で山がぬかるんでいた事だろうか?どんよりとしていていつもより山の中が暗かった事だろうか?

 いつものように、獣の気配がしたから近くにいたレンと目を見合わせて耳を済ました。 その直後だった。 レンの背後から獣が飛びかかってきたのは。 滅多にみない大きさの獣だったが普段のレンならば身軽に避けられた。避けられたはずだった。

 その時のレンは地面に足を取られてしまい動きが遅くなってしまって。 急いでレンの腕を引こうとするがそのままじゃ間に合わない、そう思って肩を強く引っ張ってレンを抱きしめるように自分の背中を背に向けた。レンは無事みたいで私の名前を呼んでいるが何とかゴンチャンが引っ張ってくれたようだ。

 そして私も直ぐに、後ろに飛んで避けようとしたその時だった、脇腹に激痛が走ったのは。 今にも噛みちぎらんばかりの勢いでがっついてくるものだから酷い声が出たのを覚えている。 私も負けじとその獣に抵抗しようと獣を押しのけるように踏ん張る。

 確かに普通の獣よりも賢かったのだろう。私はこの村に来て三年程度の狩りの腕しかなかったけど、この村を知り尽くすレンやゴンチャンまで奴が飛びかかってくるその瞬間まで気付かなかったのだから。

 だけど、その獣の弱点はひとつあった。一つの獲物に夢中になると周りが見えないことだ。 ゴンチャンもレンも奴の後ろから忍び込んできて居ることに気づかなかった。

 そして、その獣はゴンチャンとレンの見事なまでの連携によって倒された。 私自身もそれに安心して、慌てたように駆けつけるレンに手を伸ばそうとして地面に倒れる。 そこから先の事はあまり覚えていない。

 【お兄様! 後ろ!!】
 【君は生き残るんだ】
 【兄上が王様になって私が兄上の補佐をするんだ】
 【兄上! 今日はどんな勉強は――】
 【兄様!みてくださいな! このお花綺麗でしょ――】

 ただ、ただ、走馬灯のように急速に映像が流れて行ってしまった事は覚えている。大切な人達の記憶の断片が次々に当てはまっていくような、なんとも言えない感覚だった。
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