かさじごく

ていくみー

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 商店らしき軒先に佇み、たしか自分よりさらに小さい子供を連れていた。妹か、弟か。
 その子供を連れ帰らねばならないのに、ひどい雨が降っていた。傘はなく、どういうわけか親もそばにはいない。

 ふと見ると、店の入口の傘立てに古びたビニール傘が一本刺さっていた。柄は錆びてビニールはくすみ、骨が一本折れ曲がっているが、使えないことはなさそうだ。
 いつからそこに置かれていたのかも分からない。ひょっとすると、持ち主ももう捨てたつもりなんじゃないだろうか。ならば、拝借しても問題ないだろう。

 そうしてその傘を無断で持ち出し、自分より小さな子供を無事に自宅へ連れ帰った。
 その後、その傘をどうしたかははっきり思い出せないが、自宅近くに着く頃に雨が上がったので、そのへんのドブ川にでも投げ捨てた――ような気がする。

(そや。こりゃあ前世のおれが初めて傘を盗んだときの記憶や)

 盗んだ傘を川に捨て、雨上がりの空を見上げたときに襲いかかってきた罪悪感が鮮明に蘇った。警察が来て自分を連れて行くのではないかと幼心に怯えた。

 だが、いつまで経っても警察は来なかった。
 ほら、やはりどうせゴミみたいなものだったのだ。最後に自分らのような子供を雨から守る役割を果たせて、あの傘も本望だったんじゃないのかとさえ思った。

 そうして味をしめ、傘を勝手に拝借することが少しずつ当たり前になっていった。はじめのうちは極力古そうな傘を狙っていたが、次第にあまり気にしなくなった。たかだか傘の一本や二本で、人様の人生が大きく傾くなどということはないだろう。自分にそう言い聞かせることで、傘を盗むハードルが徐々に下がって行ったのだ。

(なんちゅうクズや、前世のおれは)

 ふと気づくと、雨が上がっていた。
 今世の彼にとって雨上がりは、ほんの少しだけホッとできる瞬間だ。傘も合羽も要らない、濡れることもない。ひととき傘の呪いから逃れられる気がした。

(今世でええことしとったら、この呪い、ちっとは解けるんやろか?)

 人の役に立つことをすれば、情状酌量で少しばかり罪が軽くなるということはないだろうか?
 そう思い立ち、今の自分にできることを考えた。

(そや、ええこと思いついたわ)
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