キツネとハンカチ

倉谷みこと

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第7話 追跡

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 キツネのもとを後にしたフクロウは、低空飛行を続けながら足跡を辿っていた。

 夜の散歩を日課にしているフクロウにとって、暗い中で誰かの足跡を辿ることは容易たやすいこと。それも、見たことがあるものならなおさらである。おまけに、これがネズミの足跡だということもわかっていた。

 しばらく辿っていくと、一本の太い樹に行き当たった。地面に降り立ち視線を上げると、簡素ではあるが頑丈そうな扉がある。おそらく、ここがネズミのなのだろう。

 二回ほどノックをすると、ほどなくして扉が開きネズミが顔を出した。

「こんばんは、夜分にすまないね」

「どうしたんですか? フクロウさん」

「実は、君に聞きたいことがあってね」

「聞きたいこと?」

 小首をかしげるネズミ。

「キツネ君の大切なものが、なくなってしまったらしくてね」

 フクロウは、できるだけゆっくりと語る。

「ハンカチと言う名のピンク色の布なんだが、知らないかい?」

 フクロウが『ピンク色の布』と言った瞬間に、ネズミの顔色が変わった。

「えっと……どう、だったかな? 見たような気もするけど……」

 しどろもどろに言葉を紡ぐネズミ。わかりやすいくらいの挙動不審である。

「……正直に話してくれないか?」

 声のトーンを落として問うフクロウは、鋭い眼差しをネズミに向ける。

 ネズミは短く悲鳴をあげると、ハンカチは自分が持っていると白状した。

「そうか。それじゃあ、キツネ君に返しに行こうか」

 普段の穏やかな表情に戻ったフクロウが告げると、ネズミは激しく首を縦に振った。

 ネズミは、フクロウに少し待っていてほしいと言うと家の中へ入っていく。しばらくすると、丁寧に折り畳まれたハンカチを手にして戻ってきた。

 こうして、一羽と一匹はキツネのもとへと向かうのだった。
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