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第3話 プレゼント
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どのくらいそうしていたのだろうか。日は傾き、辺りを暖かなオレンジ色に染めていく。
ふと気づくと、キツネの隣には人間の少女が座っていた。キツネと同じようにキンモクセイを眺めていたのだろう。
驚いたキツネが短く鳴いて飛び上がり、警戒するように姿勢を低く構えると、
「ごめんね、びっくりさせちゃって。キツネさんもキンモクセイ、見に来たんでしょ? わたしもよく見に来るんだ」
少女は、優しい笑顔でそう言った。
彼女に敵意がないことを感じ取ったキツネは、警戒を解いて座り直す。
キンモクセイの甘くて優しい香りにうっとりしていると、少女が聞いて欲しいことがあるとぽつりとつぶやいた。彼女が最近ここに越して来たこと、学校やクラスになじめないこと、友達もいないこと、どうしたら友達ができるのかなど、一人で抱えていたらしい悩みを打ち明けた。
「……キツネさんに言っても、どうしていいのかわかんないよね。ごめんね」
そう言って寂しそうに笑う彼女の目には、大粒の涙があふれていた。
どうにか力になってあげたいと思ったキツネだがどうすることもできず、彼女に寄り添いなぐさめるようにほほを優しく舐める。
「あはは、くすぐったいよ。でも、なぐさめてくれてるんだよね。ありがとう」
彼女はそう言って涙をぬぐうと、スカートのポケットからピンク色のハンカチを取り出す。話を聞いてくれたお礼にと、それをキツネの首に巻いた。
「話したら、ちょっとすっきりした。ありがとう」
そう言って、少女は公園から去っていった。
少女の姿が見えなくなってからようやく、キツネはこのハンカチが自分へのプレゼントだと気がついた。親から獲物を与えてもらう以外、他人からものをもらったことが一度もなかったのだ。
初めてのプレゼントにほほを緩ませながら、キツネは帰路についた――。
「――っていうことがあったんだ」
キツネが話終えると、静かに聞いていたリスは腕を組んで何やら考え込んでいた。
「どうしたの?」
「いや、友達なんて、かんたんにできるもんなんじゃないかと思ってな?」
「人間は、そうかんたんにはいかないみたいだよ」
「ふ~ん、何だかめんどくさそうだ」
そんな感想を口にすると、リスは礼を言って集めていたどんぐりを抱えて立ち去った。
一匹になったキツネは視線を上げて紅葉を眺めながら、昨日の少女のことを考える。昨日の今日で学校になじめるほどかんたんなものではないことは、キツネでも想像がついた。だが、せめて一人だけでもいいから友達ができれば……と、そう思わずにはいられない。
(また後で、あの場所に行ってみようかな……)
ふと、そんなことを思う。
柔らかな風が、キツネのほほをなでていく。まるで、彼の思いに賛同しているかのように。
そよ風に吹かれて眠気がさしたのか、キツネは大きなあくびを一つした。寝床に帰ってからゆっくりと眠りたかったのだが、睡魔には勝てるはずもなく。キツネはその場で眠り込んでしまった。
ふと気づくと、キツネの隣には人間の少女が座っていた。キツネと同じようにキンモクセイを眺めていたのだろう。
驚いたキツネが短く鳴いて飛び上がり、警戒するように姿勢を低く構えると、
「ごめんね、びっくりさせちゃって。キツネさんもキンモクセイ、見に来たんでしょ? わたしもよく見に来るんだ」
少女は、優しい笑顔でそう言った。
彼女に敵意がないことを感じ取ったキツネは、警戒を解いて座り直す。
キンモクセイの甘くて優しい香りにうっとりしていると、少女が聞いて欲しいことがあるとぽつりとつぶやいた。彼女が最近ここに越して来たこと、学校やクラスになじめないこと、友達もいないこと、どうしたら友達ができるのかなど、一人で抱えていたらしい悩みを打ち明けた。
「……キツネさんに言っても、どうしていいのかわかんないよね。ごめんね」
そう言って寂しそうに笑う彼女の目には、大粒の涙があふれていた。
どうにか力になってあげたいと思ったキツネだがどうすることもできず、彼女に寄り添いなぐさめるようにほほを優しく舐める。
「あはは、くすぐったいよ。でも、なぐさめてくれてるんだよね。ありがとう」
彼女はそう言って涙をぬぐうと、スカートのポケットからピンク色のハンカチを取り出す。話を聞いてくれたお礼にと、それをキツネの首に巻いた。
「話したら、ちょっとすっきりした。ありがとう」
そう言って、少女は公園から去っていった。
少女の姿が見えなくなってからようやく、キツネはこのハンカチが自分へのプレゼントだと気がついた。親から獲物を与えてもらう以外、他人からものをもらったことが一度もなかったのだ。
初めてのプレゼントにほほを緩ませながら、キツネは帰路についた――。
「――っていうことがあったんだ」
キツネが話終えると、静かに聞いていたリスは腕を組んで何やら考え込んでいた。
「どうしたの?」
「いや、友達なんて、かんたんにできるもんなんじゃないかと思ってな?」
「人間は、そうかんたんにはいかないみたいだよ」
「ふ~ん、何だかめんどくさそうだ」
そんな感想を口にすると、リスは礼を言って集めていたどんぐりを抱えて立ち去った。
一匹になったキツネは視線を上げて紅葉を眺めながら、昨日の少女のことを考える。昨日の今日で学校になじめるほどかんたんなものではないことは、キツネでも想像がついた。だが、せめて一人だけでもいいから友達ができれば……と、そう思わずにはいられない。
(また後で、あの場所に行ってみようかな……)
ふと、そんなことを思う。
柔らかな風が、キツネのほほをなでていく。まるで、彼の思いに賛同しているかのように。
そよ風に吹かれて眠気がさしたのか、キツネは大きなあくびを一つした。寝床に帰ってからゆっくりと眠りたかったのだが、睡魔には勝てるはずもなく。キツネはその場で眠り込んでしまった。
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