最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第67話

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「で、ハティはなんで許可も取らずに西の街に居たんだ? というかどうやって入ったんだ?」
「入るのは簡単です。警備を敷いているわけでもないですし、徒歩なら誰でも行こうと思えばいけます。ただ交通機関を使っての移動だと、許可証の確認が必要なので行けませんね」

 案外許可が必要な割にはプレイヤー達の居る街までは行けるんだな。

「でも、街に入ろうとする見知らぬ人は許可証の確認がされるので、自分は街の外のあの場所でずっといるしかありませんでした」
「だからか。冒険者を見つけるなら街の中で待っててもいいはずだと思ってたからな。まぁここまではいいだろう」

 そして1番聞きたかったことを尋ねる。

「で、まだ答えてもらってないが、なんであの街に居た?」
「えっと、あの」
「もうここまで知ってたら変わらないと思うんだが」
「うっ、そうですね」

 そう言うとハティはゆっくりと、なぜこんなことになったのかについて話し始めた。

「西の街には歩いてきました。これはある冒険者のパーティーが自分のサポーターの練習に付き合ってくれるということで、その人達にお願いしてついて行ったら行き先が西の街だったんです。自分もなんとなく途中から西の街を目指してるんだろうなとは思ってたんですけど、少し興味もあったので知らないフリをしてついて行きました」
「まぁそこまでは冒険者パーティーについて行っただけだからハティは悪くないとは思う。気づいてたのに言わないのはどうかと思うが」
「すみません」

 ただ、今のところ西の街を目指した冒険者パーティーが問題なだけで、ハティにはあまり問題がない。

「それで、西の街には着いたんですけど、許可証を持っていない自分達は追い返されてしまって、そこからが問題でした」
「そのまま帰れば良かったんじゃないか?」
「自分はその後森の中で取り残されたんです。少し休憩を取るからサポーターの自分は離れたところで待っていてくれと言われて、不思議に思ってカバンを置いたあとなんでなのか聞きに行こうとしたら、その人達が急に走り出して、自分はカバンを置いていくわけにもいかないのでそこに取り残されました」

 それはなんともひどい話だ。

「モンスターには襲われなかったのか?」
「西の街からは遠くなかったので、最悪カバンを捨てれば街までは逃げられる距離でした。帰還の魔石もありますし」
「そうか、でもなんで冒険者達はハティのことを置いていったんだ?」
「それが自分にも分かりません。今思えばサポーターの練習に付き合うなんて面倒なだけですし、普通はこちらがお金を払ってお願いすることなので、最初から自分をどうにかしようとしていたのかもしれないです」

 ますます謎が深まるばかりだが、ハティが捨てられて帰ることが出来なくなったことには変わりない。

「西の街の人に事情を説明して帰らせてもらうことは出来なかったのか?」
「それも考えました。でも、ちょうど西の街についたのが夕方だったので、どの道今日は移動できないなら、少し寝て夜に冒険者の人について行ってサポーターとしての経験を積もうかなと」
「そんな状況でなかなか肝が据わってるな」

 大物なのか、危機感が足りていないのか、そのどちらもなのか、ハティの行動は俺からすると考えられない。

「なぁ、ハティっていいとこの子なのか?」
「え、ぁえっ! な、ななんですか急に」
「いやぁ、ちょっと世間に疎いというか、危機感も足りてないし、どこか何をしても自分ならどうにかなるって思ってる気がしてな」

 普通なら西の街の人に説明して帰ればいい話だし、街の外も危ないから中に入れてもらうくらいは絶対に許してくれるはずだ。
 それなのに街の外で仮眠を取って、冒険者を探して夜の探索についていく、挙句の果てにはサポーターの技術も無い、これはもう色々な人から怒られても仕方のないことだと思う。

「ハティ、俺は全くハティのことを知らないけど、ハティには心配してくれる家族や友達が居るんじゃないか?」
「お父様もお母様も自分のことなんて気にしてません。むしろ問題児が居なくなって喜んでるかも」

 漏れてるよ、育ちの良さがちょっとだけ漏れてるよ。

「そんなことはないと思うけどなぁ。もしかしたら今もハティのことを心配して待ってるかも」
「そんなことあり得ません。もしそうだとしても、自分がサポーターになることに両親は反対してましたし、この件を伝えたら更に嫌なことを言われるかもしれません」

 まぁそれはハティにしてみたら自分を応援してくれないのは悲しいよな。

「お母様はいつも口調をもっと女の子らしくしなさいって怒るし、お父様も女の子らしい習い事や趣味を勝手に決めて押し付けてきます」
「そ、そうか。ちなみにその口調は親に反抗するためにわざと変えたのか?」
「いえ、小さい頃から変わってないです。出来るだけ丁寧に話すことは自分も納得していましたので。ただ、普段の話し方を外ではやめなさいと言われた時は逆らってやりました」

 声は少し高いなと思ってたけど、フードで顔があんまり見えなくて、名前も正直どっちか分からなかったから、ハティが女の子だと言うことが分かってよかった。

「でも、そんなハティでも急に帰らなくなったらご両親は心配すると思うけどな。ハティもお父さんとお母さんが急に家に帰ってこなかったら心配するでしょ?」
「それは……そうですけど。冒険者に取り残されたなんて言ったら二度とサポーターなんてさせてくれません! 絶対にこのことは秘密にしてください!」

 ハティはとにかくサポーターがやりたいのだろう。何故か襲いかかってくるモンスターも少ないし、ハティのことをもっとしっかり聞いてみるか。

「ハティはサポーターがそんなにしたいのか?」
「はい! 冒険者の活躍を間近で見ることが出来るなんて最高じゃないですか!」
「冒険者にはなりたくないんだ」
「モンスターと戦うのはちょっと。怖いですし、自分が戦うのは想像出来ませんね」
「でも冒険者に付いて行くならある程度戦えるようになったほうが良くないか?」
「う、まぁ、そうですけど。痛いの嫌ですし、しんどいのも、ちょっと」

 少しハティがサポーターになることを反対された理由が分かった。ハティがこんな感じだから、ご両親も心配だったのかもしれないし、冒険者にも迷惑をかけると思ったのかもしれない。

「ハティ、冒険者はハティみたいなサポーターが必要だと思う?」
「自分は冒険者のサポートを頑張る気持ちはありますよ!」
「でも、痛いの嫌で、しんどいのも嫌。サポーターとして経験は浅いけど、自分からサポーターが出来ると言って冒険者に声を掛ける。いざ戦闘が始まったらサポーターがしてくれるはずの仕事をしてくれない。聞いてみるとサポーターの基本を本人は知らなかった。その上自分を連れて街まで連れてって欲しい。これのどこが冒険者をサポートしてるの?」

 俺は敢えてハティに厳しく言う。もっとハティがサポーターになるために頑張ってたり、努力してる気持ちが伝わったらこんな事言うつもりはなかった。
 人の心なんて他人には分からないし、もしかしたら口だけで本当は戦闘訓練もサポーターの知識を付けることも本人はしているかもしれない。もしそうだったら後で誠心誠意を込めて謝ろう。

 ただ、俺にはどうしてもハティがサポーターを冒険者の活躍を見る特等席だと認識している気がしてならない。

 それは俺がキプロのことを知っているからかもしれないが、キプロは鍛冶師をしつつもサポーターの技術も素晴らしかった。
 キプロもハティと同じ様な冒険者への憧れのような気持ちを持ちつつも、絶対にサポーターとして俺を支えようとする気持ちがいつも伝わってきた。それがハティにはあまり感じられない。

「ハティ、俺はね、ハティに嫌なことを言いたいわけじゃないんだ。でも、今のままだと俺はハティのことを好きになれそうにない。そんな人にサポーターになって欲しいとは思わないよ」
「ユーマさんはプレイヤー様だからそう思うんです。この世界には自分よりもっとひどいサポーターだっているんですから!」
「じゃあハティはひどいサポーターと比べて自分の方が優秀だったら良いの?」
「それは……」

 俺もこんな事年下の女の子に言いたくはない。NPCだとしても、自分に関係ない人だとしてもあんまり嫌われたくないし。

「たぶんハティは家で居ることが多かったんじゃない? なんなら冒険譚なんか読むのが好きだったでしょ。自分もそんな体験がしたいとか、外に出たいとか思ったりして」
「……はい、好きでした。今でも好きです」

「戦いの練習をしたことはある?」
「少しだけ。でも、疲れるし、痛いしすぐやめました」
「サポーターの知識は?」
「ギルドの講習を受けた時に、つまらないなって思ってそれっきり」

 もうこれはまるで飽きが早い子どもだな。

「そっか。その事をご両親は?」
「すぐやめたことに色々言ってきました」
「じゃあハティが頑張ろうとしたことは知ってるんだね。それですぐ諦めちゃったことも」

 こんな子どもがサポーターをこの状態でやるって言ったら不安だよな。

「もう一度ハティはしっかり考えるべきだと思う。サポーターがしたいのか、冒険者がしたいのか、それともただ危険を冒さずに冒険譚と同じ内容を自分も体験したいだけなのか」

 そう言った後俺達の会話は無くなり、歩く音以外何も聞こえなかった。


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