最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第66話

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「やっぱり誰かが作ったご飯はうまいな」

 昨日ログアウトした後に少し買い物をして、近くのお弁当屋さんに寄って次の日の分まで弁当を買ったが、久しぶりに自分で作らないご飯は美味しかった。

「俺はゲーム内でもっと美味しいご飯を食べてるはずなのに、現実で食べる時もちゃんと美味しく感じるんだよな」

 他の人の中にはそうじゃない人も居るらしいが、俺は現実で食べるご飯を美味しく感じることが出来て良かった。

「あ、もう24時前か」

 寝る前に少しだけ身体のためにも外を散歩して、起きてからやることやってたらこの時間だった。

「トイレだけ最後に行っとくか」

 そろそろゲーム発売から5日目に突入し、あと3日で第2陣のプレイヤーが来る。

 少しネットニュースを見てみるが、第2回の抽選にも当たらなかった人達が、ゲーム会社にもっと枠を増やすようにとクレームを入れているらしい。
 ゲーム会社としては嬉しい悲鳴でもあるだろうが、あの街に1万人以上のプレイヤーを急に入れるのは難しいと俺でも思うので、まだ当たってない人達は、第3、第4の抽選に当たるのを願うしかないだろう。

「よし、じゃあ行くか。今はゲームの中も夜だろうけど、このゲームの夜は貴重だし」

 俺はカプセルベッドの中に入り、コネファンにログインする。



「ふぅ、今回もモニカさんを起こさないようにゆっくり出るか」

 ウル達が横で寝ていて起こすのが申し訳ないが、何も言わなくてもすぐに起きるだろうし、俺から起こさない方が後で機嫌を悪くしそうなので、小声で皆に声を掛ける。

「みんな、起きてくれ。おはよう、今は夜だから騒がないようにな」
「クゥ」「アウ」「(コク)」

 俺の言葉を聞いて皆小さい声で抑えてくれている。

「よし、一旦俺はご飯を食べるからゆっくりしててくれ」

 ウル達は毎日食べているかもしれないが、俺はログアウトしている間に空腹になっているので、前に焼いた魚を食べる。

「今からどうしようか。ダンジョンはクリアしたし、王国の方を今進むのはリスクが高すぎるよな」

 まだ西の街の外は見たことがないし、そっちに行ってみるのはありかもしれない。

「おまたせ。じゃあ今から西の街に行ってみて、夜は探索が難しいってなったらまた違うことをしようか」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 家の裏のクリスタルを使って西の街に移動する。

「やっぱり賑やかだな」

 北の街から西の街や南の街に行くと、いつも人の多さに圧倒される。

「北の街にも人がいっぱい来て欲しいわけじゃないけど、歩いたら何人かプレイヤーが見えるくらいには居てほしいよな」

 北の街よりも魅力的な街があるのは分かるし、更にこれからは他の国にプレイヤー達もバラけていくんだと考えると、北の街はむしろ今よりプレイヤーが少なくなるかもしれない。

「とりあえず今は街の外に出てみるか」

 皆カジノに行く人ばかりで外に出ようとする者は居ないが、俺達は人の波から外れて外に出る。

「これは俺の装備の照明だけじゃしんどいな」
「クゥ」「アウ」「(コク)」

 少し外に出たはいいものの、やっぱり暗すぎて行ったことのない場所の探索はこれでは出来ないと判断し、西の街はやめてまた朝までダンジョンにでも潜ろうかと思った時、横から声をかけられる。

「あの、自分サポーターです。今から外に出るなら自分を雇いませんか?」

 声をかけてきたのはサポーターだが、まさか街の外に居るとは思わなかった。

「えっと、それはありがたいんだけど、なんでこんな街の外で居るの?」
「外に行く冒険者を捕まえるならここが1番ですから。それに冒険者ギルドはこの時間空いてませんし」
「でも、こんな夜中に外で居るのは危なくない?」
「危なくなったら街の中に逃げ込めばいいだけです」

 なかなか度胸のあるサポーターだが、1番気になることを聞いてみる。

「なんでこんな時間まで冒険者を探してたの?」
「それはサポーターの仕事を探して」
「でももう夜の12時も過ぎてるよ?」
「えっと、その、お金に困ってるからです」

 そうは言うが、それならこの街だと他のことをする方が稼げる気はする。

「俺は南の街で友達になったサポーターが居て、冒険者ギルドの中に居ない人はサポーターの資格を持ってない人だって教えてもらったんだ。あと、騙してくるサポーターも居るから気を付けてとも。だから信じるためにも本当のことを教えて欲しいな」
「えっと、その、何も隠していることは、ありません」

 明らかに発言に迷いが感じられ、このサポーターを名乗る者は本当のことを言ってくれない。

「まぁ俺達プレイヤーはこの世界の冒険者と違って死ぬことはないし、倒した敵のドロップアイテムを奪われるとかもないから、そこの心配をサポーターにすることは無いんだけど。もし言いたくなったら教えてくれる?」
「分かりまし、いやっ、なにも隠してることはありません。それよりも雇ってくれるのであれば早く行きましょう!」

 そう言って前を歩こうとするが、契約すらまだしていないため、お金を重視していないのは明らかだった。

「待って待って、とりあえず名前からかな。俺はユーマで、こっちがウル、ルリ、エメラ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
「自分の名前はハティです」
「じゃあまずハティは何が出来るかと、今回探索する時間と、何を目指して探索するかを決めよう」

 早く外に行きたがるハティを落ち着かせ、話し合いをする。

「まず時間だが、俺達は7時くらいには帰りたい。だから契約としては7時間でどうだ?」
「分かりました」
「じゃあハティは何が出来るか教えてくれるか?」
「探索で使えるスキルは無いです。けど、薬草採取は何度かやりました」
「分かった。じゃあ最後に今回の探索目的を決めたいんだが、俺は特にそう言うのがないからハティの薬草採取をメインに動くか」

 今回は西の街の外を見て回ることが個人的な目的だったし、せっかくハティを雇うなら薬草採取をしてもらおう。

「じゃあ行こうか」
「分かりました」

 そして街から離れていくのだが

「あの、この辺の地理には詳しい?」
「いえ、分かりません」

 キプロがサポーターの時はこの暗い道でも案内をしてくれたんだが、ハティはそもそもこの辺に詳しくないのか。

「じゃあ俺が適当に歩くから、薬草が取れそうなところを見つけたら取ってく感じにするか」

 ということでフラフラ進んでいくが、本当に夜はキプロの道案内が助けてくれていたことに気づく。
 初めての土地で案内なく歩き回ることが、こんなにも難しいとは思わなかった。

「ハティ、モンスターが居るからヒカリゴケをまいてくれないか?」
「え、夜の探索にはそういったものが必要なんですか?」

 まさかの初心者だった。

「まぁサポーター資格持ってないなら仕方ない……なんてことにはならないぞ! 流石に夜サポーターをするならそれなりの準備はしていて欲しい。このモンスターを倒したら一旦話し合いだ」

 そう言って襲ってくるモンスターを俺達は無理やり倒す。

「街の近くだと夜出てくるモンスターはどこも同じっぽいな」

 襲いかかってきたダークホーンラビットを倒して、一度集まる。

「どういうことだ? 流石に資格なしとは言えヒカリゴケは夜探索に行くなら絶対に多く持って行くと聞いたし、そもそも洞窟に入ることもあるからサポーターは普段から多少持っていると聞いたぞ」

 キプロからサポーターの話を色々聞いておいてよかった。
 夜はヒカリゴケをかなり多めに持っていくだけでそもそも普段から持っているらしく、昼も夜も持っていく道具の比率が変わるだけで、カバンに入れているものはあまり変わらないと教えてもらっている。

「それはその、自分は初心者でして」
「だとしても、流石に基本も出来てないならサポーターはまだ名乗ったら駄目なんじゃないか? それで冒険者に怒られるだけなら良いが、ハティ自身がこれから危ない目に合うぞ」

 初心者なのに夜の探索なんてやるべきではないし、これは契約も解除してハティに1時間分だけ払って終わりにしよう。

「街に戻ろう。初心者ならまず明るい時間からにした方が良いし、資格を取るまではあまりこういったことはしない方がいいと思う。それを決めるのはハティだけど、俺はそう感じたよ」

 余計なお世話かもしれないが、お説教じみた事をハティに言って、街の方へと歩き出す。

「あの、すみませんでした!」

 その声を聞きハティの方を見ると、カバンを下ろしこちらに頭を下げていた。

「本当はサポーターもやったことがなくて、そもそも自分がここに居ることも許されてません!」

 話を聞くと、はじめの街と東西南北それぞれの街にいるNPCは、プレイヤー達に会ってもいいと判断された人だけが来れる街らしい。

 元々住んでいた人達は余程のことがない限り移動しなくても良かったらしいが、プレイヤー達のために他所から来た人達は、全員各ギルドで審査を受けて、許可を得た人だけが街に訪れることが出来るのだとか。

「で、その資格をハティは持ってないんだな」
「はい」

 まさかそんな人が居るとは俺も思わなかった。

「で、ハティの目的はなんだ?」
「あの、連合国の方まで一緒に行ってほしいのと、このことは黙っていてもらえると助かります」

 この言い方だと、西の街から進んでいくと連合国があるのだろう。

「連合国には今から行ける距離なのか? というかまずはどの街を目指してるんだ?」
「どこかを目指すというより、許可が無いと入ってはいけない場所から離れたいです。もしユーマさんとここで別れても、自分は今から1人でも行きます!」

 もう自分の話したいことばっかりで、俺の質問に答えようとしているかも怪しい。絶対にこの子をこのまま放置してはいけない。

「分かった分かった。まぁ道中でなんでこんなことになったかハティには色々聞くとして、俺もできるだけ協力はするよ」
「あ、ありがとうございます!」

 こうして俺達は全く予想していなかった西の街の奥、連合国領へとハティを連れて進むことになるのだった。


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