最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第103話

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「もう終わったんですか?」
「はい。ゴミは指定された場所に置いときました。あと、掃除中に見つけたアイテムがいくつかあったんですけどどこに置いておけばいいですか?」
「アイテムですか」
「はい、ここで出しても?」
「そうですね。ではお願いします」

 ここで出す許可をもらったので、カウンターに並べていく。

「あ! これは以前無くなって職員皆で探しても見つからなかった拡声石! こっちには羽根ペンとメモ帳に、魔法の火打ち石まで!」
「一応メモ帳の中身は見てませんよ。で、これが最後なんですけど、たぶん高価なものですよね」

 そう言って俺が出したのは、一見何の変哲もないただの袋。

「こ、これをどこで?」
「待機所のモンスター達が集まって休んでた場所にあったんだと思います。もしかしたら枕代わりにしてたのかもしれません。俺の魔獣が見つけてくれたので詳しくは分からないですけど」
「コン!」
「あの、そちらの中身は」
「見てませんよ。インベントリに入れた時これが魔道具『アイテム袋(下級)』だって表示されてましたから」
「そ、そうですか、ありがとうございます。仮に中を見ていたのだとしてもこちらから何か言うことはありませんが、本当にありがとうございます!」

 どうやらこの袋は予想通り高価なものだったらしく、商人の中でも限られた者しか持っていないらしい。

「じゃあ俺達はこれで失礼します」
「はい! 清掃依頼を受けていただきありがとうございました!」

 こうして俺達は商人ギルドで受けた清掃依頼の報酬として1万G貰い、次は冒険者ギルドへ依頼達成報告をしに向かう。

「え、清掃依頼で3万Gも?」
「この清掃依頼では上限額ですね。何をされたんですか?」
「いや、落とし物を少し届けたくらいですけど」
「この清掃依頼で見つけた落とし物は拾った方に権利がありますから。よっぽど高価なものを拾ったのですね」

 そう言われて一瞬アイテムを商人ギルドへ渡したことを後悔しそうになったが、ごく当たり前のことをしたまでだと思い直す。

「まぁゲームの世界だし、街の外で拾った誰のか分からないものならラッキーと思って自分のものにすると思うけど、流石に清掃依頼で落ちてたやつを自分のものには出来ないよな」

 ただ、もう少し詳しく話を聞くと、清掃依頼の条件の中に、清掃依頼中に見つけた物は持ち帰り禁止と書かれていない場合、見つけたものは全て持ち帰っていいとのことだった。

「ですので次同じ事があれば、何も遠慮することはありません。もし持ち帰られるのが嫌であるならば条件にそう書きますから」
「そうだったんですね」

 今回みたいなことは珍しいらしく、この条件の意図としては清掃をする者が丁寧にゴミを判別して捨てるかどうかに関わってくるらしい。

「冒険者の方全てに当てはまるわけではないですが、基本的に大雑把な冒険者の方が多いので、ゴミと一緒にゴミでは無いものも捨ててしまう事があるのです。なのでそういった場合に揉めるのを回避するためこのような条件をつけるようになりました」
「なるほど、そういうことだったんですね」

 確かに拡声石なんてインベントリに入れなかったらただの石だと思って捨てていただろう。それくらいアイテムとゴミの判別が難しいものは難しい。

「今回商人ギルドはユーマ様に清掃してもらって良かったですね」
「それは俺に言われても分かりませんけど、たぶんゴミと間違って捨てたものは無いと思いますから、そういう意味では良かったかもしれないですね」

 俺としてはそこまで汚れていたわけでもない待機所を少し掃除しただけで、報酬がこんなにも貰えたことに申し訳なさすら感じる。

「じゃあ俺達は行きますね」
「お疲れ様でした」

 今回冒険者ギルドで最初に受けた3つの依頼に加えて、途中で倒したモンスターの素材の納品依頼も探し、まとめて達成したため結構なお金になった。

「じゃあ次はどう「ユーマ様!」え?」

 冒険者ギルドを出てすぐ、俺の名前を叫びながら近づいてくる人が居た。

「はぁ、はぁ、あなたは、ユーマ様、ですよね」
「はい、そうですけど、大丈夫ですか?」
「はぁ、す、すみません。はぁ、少し時間を、ください」

 そしてしばらくすると呼吸は落ち着いたようなので、何故俺の名前を呼びながら走っていたのかの説明をしてもらう。

「先ほどギルド職員からアイテム袋が見つかったと聞きまして、詳しく話をするとユーマ様が見つけてくれたと聞き、急いでここに来た次第です。本当にありがとうございました!」
「いえいえ、見つかって良かったですね」
「はい! 今後こういう事が無いように気を付けるのはもちろんですが、少し値段は高くなったとしても、これからは清掃依頼で出たゴミの中に、アイテムが混ざっていないかの確認をしっかりと行ってもらう条件をつけることにしました」
「あぁ、さっき教えてもらいましたけど、清掃依頼中に拾ったアイテムは自分のものにしたら駄目ってやつですよね」
「さっき? ユーマ様、アイテムを商人ギルドへ届けていただいた時にそのルールはご存知でしたか?」
「いや、知らなかったですね。その時は商人ギルドで同じ内容の清掃依頼を受けたので、その達成報告と同時に拾ったアイテムを渡しただけです。その後冒険者ギルドで依頼達成をしに行った時報酬が高額だったので、何でなのかの話を冒険者ギルドの職員の人に聞いたら、たぶんこういうことだろうってのでルールのことも教えてもらいました」

 そう言うと商人ギルドの人はしばらく固まっていたが、腰についている袋を手に取りこちらに渡そうとしてきた。

「な、何ですか?」
「商人ギルドの者として、このままユーマ様に見つけていただいた物を受け取るわけにはいきません。このアイテム袋はユーマ様が見つけた物と同じものだと思います。これで許していただけないでしょうか?」
「え、いや、え?」
「拾っていただいた袋の中身に関しましては、私は確認しておりませんがおそらく高価なものが入っているでしょう。ですが基本的には商人自身の貴重品や必需品を入れている事が多いので、そちらの代わりにお金を振り込ませていただくというのはどうでしょうか? もし納得いかないのであれば一度商人ギルドまで戻り、アイテム袋の中身の確認を一緒にしていただけると助かりますが」
「あの、俺は別にそこまでしていただかなくても「私達は!」うぉっ」
「私達は、商人でございます。お客様の信用、信頼、これを裏切ってしまえば商人として名乗ることはできません。何より商人でありながらお金で解決できることを解決しないのは、商人としてあるまじき行為です。力は冒険者様に任せますし、技術は職人様に、知恵は魔術師様にお願いしますが、お金が絡むのであればそれは商人の出番です」

 俺はしばらくこの商人ギルドの人に圧倒され、何も言えなかった。

「あ、すみません! 熱くなって変なことを言ってしまいました。あの、もちろん魔獣ギルドにも感謝していますよ! モンスターの存在は私達の生活になくてはならないものですし。あの、つい勢いで話してしまったので、魔獣ギルドの名前を出さなかったことに他意はないと言いますか、あの、えっと」

 俺が黙ってしまったことに加えて、テイマーだということに気付いて魔獣ギルドの話をしなかったことに分かりやすく焦っている。

「あの、全然何とも思ってないですから。さっきの話で言うと冒険者にも魔術師にも技術は必要ですし、冒険者にも職人にも、そして商人にも知恵は必要ですよね?」
「は、はい! もちろんその通りです!」
「言いたかったことは分かりますから、安心してください」
「あ、ありがとうございます」
「それで話は戻るんですけど、正直俺としては今回見つけたアイテムに欲しいものは無かったですし、アイテム袋も必要ありません。俺達プレイヤーにはインベントリがありますし、見ての通り俺には魔獣がいるのでその分インベントリには更に余裕がありますから」
「確かに下級のアイテム袋はインベントリ持ちのプレイヤー様、更にはインベントリ持ちの魔獣が居るとなれば必要無さそうですね」
「なので物は必要ありません。拾ったアイテム袋の中身も商人さんの個人の持ち物が多いって話ですし、どうしてもと言うことであれば俺はお金で渡してもらえたらそれで」

 商品ならまだもらう選択肢もあったが、流石に個人の持ち物を貰うのは気分が良くない。それに今回のことでアイテム袋なる物が存在するということを知れただけでも、俺にとっては価値がある。

「ありがとうございます。こちらで確認次第、商人ギルドを通してユーマ様へと代金をお支払いさせていただきます」
「分かりました。わざわざここまで来て頂いてありがとうございました」
「いえいえ、清掃依頼をユーマ様に受けていただき感謝しかありません。私も必死に追いかけて良かったです」
「じゃあまた」
「はい。ありがとうございました」

 そう言って商人ギルドの人と俺達は別れた。

「正直魔法の火打ち石はちょっと興味あったけど、流石にあの雰囲気では言い出せなかったな」

 俺は今回冒険者ギルドで受けた3つの依頼を思い出しながら、ウル達に連れられ食べ物を探しに街を歩くのだった。


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