最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第199話

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「お、ユーマ」
「ユーマさんおはようございます!」
「ガイルもメイちゃんもおはよう」

 またクランハウスに来ても誰も居ないということはなく、ガイルとメイちゃんが玄関近くに居た。
 そして奥の方にもクランメンバーは居て、いつもより少し静かな雰囲気が、いよいよイベントが始まるって感じがする。

「確認なんだが、イベントの2時間前にユーマは一旦居なくなるんだったよな?」
「そうそう。だから幸福なる種族の会議は、俺が帰ってきたあとする予定」
「今さっきモリから聞いたが、ほぼほぼうちのクランメンバーはアウロサリバに着いたらしいぞ」
「少し前にスー君とユー君が肥大せし大樹を倒してアウロサリバまで着いたって、モリさんが大喜びで帰ってきました」
「何人か初日にぶっ通しで遊び続けたのが居て、それで体調崩して出遅れたメンバー以外は王国領に入ったっぽい」
「皆凄いなぁ」

 流石長時間労働クランだ。
 今ここに居るメンバーはもういつイベントが始まっても準備出来ている人達で、居ない人はまだログインしてないか、ギリギリまでレベル上げをしてるのだろう。

「そうだ、これ誰か使いそうな人知らない?」
「『賢者の杖(模造品)』か」
「俺は使わないし、誰か使いそうな人居たら使ってもらおうかなって」
「ちょっと考える。これはもうクランで使うってことで良いんだよな?」
「うん、ガイルが直接誰かに渡してもいいし、地下の誰でも使って良い装備スペースに置いてくれてもいいよ」

 ガイルに装備を渡した俺は、メイちゃんにも忘れないうちに渡しておくことにする。

「で、メイちゃんにはこれ」
「キノコ、ですか?」
「錬金で使えそうだから時間がある時に色々試してみて」
「はい、ありがとうございます! ……お、多いですね」
「群生地で取りまくったから、結構多めに取ったかな」
「今度何か作れるか試してみます!」

 さて、これで俺がイベント前にやっておきたかったことは終わったかな?
 あとは本当に待つのみ。

「ユーマさんおはようございます!」
「ユーマおはよう」
「ユーマっちおはよう」
「おはようっす」
「ユーマ様おはようございます」
「おはようの時間か? あたいらがイベントに合わせてさっき起きただけで、18時は全くおはようの時間じゃないぞ」
「皆さんおはようございます」

 うちの初期メンバーであり配信者組でもあるアリスさん達が来たため、一気にクランハウスの中が活気で溢れ始めた。
 さっきまで少し緊張気味だったみんなの表情が明るくなった気がする。
 やっぱり有名な人達は周りを巻き込む力があるし、一瞬で空気を変える雰囲気があるな。

「ユーマ、今のうちにイベントのこと少し話しとくか?」
「そうだね。今居る初期メンバーと各リーダーだけ集めて話すか」
「私呼んできます!」
「メイちゃんありがとう」

 ということで、俺達は一旦1階の部屋へ入り、今日のイベントについて話す。

「おはようございます。今日は天気も良く、大変イベント日和で……なんてのは要らないですよね。早速本題に入りたいんですけど、幸福なる種族としてはアウロサリバの街を守るってことで良さそうですけど、これに対して何か意見あります?」
「「「「「……」」」」」
「じゃあ問題ないということで、あとでまた皆にも言いますけど、今回は西の街ではなくアウロサリバを守りましょう」

 パチパチパチパチ

「で、本来イベント中は腹ぺこさんに皆の指揮をとってもらう予定だったんですけど、ガイルどうする?」
「まぁそのままで良いんじゃねぇか? なんかあったら俺が代わりにやるで良いと思うぞ」
「じゃあそういうことで、予定通り腹ぺこさんにお願いしたいと思います。基本的には第2陣の皆に向けて指示をしてもらえれば良いかなと」
「分かりました!!」
「あ、そうだ。あとでキノコ渡すので使ってください」
「は、はい?」

 ガイルも居るし、もし腹ぺこさんがイベント中混乱してもどうにかなるだろう。

「で、今回アウロサリバの防衛ではうちの攻略パーティーに出来るだけ活躍してもらいたいので、何かあったらサキさんに報告しましょう」
「ということになると、私達は指示を待って動く方が良いですか?」
「いや、攻略パーティーは基本的に自由に動いて貰って、ここにモンスターが多いとか、助けて欲しいとかチャットで言われたら行くくらいで大丈夫です。その全てを無視して何かするでも良いですし、判断はサキさんに任せます。自分達が活躍出来ると思う1番の行動をしてもらえればそれで」
「分かりました」

 今回アウロサリバには有名な攻略組こそ居ないけど、いくつか攻略をメインにしてるクランは居るっぽいので、サキさん達には是非頑張ってもらいたい。

「あと何かここで話しておくことありますか?」
「ユーマ」
「はい、みるくさんどうぞ」
「そろそろ配信を付けたいんだけど、会議中音を消して流してても良い?」
「あ、そうですね。クランハウスの中はミュートにしてくれたら配信はしてもらって大丈夫です」
「ありがとう」
「皆にそのことをチャットで報告してもらって良いですか?」
「もぐるがやる」

 聞かれてまずい話はしないと思うけど、一応会議中はミュートにしてもらおう。

「ユーマ、俺も良いか?」
「はいガイル」
「ユーマが王都、あと何人かは西の街か自分の守りたいとこに行くとして、それ以外の全員でアウロサリバを守るんだよな?」
「そうだね」
「もしイベントが始まって、アウロサリバを守るのが余裕だったらどうする? 人数が多い、襲ってくるモンスターが少ない、そういう場合は他の街に行く方が良いか?」
「まずこれは俺の経験から言うんだけど、イベント中に他の街へ移動できない可能性がある。仮に移動できたとしても、この時間内に移動しなさいっていう時間制限があるはず。じゃないと攻略組が色んな街へ行けちゃうことになるし、そうなったら強い人達が色んな街を回って、モンスター倒し回って終わりだから」
「なるほどな」
「あと、仮に他の街へ移動するとしても、その理由で移動するのはなしかな。基本的に出てくるモンスターが強い街を守るほうが報酬は良いだろうし、『今の自分のレベルだとモンスターが倒せません』ってので西の街に戻るのは仕方がないけど、余裕だから街を変えるのはやめる方が良いかも。更に強い敵の居る街に行けるなら全然良いけどね」
「分かった」

 まぁ正直心配はしなくて良いと思う。
 こんな素晴らしいコネファンというゲームを作った人達が、そこら辺の調整をミスするとは思えない。
 むしろ注意しないといけないのは俺が言った方で、皆の実力よりアウロサリバを襲ってくるモンスターが強い可能性がある。
 せっかく皆頑張ってアウロサリバまで来たのに、モンスターが強くて倒せないってのだけが心配だな。

「あと他に何かあります?」
「えっと、全然大したことじゃないんですけど……」
「全然いいよ。メイちゃんのこういう時の発言は結構重要なことが多いから」
「全然そんなことはないですけど……その、クランの皆さんで協力するのは何でなのかなって……」
「というと?」
「パーティーで協力するのは分かります。1人では倒せないモンスターが居ますし、協力することで倒せるモンスターが増えますから。けど、クランで協力しても同じモンスターを一緒に倒すわけじゃないですし、報酬はクランに入るわけじゃないですよね? 街を守るために協力するのは理解できますけど、クランで決まったことに従って、モンスターが少ない場所に配置されたりして、そのままイベントが終わったりしたらその人が可哀想だなって」

 それはその通りだ。
 イベント報酬は個人へのものしか無いのに、クランに所属してるからって勝手に自分の配置を決められて、全然楽しめずに終わったら悲しいよな。
 過去にそういう事があったのは事実だし、今でもあるだろう。
 だからメイちゃんの言っていることは全然おかしい事ではない。

「メイの疑問は分かるが、そもそもうちはそういうのだいぶ緩い方だぞ。ユーマは強制してるわけでもねぇし、むしろ俺達のような生産職でも自由にさせてもらってる方だ」
「そうなんですか?」
「前も言ったがこの手のイベントは戦闘職が活躍しやすい。何も決め事をしなかったらただモンスターの奪い合いをするだけだしな。あと、クランで協力するって言ったら、うちだとサキのパーティーにモンスターを倒させるための作戦を練るのが普通だ。どれだけ1つのパーティーにモンスターを倒させるかが重要で、生産職なんて報告係しかやらせてもらえないぞ?」
「まぁ生産職に報告だけさせるってのはほぼないけどね。雑魚敵は誰でも倒して良くて、強そうなモンスターとか、特殊なモンスターが現れたら倒さずに報告して、ってことはあったけど」
 
 俺はこんなことを言ってるが、昔こういうイベントを最前線攻略組でやった時、クランメンバーには1体もモンスターを倒させず、全て報告だけにしてもらったことがある。
 流石にその作戦だと俺達の討伐スピードが間に合わなかったため、結局雑魚敵はいくらか処理してもらうことになったが、攻略組では代表の6人以外全員裏方になりがちだ。

「俺は聞いたことあるぞ。最前線攻略組6人だけで街を守ったイベントがあったって」
「それは盛り過ぎかな。それをやろうとして途中で諦めたが正しいかも。……てか、そんなの知ってるんだ」
「それが出来るならゲームバランスがおかしいだろって思って覚えてたんだよ」
「あの時は他の攻略組と比べても抜けて強かったから。街へ襲ってくるモンスターの強さが他のプレイヤーのレベルに合わせられてて、どうしても俺達からすると全部一撃で倒せる雑魚敵になってたんだよね。……ちなみにだけど、その作戦は自分達で決めたんじゃなくて、当時の生産職組から言われてやっただけだから、最前線攻略組はクランメンバーに酷い扱いをするような人達って思わないでね?」

 ちょっと最前線攻略組のイメージが崩れそうだったので補足しておいた。
 俺達のためにお前達は働け! アイテムや報酬はよこせ! イベントではモンスターを倒さず報告だけしてろ! みたいな感じで思われるのは元最前線攻略組として避けたい。
 むしろあそこは裏方のメンバーが『これ皆さんなら出来るんじゃないですか?』『普通は無理だけどリーダー達なら出来るかも!』『うちは最前線攻略組だ! あの人達に不可能はない!』みたいに勝手に盛り上がって、自分達が面白いと思ったことを色々提案してくるのだ。

「ちょっと話が逸れたけど、メイちゃんの言ってたような事が起こらないように注意はしよっか。楽しめないと意味ないもんね」
「ありがとうございます」
「ユーマはこう言ってるが、運が悪かったらモンスターと戦えないなんて配置されてようとされてなかろうと変わらないぞ。そもそもこのイベントはモンスターを倒すのが目的じゃねぇ、街を守るのが目的だ。それにレイドボス級の敵が出てきたらクラン単位で倒しにかかる。これだけでもクランで動く意味はあるだろ?」
「確かに……」

 そもそも街を攻撃されたら全員の報酬が減ったりするし、自分がモンスターを倒すことも重要だけど、まずは街を守るのが一番だ。
 そしてガイルが言う通り、ボス級のモンスターが出てきた時皆で一緒に倒せるのはクランの強みだな。

「まぁ配置は割と自由めでもいいのかな? 別に幸福なる種族だけで守るわけじゃないしね」
「分かりました! 変なこと聞いてすみません!」
「いやいや、メイちゃんが皆のこと考えてくれてるのが伝わったよ」

 ゲームをやってると、これが当たり前みたいな感じで何も疑問に思わないことが増えてくるため、メイちゃんの様に質問してくれる存在は貴重なのだ。

「あ、もうそろそろイベントの2時間前です」
「そうだな、ユーマが帰ってきたらすぐ話せるように集めておくか」
「じゃあちょっと行ってきます。ウル達も待っててね」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」
 

 俺は時間になったので話を切り上げて、ガイルやウル達に見送られてクランハウスを出たあと、この前も行った最前線攻略組のクランハウスへと入るのだった。


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