神様に愛されなかった僕、貴族に転生した2秒後に平民落ちしたけど、メイドが愛してくれるので今日も幸せです

水の入ったペットボトル

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第3話 こういう世界に来たかったんだと思う

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「あの、ライ様はお名前に何か思い入れはありますか?」
「えっとブロフォント・ライって名前にですか?」
「はい、そうです。あと、私から聞いておいて申し訳ないのですが、ブロフォントの名は口にしないようお願い致します」
「あ、ごめんなさい。えっと、ライって名前を呼ばれたら身体が反応するけど、別にそこまで大切には思ってないかも?」
「では違う名前に変えるとしたら、どんな名前にしましょう?」
「うーん、あまりにも今と離れた名前は慣れるのに時間がかかりそうだし、レイとかルイとかロイとかですかね?」
「かしこまりました」

 そう言うとアンナさんはしばらく道の隅っこで固まり動かなくなった。

「……決まりました」
「お、何になりました?」
「ルイ様、でどうでしょうか?」
「良いですね。え、今から僕がルイってことですか?」
「はい。今からライ様はルイ様です! ライ様は私としても以前のライ様を思い出しますし、ルイ様には他の名前があった方が私としても呼びやすいので。こんなこと貴族であれば許されることではありませんが、平民になった今ルイ様はどんな名前を名乗っても大丈夫です!」

 アンナさんの言っていることは分かるが、ライだのルイだのいっぱい言われて頭がおかしくなりそうだ。

「あの、ちなみにもう名前はそれで良いんですけど、そろそろどこへ向かってるのか教えてもらっても良いですか?」
「はい、もう着きましたから」

 そう言われてアンナさんの視線の先を追うと、そこには剣と盾が交差した、大きなマークのある建物だった。

「ルイ様は冒険者に憧れを持っていらっしゃいましたよね?」
「確かにそうだと思います。なんか良くわからないですけど、今感動してる自分が居て」
「前のあなたが強く願っていた事をほんの少しだけ見ることが出来たのですが、冒険者への気持ちが本当に強かったので」

 僕は前の記憶がどうだとか、前の自分がどうだとか、そんなの関係なしに、僕の魂があのマークを見た瞬間から震えている。

「あの場所で、冒険者ギルドで、ルイ様として冒険者登録をしましょう」
「僕が、冒険者?」
「はい。私は戦闘に使えるような能力を持っていませんが、ルイ様と一緒にこれからは冒険者として頑張りたいと思います。ルイ様は冒険者になってくれますか?」

 アンナさんにそう言われて、自分へと冒険者になりたいのか問いかける。

「……です」
「はい?」
「……たいです。僕、冒険者になりたいです!」
「ふふっ、では一緒に登録しましょう」
「はい!」

 僕はずっとアンナさんに手を引かれてこの街を歩いていたが、この時初めて僕はアンナさんの手を引き冒険者ギルドへと入るのだった。



「お、冒険者になりたいのか?」
「はい」
「戦闘経験は?」
「ないです」
「そっちは?」
「護身術を少しだけ」
「歳は? って聞いても15って言うよな」
「僕は本当に15歳です」
「私も成人しています」
「お前ら2人で組むのか?」
「はい、そうです、よね?」
「ルイ様と私の2人でパーティーを組みます」
「分かった、お前らはHランクからだ。もし不満があるなら聞く。戦闘試験をして欲しいなら今言え。後で言っても知らねぇからな」
「えっと、Hランクって何ですか?」
「おっと、まさか冒険者ギルドの説明からか?」
「私はある程度知っていますが、ルイ様は全く知らないので説明をお願いします」

 冒険者ギルドの人は少し面倒臭そうな表情をしたが、アンナさんが睨んだのかすぐにその表情を引っ込めた。

「冒険者ギルドってのはどんな国にもある大きな組織だ。似たようなもんだと商人ギルド、魔法ギルド、職人ギルドなんかもあるな。まぁ職人ギルドは他のと違ってややこしいが、取り敢えず冒険者ギルドは国に縛られないデカい組織だって考えればいい」
「なるほど、冒険者ギルドは国に縛られない大きな組織、と」
「そうだ。それで冒険者ギルドに所属する意味だが、依頼を受けて金を稼ぐことが出来るってのと、どの国に行っても身分証明としてギルドカードが使えるってことだな」
「お金稼ぎと身分証明ですか」
「あぁ、依頼は個人のものもあれば、村や街、国単位で出されることもある。なんなら冒険者ギルドが冒険者に出すこともあるな。まぁ冒険者ギルドで仕事が受けられるってことと、冒険者ギルドに依頼料を中抜されてるってことを覚えておけばいい」
「そんな言い方しても良いんですか?」
「本当のことだからな。それに中抜した金は俺の給料にもなるが、何かイレギュラーが起こった時のために貯めてるんだ。くれぐれも報酬が少ないからって俺を刺そうとするなよ」

 そう言って手でバツマークを作るが、絶対にこの人の方が強いと思う。

「あとは冒険者のランクだな。これは身分証明の話にもつながるが、簡単に言うと高ければ高いほど強い、低ければ低いほど弱い、これが基本だ」
「シンプルですね」
「ここにプラスでそいつの素行が関わってくる。実力が同じでも悪いやつは高いランクに上がれない。だからこそランクが高いってだけで身分証明としては十分なものになる。まぁ弱かったらずっとそのままだけどな」
「ルイ様は何も問題ありませんから、早く次へと話を進めてください」
「へいへい。そのランクの話で言うと、さっきお前らをHランクと言ったが、これは最低ランクだ。ここからAまで上がったあと、Sランク、SSランク、SSSランクって上がってく。この辺はもう逆に危ない存在だと思われるから、身分証明としては逆効果かもな」

 僕がそんな高ランクになることはないと思うが、SSSランクになってみたい気持ちはある。

「あとはそうだな。今はEランクになる時は絶対に受けないといけない試験がある。まぁこの辺は結構変わるから覚えなくてもいい。俺の時はDランクだったしな」
「職員さんは何ランクなんですか?」
「俺か? 俺はBだ。まぁ全体で見たらそこそこ良いんじゃないか?」
「(ルイ様、Bランクは冒険者の中でも非常に高いです)」
「へぇ、凄いんですね」
「まぁ俺の時代にランクが上がらない奴って言ったら、ビビって冒険しない奴か死んだかのどっちかだからな。今は敢えてランクを上げない奴もいるし、素行が悪くて上がらない奴もいる。昔よりも難しくなったもんだぜ」

 そう言うと説明は終わったというように、僕とアンナさんに紙を渡してくる。

「ここに名前と年齢を書いてくれ。あとは好きにしたら良い。名前は自分で納得するものなら何でもいいが、それ以外は嘘を書くなよ。もし自分が誰か他の奴と組むってなった時、これを見せてお前と組みたいって思われるような事なら何だって書いて良い。あ、文字は書けるか?」
「書けます」
「私も大丈夫です」

 僕は名前と年齢以外何も記入せず、不安になって一度アンナさんの方を見たのだが、アンナさんも僕と同じだった。

「よし、じゃあギルドカードを作るぞ。この針で血を出せ。そしてそのカードに血を垂らしたら終わりだ」
「ルイ様、指の先を少しだけ刺してください」
「おい、アンナだったか? その血のついた手でそいつのギルドカードに触るなよ。また新しいのを出さないといけないからな」
「分かっています」

 僕は左手の人差し指を細い針の先で少しだけ刺し、ギルドカードにそっと押し当てる。

「よし、じゃあちょっと待っててくれ」

 そう言うと職員さんは奥へと消えていった。

「あの、アンナさんは何で冒険者のことを知ってるんですか?」
「貴族でもない限り普通は少しくらい冒険者のことは耳に入りますから。それにあの方には私がルイ様に話しかける喋り方で、ルイ様がただならぬ人だということはバレてると思います」
「もうただの平民なんですけどね」
「ご両親が亡くなってしまっただけで、ルイ様が悪いことをしたわけでもないですし、貴族だったことを隠す必要はありませんから気にしないでください」
「でも変に目立つのはちょっと」
「おっし、持ってきたぞ」

 そう言って帰ってきた職員さんは僕とアンナさんのギルドカードを渡してくれる。

「これがあれば依頼で得た金を入れておくこともできるし、店によっちゃそのままこれで買い物だってできる。もちろん冒険者ギルドで引き出す事もできるぞ。あとはそのギルドカードに入ってる金を自分が死んだ時誰かに渡したいなら言ってくれ。俺の方で設定しておいてやる」
「「アンナさん(ルイ様)でお願いします」」
「まぁそういう奴らは多いが、他に設定する奴は居ないか? あんまり言いたくないが、大体同じパーティーだと死ぬタイミングも一緒だぞ」

 そう言われても僕には誰も居ない。

「まぁいつでも追加できるからな。冒険者ギルドに取られたくなかったら設定しろ。それかギルドカードの金を使い切るまで絶対に死ぬな」
「分かりました」
「あとはなんだ、他になんか言う事あったか?」
「依頼の受け方を聞いておりませんよ」
「そうだそうだ、依頼は基本的に依頼ボードに貼ってあるから、それ引き剥がして専用の受付に持って行ってくれ。依頼書の上の方にランクのハンコが押してあるから、それを見て受けることが出来るのか判断してくれ。依頼は自分のランクの1つ上のランクまでなら受けられるから、今のお前らならGランクのハンコが押してある依頼までだな。ただ、ランクが足りてたとしてもこっちで無理だと判断したら受付で拒否することもあるから、そん時は大人しく諦めてくれ」
「分かりました」
「じゃあこれで説明は終わりだ。頑張れよ、新人」

 こうして僕とアンナさんは冒険者ギルドで説明を受け、冒険者になることが出来た。


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