滅びゆく王国と平等の国を築く王女

第２８話：ヴァレリア伯爵夫人への手紙

夜の空気は冷たく澄み渡り、ルシャールの使者であるマティアスは暗い田園地帯を疾走していた。

彼の馬の蹄は土の道を叩き、彼をヴァレリアの領地のある近くのヴァッセルハイム地方へと走らせた。

もうすぐ着く。厚い森と広大なブドウ畑に囲まれた壮大な城塞へと速やかに一通の手紙を届けに。

彼のベルトにはしっかりと封をされたその手紙が結びつけられていた——反乱の運命を変える可能性のある書簡だ。

その書状にはルシャール侯爵の個人の紋章が押され、王国で最も力のある貴族女性の一人、ヴァレリア・フォン・グレモリー伯爵夫人宛てだった。

ヴァレリアは鋭い政治感覚、王太子への嫌悪、そして——最も重要なこととして——進歩的な統治理念で知られていた。

もし彼女がこの大義に加わることができれば、それは他の貴族たちに強力な信号を送ることになるだろう。

マティアスが領地の巨大な鉄の門に近づくと、手綱を引いた。

二人の武装した衛兵が前に出て、斧槍を交差させて警告した。

「止まれ！用件を述べよ。」

マティアスは素早く馬から降り、手袋をはめた手で封をされた手紙を取り出した。
「ルシャール侯爵からの緊急の手紙を持参しました。王国の未来に関するものです」

衛兵たちは警戒した視線を交わし、そのうちの一人が手紙を受け取った。
「ここで待て」

数分後、巨大な門がきしむ音を立てて開き、マティアスは豪華な領地の中に案内された。

シャンデリアが磨かれた大理石の床に金色の光を投げかけ、彼はヴァレリア伯爵夫人の書斎に連れていかれた。

伯爵夫人は３０代前半の印象的な女性で、深紅のガウンを着て高級な椅子に優雅に座っていた。３０代にも関わらず、その美貌ときたらまるで２０代の女性にも見える程にしわがないような若くて整っている容姿をしている。

彼女の銀色のブロンドの髪は肩にかかり、鋭い青い目で彼を冷たく見つめた。

彼女は衛兵から手紙を受け取り、赤い封蝋を破って静かにそれを読んだ。

そして、彼女は顔を上げ、その表情は読み取れなかった。

「そうか…エブリン王女がついに反逆を決意したのね」
ヴァレリアはつぶやき、細い指で羊皮紙を叩いた。

「ルシャールはわたくしが彼と運命を共にすることを期待しているのでしょう？」

マティアスはためらった。
一つの間違った言葉がすべてを台無しにする可能性があることを知っていた。

「ご婦人、王冠はその残酷さの下で崩れつつあります。人々は革命の噂を囁いています。もしあなた様がボクたちと共に立ってくだされば、歴史の正しい側に立つだけでなく、それを形作る手助けをすることになります」

ヴァレリアは椅子に背を預け、考え込んだ。
「そっちの言い分は説得力があるわね。だけど、この反乱が成功するという保証はどこにある？これが単なる愚かな試みではないという保証は？」

マティアスは大胆に一歩前に出た。
「エルフがボクたちの大義に加わりました」

これを聞いて、ヴァレリアの目がわずかに見開かれた。

エルフは長い間中立を保ち、人間の争いに介入することを拒んできた。

もし彼らが王女と手を組んだなら、それはもっと大きな何かが動いていることを意味していた。

長い沈黙の後、ヴァレリアは笑みを浮かべた。

「わかったわ。ルシャールに伝えてくれ。ヴァレリア・モンクレール伯爵夫人は支援を貸す…今のところは」

マティアスはお辞儀をした。
「後悔はさせません、ご婦人。」

彼が夜の中に去っていくとき、一つ確信していた——エブリン王女率いる反乱軍は強力な新しい味方を得たのだ。