滅びゆく王国と平等の国を築く王女

王族好きな鳥ちゃん

文字の大きさ
31 / 48

第30話:モンテクレール公爵領到着

しおりを挟む
馬車がモンテクレール公爵の屋敷に近づくと、エブリン王女とマリクは、王宮さえも霞むほどの壮麗な光景を目の当たりにした。

屋敷は広大な要塞のような大邸宅で、白い大理石の壁が午後の日差しを浴びて輝いていた。

巨大な鉄門の両側には、鎧をまとった騎士たちの石像がそびえ立ち、剣を高く掲げて永遠の警戒を続けているかのようだった。

屋敷の外壁には精巧な金の装飾が施され、モンテクレール家の紋章——真紅の盾の上を舞う銀のグリフォン——を描いた大きな旗が風になびいていた。

門を越えると、屋敷の敷地は広大な広がりを見せ、緑豊かな庭園、純白のアラバスターで作られた噴水、石畳の道に沿ってそびえる樫の木々が広がっていた。

メインの邸宅自体も、複数の翼を持つ豪華な構造で、高くアーチ型の窓と天を突くような尖塔が特徴的だった。

しかし、彼らの息を奪ったのは、その豪華さではなく、軍事力の圧倒的な誇示だった。

公爵の軍:侮れない戦力

訓練場に入ると、灼熱の太陽の下で一団の精鋭兵士たちが訓練を行っていた。

彼らの動きは完璧に同期しており、まるで油を注がれた戦争機械のようだった。金属のぶつかり合う音、命令を叫ぶ声、固い土の上を踏みしめる靴音が空気を震わせた。

彼らはただの一般兵士ではなかった——プロフェッショナルだった。

全身をプレートアーマーで覆った男たちが整列し、磨かれた鋼が鏡のように輝きながら、正確な戦闘訓練をこなしていた。

モンテクレール家の紋章をあしらった優雅な軍服を着た将校たちが彼らの間を歩き、姿勢を直し、鍛え上げられた威厳を持って命令を叫んでいた。

脇では、騎士たちが馬に乗って恐ろしいほどの精度で槍試合を行い、槍が的を正確に突き刺していた。

さらに遠くには、騎兵隊の一団が広大な野原を駆け抜け、軍馬が砂塵を巻き上げながら信じられないほどの規律で機動していた。

各騎兵は精巧に彫刻された胸当てと羽飾り付きの兜を身にまとい、モンテクレール家の色を描いた長い旗が風になびいていた。

マリクは息をのんだ。

「神々よ…」
彼は馬車のドアに手をかけ、身を乗り出しながらつぶやいた。

「これはただの貴族の私兵じゃない…これは戦争の軍隊だ」

エブリンも胸が締め付けられるのを感じた——恐怖ではなく、希望で。
「これ…」
彼女は囁きながら、鎧をまとった兵士たちの軍団、戦略的な陣形、野原の向こうに設営された整然とした戦陣を見渡した。

「これが答えかもしれないわ。これが私たちの望むものかもしれない」

マリクはうなずき、先ほどの懐疑的な表情が一抹の信頼に変わった。

「もしモンテクレールを味方につけられれば」
と彼は言った。

「そしてこれを私たちの精霊たち、ルシャールの兵士、一般兵、傭兵たちと組み合わせれば…この戦争に勝つチャンスが本当にあるかもしれない」
王女は深く息を吸い、金色のハイヒールを屋敷の入り口の磨かれた石の上に踏みしめた。

「彼を説得するわ」
と彼女は力強く言った。

「そうしなければならないのだ」
今度、口調を変えた王女はホムンクルスを倒した時のような男の言葉遣いになっている様子だ。
スイッチが入ったかもしれない。

戦士サイドの王女の内面が。
あれだけの軍事力を見せられたばかりでは高揚した気分にもなっただろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

処理中です...