滅びゆく王国と平等の国を築く王女

王族好きな鳥ちゃん

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第31話:モンテクレール公爵との謁見

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エブリン王女とマリクは、モンテクレール公爵の屋敷の広々とした廊下を案内され、磨かれた大理石の床を靴音を響かせながら進んだ。

壁には、モンテクレール家の歴代の統治者や伝説の戦士たちを描いた豪華な油絵が飾られていた。

高い天井からは金色のシャンデリアが吊るされ、宝石が埋め込まれた豪華な家具や深紅とロイヤルブルーの刺繍が施された布地に温かな光を投げかけていた。

ついに、彼らは公爵の謁見の間へと到着した。

そこは高くそびえる柱が並ぶ広間で、各柱には精巧な戦闘シーンが彫り込まれていた。

部屋の奥には、黒檀に金の装飾が施された高背もたれの椅子に座る、アントワーヌ・フォン・モンテクレール公爵の姿があった。

公爵の威厳:

40代前半のモンテクレール公爵は揺るぎない権威を放つ男だ。

背が高く肩幅が広く、年齢を重ねてもなお威圧感のある体格をしていた。

彼はネイビーブルーの軍服を着ており、金の刺繍と深紅のサッシュが胸元に誇らしげにかかっていた。

磨かれた革靴は蝋燭の灯りを反射し、宝石が散りばめられた儀礼用の剣が腰に下げられていた。モンテクレール家の紋章である銀のグリフォンが胸に刺繍されていた。

彼の鋭く計算高い目が、エブリン達が近づくのをじっと見つめ、手入れの行き届いた銀のひげの下に表情を読み取ることはできなかった。

「お前たちは謁見を求めたな?」
と公爵はついに口を開いた。

その声は重厚で威厳に満ち、戦争と政治に慣れた男の風格を感じさせた。

公爵が彼らを会議室にくるよう通さなかったのは、恐らく王女が今や国内の反逆者としてのレッテルを貼られているばかりなので、王族に対するような普通な礼儀作法をする意味がないと思ったからだろう。

だから、彼ら二人を立たせながら話してもらうつもりのようだ。

「先日までは王家の娘、エブリン王女だった女性。そして貴族ではないマリク。お前たちは儂の館に立ち、儂の好意を求めてきた。話せ。なぜ儂がお前たちを国王陛下の者共へ差し出さず、王令に背いてまで耳を傾けるべきだというのか?」
公爵の問いに、

王女の訴え:

エブリンは深く息を吸い、優雅さと自信を持って一歩前に出た。

彼女は戦いを経験し、困難を乗り越え、残酷さを目の当たりにしてきた。しかし、この瞬間、言葉こそが彼女の武器だった。

「モンテクレール公爵...」
彼女は落ち着いた声で始めた。

「私は王の娘としてではなく、血統以上の大義を掲げる指導者としてここに来た。王政は内側から腐敗している。父と兄は暴政を維持し、希望を踏みにじろうとしている。私はただ傍観し、無辜の民——貴族も平民も、黒人も白人も——が彼らの支配の下で苦しむのを見ているわけにはいかない」

公爵は椅子に背を預け、指を組んだ。
「大胆な言葉だ。しかし、儂は反逆者にはならないつもり」

エブリンは動じなかった。
「反逆者であることを求めているのではない。私はあなたに、先見の明を持つ者、真の繁栄への道を見据える指導者であることを求めている」

彼女は窓の外、公爵の兵士たちが訓練している様子を指さした。

「あなたはこの王国で最も強力な軍事力の一つを指揮している」
と彼女は言った。

「あなたの兵士は規律正しく、騎兵隊は他に並ぶものがない。しかし、もし王があなたを脅威と見なせば、彼は躊躇なく軍をあなたに向けるだろう。あなたは、彼にとって有用である限りしか安全ではない」

モンテクレールの顎がわずかに引き締まったが、彼は口を挟まなかった。

「あなたは秩序を重んじる男だ」
とエブリンは続けた。

「王は混沌そのものだ。もし彼がこの反乱を鎮圧したら、あなたは本当に彼がそこで止まると信じているのか?彼はこの王国を強くしているものを奪い取るだろう。民を恐れる支配者に、統治する資格はない」

マリクの主張:

マリクが前に出た。

「貴方は俺のような者たちがどう扱われているか見てきたはずだ」
と彼は言った。

声は冷静だったが、目には確固たる信念が燃えていた。

「男も女も子供も——死ぬまで働かされ、殴られ、家畜のように売られる。貴方はそれが間違っていると知っている。そして、王がそれを止めることはないと知っている」

彼は拳を握り締めた。

「貴方は戦いの男だ、モンテクレール公爵。しかし、間違った側のために戦う戦争に何の意味がある?暴君に仕えることに何の名誉がある?」

.......

公爵の決断:

広間に沈黙が広がった。

緊張感が充満し、歴史の重みがその瞬間を圧迫していた。

モンテクレールはゆっくりと息を吐き、椅子から立ち上がった。

彼の存在感は圧倒的で、一挙一動が計算されていた。

彼は彼らに向かって歩き、わずか一歩手前で止まった。

「...お前たちは情熱を持って語っていたな」
と公爵は静かに言った。

「そして、お前たちの言葉に真実があることを否定はしない。しかし、...戦争は言葉だけでは勝てまい」

彼の鋼のような灰色の目がエブリンの目を捉えた。

「もし儂がお前たちの大義に力を貸すなら、それは盲目的にはしない。最初の戦いすら始まらないうちに潰されないという保証はどこにある?」

エブリンの心臓は高鳴ったが、彼女は彼の視線を躊躇いなく受け止めた。

「盲信を求めているのではない」
と彼女は言った。

「私は同盟を求めている。既にエルフとの同盟も結んできて、強力な召喚精霊ももらってきた。そして、もしも公爵までも同盟に加われば、その見返りとして何かを提供することが出来る立場にある」

彼女は手を上げた——
そして、彼女の結ばれた精霊の印が輝き、部屋を幻想的な光で満たした。

「私たちはこの戦いで孤立してなどいない!」
と彼女は毅然とした態度で、凛々しい表情しながら声高に宣言した。

「エルフがいる。精霊がいる。民衆がいる。そして、もしあなたが加われば、この王国で最も強力な軍事力を手にすることになる。共に戦えば、私たちは敗北することはないと断言する」

公爵は長い間、彼女を見つめた。

そして、ついにうなずいた。

「提案を検討しよう」
と彼は言った。

「今夜はここに泊まれ。夜明けに条件を話し合おう」

即座の勝利ではなかったが、それで十分だった。

エブリンとマリクは視線を交わした。

彼らは最初の一歩を踏み出せたのだ。
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