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第二章 え、誰だよお前ら!? 城外で無名の三人と遭遇!
名もなき勇者、偽りの王子
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夜の街道沿い。
野営の焚き火に、三人の影がうずくまっていた。
剣士ユリウスは腹を押さえ、術士セリナは水袋を抱え、盾役ガルドは黙って空を仰ぐ。
「……もう、銀貨も尽きた」
「せっかく魔獣を倒しても、報酬は雀の涙だもんな……」
「それに、兵士の派遣が遅すぎる。村が襲われる頃に来ても意味がない……」
不満と空腹で沈む三人の前に――。
「こんばんは。……どうやらお困りのようですね」
銀髪を月光に輝かせた渚が歩み寄り、後ろから倫太郎とミラも現れた。
思わぬ来訪者に、三人は慌てて武器を取るが、渚の穏やかな微笑に気圧される。
「俺たちは旅の者で……ちょっと話を聞かせてもらえないか?」
倫太郎は“ただの青年”の姿で声をかけた。
夜の街道。
闇を裂くように、焚き火がぱちぱちと音を立てていた。
わずかな火の粉が舞い上がり、星空に吸い込まれていく。
三人の若者は、その小さな火を頼りに身を寄せ合っていた。
彼らの顔は疲労と空腹でやつれ、唇は乾き、腹の音が静寂に響いている。
「……遅い」
ユリウスが木の枝を火にくべながら唸るように言った。
「村に魔獣が現れても、兵の到着が遅すぎる。俺たちが必死に食い止めてる間に、何人が死んだと思う……!」
「兵士は悪くないんだよ……」
セリナがかすれた声で返す。
「遠くから走ってくるだけで限界なんだから。でも……王都が、本当に村のことを考えてるのかって……」
「考えてないさ」
低い声でガルドが断じた。
「俺たちの村の叫びなんて、城壁の中には届かない。……王都の連中は、自分たちの宴と安泰しか見てない」
重苦しい沈黙。
火のはぜる音がやけに大きく響いた。
やがてユリウスが、吐き捨てるように呟いた。
「……王子だってそうさ。アレクシス王子? “ワガママ王子”なんて呼ばれてる奴が、俺たち庶民のことなんて気にするわけがない」
その言葉に、倫太郎の心臓が跳ねた。
胸が強く締めつけられ、呼吸が浅くなる。
(……そうだ。俺はアレクシスだ。少なくとも、この身体は)
(けど……! 俺は高原倫太郎で、あんな傲慢で冷酷な王子じゃない!)
喉までこみ上げてくる言葉を、倫太郎は必死に飲み込んだ。
「それは違う」と叫びたかった。
「今の王子は違う」と弁明したかった。
けれど――。
(……俺がアレクシスだなんて言えないよな。ここはただ、耳を傾けるしかない)
倫太郎は火の向こうの三人をまっすぐ見つめ、小さく頷くだけに徹した。
セリナが力なく笑い、声を震わせた。
「でも……それでも、生きていくしかないんだよね。お金がなくても、誰も助けてくれなくても……」
ガルドが頷き、盾を抱きしめるようにして言った。
「俺たちは弱い。……けど、誰かが立たなきゃ村は守れない。だから俺たちは、やるしかないんだ」
火の光に照らされたその横顔は、ひどく未熟で、同時にどこかまぶしかった。
倫太郎は胸の奥がじんと熱くなるのを感じながら、言葉を飲み込む。
隣では、渚が静かに三人の“心の糸”を眺めていた。
そしてミラは、王子の正体を知る者として、ちらりと倫太郎の横顔を見つめ、唇を固く結んでいた。
焚き火は燃え続ける。
その炎は、小さな三人の誇りと憤りを、確かに照らし出していた。
翌朝。
「ギルバート!」
王子の衣をまとった倫太郎が、堂々と声を張り上げる。
「余は決めた! 国の隅々まで“自ら助け合う力”を育てる! ――冒険者ギルドを設立せよ!」
「な、な……冒険者、ギルド……でございますか!?」
執事ギルバートは耳を疑った。
倫太郎はさらにふんぞり返る。
「兵の到着が遅い? ならば余が“民が自ら剣を取る仕組み”を作らせる! 冒険者を募り、依頼を集め、報酬を払うのだ! これぞ余の新たな制度である!」
(……元の世界で読んだ小説そのまんまなんだけどな!)
内心で冷や汗をかきつつ、倫太郎はワガママ王子の仮面を崩さない。
渚は隣で静かに囁いた。
「良い判断ですわ。これならば、昨日の三人のような若者も居場所を得られます」
数日後、王都広場に「冒険者ギルド・ヴァインベルク支部」の看板が掲げられた。
最初に登録簿へ名を記したのは――
あの街道で出会った、ユリウス、セリナ、ガルドの三人だった。
「これで、俺たちにも……正式な依頼が受けられる!」
「もう、ただの無名じゃないんだ!」
「……守れる。人を、村を」
彼らの瞳に、昨日までの疲労はなかった。
倫太郎はその光景を見つめ、胸の奥で呟く。
(――これでいい。俺が“ワガママ王子”でいるうちは、誰も俺の本心に気づかない。でもこうして、誰かを守る仕組みは残せるんだ)
渚は彼の横顔にそっと微笑みを向ける。
「……心の糸が、また一つ織り合わされましたね」
野営の焚き火に、三人の影がうずくまっていた。
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「……もう、銀貨も尽きた」
「せっかく魔獣を倒しても、報酬は雀の涙だもんな……」
「それに、兵士の派遣が遅すぎる。村が襲われる頃に来ても意味がない……」
不満と空腹で沈む三人の前に――。
「こんばんは。……どうやらお困りのようですね」
銀髪を月光に輝かせた渚が歩み寄り、後ろから倫太郎とミラも現れた。
思わぬ来訪者に、三人は慌てて武器を取るが、渚の穏やかな微笑に気圧される。
「俺たちは旅の者で……ちょっと話を聞かせてもらえないか?」
倫太郎は“ただの青年”の姿で声をかけた。
夜の街道。
闇を裂くように、焚き火がぱちぱちと音を立てていた。
わずかな火の粉が舞い上がり、星空に吸い込まれていく。
三人の若者は、その小さな火を頼りに身を寄せ合っていた。
彼らの顔は疲労と空腹でやつれ、唇は乾き、腹の音が静寂に響いている。
「……遅い」
ユリウスが木の枝を火にくべながら唸るように言った。
「村に魔獣が現れても、兵の到着が遅すぎる。俺たちが必死に食い止めてる間に、何人が死んだと思う……!」
「兵士は悪くないんだよ……」
セリナがかすれた声で返す。
「遠くから走ってくるだけで限界なんだから。でも……王都が、本当に村のことを考えてるのかって……」
「考えてないさ」
低い声でガルドが断じた。
「俺たちの村の叫びなんて、城壁の中には届かない。……王都の連中は、自分たちの宴と安泰しか見てない」
重苦しい沈黙。
火のはぜる音がやけに大きく響いた。
やがてユリウスが、吐き捨てるように呟いた。
「……王子だってそうさ。アレクシス王子? “ワガママ王子”なんて呼ばれてる奴が、俺たち庶民のことなんて気にするわけがない」
その言葉に、倫太郎の心臓が跳ねた。
胸が強く締めつけられ、呼吸が浅くなる。
(……そうだ。俺はアレクシスだ。少なくとも、この身体は)
(けど……! 俺は高原倫太郎で、あんな傲慢で冷酷な王子じゃない!)
喉までこみ上げてくる言葉を、倫太郎は必死に飲み込んだ。
「それは違う」と叫びたかった。
「今の王子は違う」と弁明したかった。
けれど――。
(……俺がアレクシスだなんて言えないよな。ここはただ、耳を傾けるしかない)
倫太郎は火の向こうの三人をまっすぐ見つめ、小さく頷くだけに徹した。
セリナが力なく笑い、声を震わせた。
「でも……それでも、生きていくしかないんだよね。お金がなくても、誰も助けてくれなくても……」
ガルドが頷き、盾を抱きしめるようにして言った。
「俺たちは弱い。……けど、誰かが立たなきゃ村は守れない。だから俺たちは、やるしかないんだ」
火の光に照らされたその横顔は、ひどく未熟で、同時にどこかまぶしかった。
倫太郎は胸の奥がじんと熱くなるのを感じながら、言葉を飲み込む。
隣では、渚が静かに三人の“心の糸”を眺めていた。
そしてミラは、王子の正体を知る者として、ちらりと倫太郎の横顔を見つめ、唇を固く結んでいた。
焚き火は燃え続ける。
その炎は、小さな三人の誇りと憤りを、確かに照らし出していた。
翌朝。
「ギルバート!」
王子の衣をまとった倫太郎が、堂々と声を張り上げる。
「余は決めた! 国の隅々まで“自ら助け合う力”を育てる! ――冒険者ギルドを設立せよ!」
「な、な……冒険者、ギルド……でございますか!?」
執事ギルバートは耳を疑った。
倫太郎はさらにふんぞり返る。
「兵の到着が遅い? ならば余が“民が自ら剣を取る仕組み”を作らせる! 冒険者を募り、依頼を集め、報酬を払うのだ! これぞ余の新たな制度である!」
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内心で冷や汗をかきつつ、倫太郎はワガママ王子の仮面を崩さない。
渚は隣で静かに囁いた。
「良い判断ですわ。これならば、昨日の三人のような若者も居場所を得られます」
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「これで、俺たちにも……正式な依頼が受けられる!」
「もう、ただの無名じゃないんだ!」
「……守れる。人を、村を」
彼らの瞳に、昨日までの疲労はなかった。
倫太郎はその光景を見つめ、胸の奥で呟く。
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