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第三章 糸を束ねる者たち
もう一つのクロニクル
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ギルドのカウンター。
ユリウスたちが布袋いっぱいの青香草を差し出すと、待ち構えていた依頼主――凌 玉蓮がにやりと笑った。
「ほっほ……見事ですな。青香草の香り、これで調合も食卓も潤いましょうぞ」
「よしっ! 依頼完了だな!」
ユリウスが胸を張ると、セリナも嬉しそうに頷いた。
「怪我もなく済んで、本当に良かったです……!」
そんな中、玉蓮の視線がひょいと巽に向けられる。
「……さて、“夜明けの鬼斬り”殿もご健在と聞いておりますが?」
「ぶっ……!?」
巽が真っ赤になって飛び上がる。
玉蓮は小さく扇子を取り出し、肩を揺らして笑う。
「ほっほ、退屈な待ち時間も噂話で実に楽しかったものでな。
“ゴーレムを片手で粉砕”“国境線ごと斬る”……いやはや、聞いているだけで胸が躍りますわい」
「躍るな! 誰が国境ごと斬るんだよ!!」
巽が必死に否定する横で――。
ユリウスとセリナは唇を噛んで、必死に笑いを堪えていた。
「くっ……あ、あはは……」
「ゆ、ユリウス……笑ったら……だめ……!」
ガルドでさえ咳払いをして視線を逸らしていた。
理人は机に肘をつき、にやにやと巽を眺める。
「……まあまあ、結果的に盗賊が勝手に逃げたんだから功績だろ。“夜明けの鬼斬り”」
「呼ぶなぁぁ!!」
巽の叫びが、ギルド中に響き渡った。
巽が顔を真っ赤にして叫んでいるところへ、静かに足音が近づいてきた。
振り向けば、ギルド長・藤堂静香が腕を組んで立っていた。
「……騒がしいと思えば。依頼は完了したのですね?」
全員が姿勢を正す。巽も慌てて霊糸の剣をしまい込んだ。
「た、隊長! あの、これは……!」
静香は表情を崩さず、淡々と告げた。
「ええ、確かに聞きました。“夜明けの鬼斬り”――だそうですね」
「ぶふぉっ!? 隊長までぇぇ!?」
巽は机に突っ伏した。
静香は小さく息を吐き、しかし口元がわずかに緩む。
「……異名がどう広まろうと、実際に仲間を守ったのは事実。
ならば、その名に恥じぬ働きを続けなさい」
「ひ、ひどい……完全に受け入れたじゃないですか……!」
巽が頭を抱えてうめく横で、ユリウスたちは限界寸前。
「ぷっ……!」
「ふふっ……!」
「……っ……」
全員が肩を震わせて笑いをこらえていた。
最後に静香がすっと踵を返し、落ち着いた声を残す。
「では、“鬼斬り”。明日の訓練は少し内容を厳しくしましょう」
「それもう罰ゲームだろぉぉ!!」
巽の悲鳴と、仲間たちの笑いがギルドに響き渡った。
王子の私室、裏口の奥。
倫太郎は机に肘をつき、窓の外を眺めていた。
「……やっぱり、巽って“霊糸のクロニクル”の主人公なんだよなぁ」
ぽつりと漏らした声に、隣の渚が小首を傾げる。
「主人公……?」
倫太郎は小さく笑い、指先で机をとんとん叩いた。
「あのゲームのストーリー、最初に動き出すのは巽だったんだ。
親友を失って、でも仲間を守るために立ち上がって……
無茶ばっかで、静香さんに叱られて、それでも突っ込んでいく」
渚は静かに目を伏せ、息を整えるように頷いた。
「……確かに、彼の姿勢は昔から変わりません。
不器用ですが、誰よりも仲間を想って行動する……そういう人です」
倫太郎は苦笑した。
「主人公が横にいるって、なんか変な気分だよ。
俺なんてただの“転生して王子のフリしてる高校生”なのにさ」
渚はそっと湯呑を差し出し、柔らかい声で告げた。
「――主人公は一人とは限りません。
巽さんが仲間を守る剣であるなら、倫太郎は仲間を繋ぐ指揮官です。
それぞれの物語を紡ぐ役割があるのではないでしょうか」
倫太郎は受け取った湯呑を見つめ、少し赤い顔で呟いた。
「……そっか。俺なりの“主人公”をやればいいってことか」
渚の微笑みが、静かな部屋に柔らかい灯を落とした。
ユリウスたちが布袋いっぱいの青香草を差し出すと、待ち構えていた依頼主――凌 玉蓮がにやりと笑った。
「ほっほ……見事ですな。青香草の香り、これで調合も食卓も潤いましょうぞ」
「よしっ! 依頼完了だな!」
ユリウスが胸を張ると、セリナも嬉しそうに頷いた。
「怪我もなく済んで、本当に良かったです……!」
そんな中、玉蓮の視線がひょいと巽に向けられる。
「……さて、“夜明けの鬼斬り”殿もご健在と聞いておりますが?」
「ぶっ……!?」
巽が真っ赤になって飛び上がる。
玉蓮は小さく扇子を取り出し、肩を揺らして笑う。
「ほっほ、退屈な待ち時間も噂話で実に楽しかったものでな。
“ゴーレムを片手で粉砕”“国境線ごと斬る”……いやはや、聞いているだけで胸が躍りますわい」
「躍るな! 誰が国境ごと斬るんだよ!!」
巽が必死に否定する横で――。
ユリウスとセリナは唇を噛んで、必死に笑いを堪えていた。
「くっ……あ、あはは……」
「ゆ、ユリウス……笑ったら……だめ……!」
ガルドでさえ咳払いをして視線を逸らしていた。
理人は机に肘をつき、にやにやと巽を眺める。
「……まあまあ、結果的に盗賊が勝手に逃げたんだから功績だろ。“夜明けの鬼斬り”」
「呼ぶなぁぁ!!」
巽の叫びが、ギルド中に響き渡った。
巽が顔を真っ赤にして叫んでいるところへ、静かに足音が近づいてきた。
振り向けば、ギルド長・藤堂静香が腕を組んで立っていた。
「……騒がしいと思えば。依頼は完了したのですね?」
全員が姿勢を正す。巽も慌てて霊糸の剣をしまい込んだ。
「た、隊長! あの、これは……!」
静香は表情を崩さず、淡々と告げた。
「ええ、確かに聞きました。“夜明けの鬼斬り”――だそうですね」
「ぶふぉっ!? 隊長までぇぇ!?」
巽は机に突っ伏した。
静香は小さく息を吐き、しかし口元がわずかに緩む。
「……異名がどう広まろうと、実際に仲間を守ったのは事実。
ならば、その名に恥じぬ働きを続けなさい」
「ひ、ひどい……完全に受け入れたじゃないですか……!」
巽が頭を抱えてうめく横で、ユリウスたちは限界寸前。
「ぷっ……!」
「ふふっ……!」
「……っ……」
全員が肩を震わせて笑いをこらえていた。
最後に静香がすっと踵を返し、落ち着いた声を残す。
「では、“鬼斬り”。明日の訓練は少し内容を厳しくしましょう」
「それもう罰ゲームだろぉぉ!!」
巽の悲鳴と、仲間たちの笑いがギルドに響き渡った。
王子の私室、裏口の奥。
倫太郎は机に肘をつき、窓の外を眺めていた。
「……やっぱり、巽って“霊糸のクロニクル”の主人公なんだよなぁ」
ぽつりと漏らした声に、隣の渚が小首を傾げる。
「主人公……?」
倫太郎は小さく笑い、指先で机をとんとん叩いた。
「あのゲームのストーリー、最初に動き出すのは巽だったんだ。
親友を失って、でも仲間を守るために立ち上がって……
無茶ばっかで、静香さんに叱られて、それでも突っ込んでいく」
渚は静かに目を伏せ、息を整えるように頷いた。
「……確かに、彼の姿勢は昔から変わりません。
不器用ですが、誰よりも仲間を想って行動する……そういう人です」
倫太郎は苦笑した。
「主人公が横にいるって、なんか変な気分だよ。
俺なんてただの“転生して王子のフリしてる高校生”なのにさ」
渚はそっと湯呑を差し出し、柔らかい声で告げた。
「――主人公は一人とは限りません。
巽さんが仲間を守る剣であるなら、倫太郎は仲間を繋ぐ指揮官です。
それぞれの物語を紡ぐ役割があるのではないでしょうか」
倫太郎は受け取った湯呑を見つめ、少し赤い顔で呟いた。
「……そっか。俺なりの“主人公”をやればいいってことか」
渚の微笑みが、静かな部屋に柔らかい灯を落とした。
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