俺がワガママ王子なわけがない! ~交通事故で転生したら、評判最悪の王族になっていた件~

角砂糖

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第六章 王都騒乱録 ~不協和と珍騒動~

裏切り顔100%、忠義心120%

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疑われすぎた執事

村の寄合所の一角。
黒髪を撫でつけ、細い糸目を光らせた執事が深々と頭を下げていた。

「……例の魚の行方ですが、調べがつきました」

だが。

「うさんくせぇ……」
「裏切りそうだ……」
「なんか黒衣の仲間っぽい……」

一同は一斉に眉をひそめ、まるで合唱のように疑いの声を上げる。
糸目というだけで、ここまで信頼度ゼロになる男も珍しい。

「……な、なぜ……!?」
執事は途方に暮れ、糸目をさらにしょんぼりと細めた。

そんな中、渚が静かに歩み寄る。
「――わたしは、聞きます。糸目で人を決めつけるのは、間違いですから」

倫太郎の隣でそう言い切る渚の声は、場の空気をぴしゃりと引き締めた。

「……渚、マジ天使……」
倫太郎は思わず呟き、巽はジト目を向ける。

「……でもよ、裏切りフラグにしか見えねぇだろ」

「巽さん」
渚の一言。

「……はい」
叱られて巽は素直に頭を下げるしかなかった。

そこへ、さらに追い打ちが入る。

「まったく……! 巽さん!」
ミラが両手を腰に当て、ぷんすか怒っていた。
「この方は王子様の身近で、誰よりも忠実に仕えてきたのです! 糸目だからって疑うなんて失礼です!」

「え、えぇ……? ミラちゃんにも怒られるのかよ……」
巽はすっかり肩を落とした。

「……ミラ殿……」
執事は胸に手を当て、感極まったように小さく頷いた。


王都・城内――

廊下を行き交う侍女や兵士たちは、今日も妙な噂話で持ちきりだった。

「聞いた? 魚が根こそぎ消えた件……」
「ええ、聞きました。犯人は“裏切りそうな糸目の執事”って噂ですよ」
「やっぱり!? だって糸目って絶対裏があるでしょ!」
「ほっほ……(←玉蓮の売り歩き声の真似)って笑いながら闇取引してそうだよね」

「でもさぁ、その執事さん、実際はちゃんと情報持ってきたらしいよ?」
「は? それ信じるの? 次は“魚を操る裏切り執事”になるんじゃない?」
「いやいや、王子付きの侍女のミラ様が全力で擁護してたって話よ?」
「えっ、ミラ様が!? じゃあ……本当に忠義者なの……?」

「でもさ、結局は魚なくなったんだろ?」
「そうそう! 魚はどこ行ったのよ!」
「魚を取り返すより、執事が裏切らないって方が衝撃的だったわ」
「……なんかもう“魚か執事か”の話になってきたな」

極めつけに、廊下の隅で小声が飛ぶ。

「王子様はまた引きこもり延長らしいぞ」
「理由は“魚ショック”って噂だぜ」
「マジかよ……!」
「でも一番可哀想なのは、胃薬がまた売り切れたギルバート様だな……」


王城の廊下

今日も兵士や侍女たちの噂話は止まらない。

「……結局、魚は見つからなかったんだって」
「そのせいで王子様、また引きこもり延長なんでしょ?」
「まぁ……ワガママ王子だしなぁ……」

くすくす、と忍び笑いが漏れた――その時。

「……誰が、引きこもりだと?」

重々しい声が響いた。
侍女も兵士も凍りつき、一斉に振り返る。

そこに立っていたのは――金髪碧眼の第一王子、アレクシス・フォン・ヴァインベルク。
冷たい眼差しを細め、低く告げる。

「余は公務に励み、日夜この国を案じておる。魚ごときで引きこもるわけがなかろう」

空気が一気に張り詰め、ざわめきが飲み込まれる。

「ひ、ひぃ……! し、失礼いたしました……!」
「も、もちろんです王子様! 引きこもりなどと……そ、そのようなこと……!」

青ざめた兵士と侍女たちは、必死に頭を下げるしかなかった。

アレクシス(倫太郎)は背を向け、堂々と歩み去る。
だが――廊下を曲がった途端。

「……うわぁ、なんだよこの無理ゲー……」
倫太郎は顔を覆い、肩を落とした。

後ろから静かに歩み寄った渚が、囁くように微笑む。
「大丈夫。糸はあなたを支えています」

その言葉に、倫太郎の心はようやく少し落ち着いた。
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