勇者パーティクビになったら美人カウンセラーと探偵業始めることになってしまった

角砂糖

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第二章「迷いの森のキノコ採取依頼」

隣人は商人少女

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翌朝。
相談所の掃除を終えて、雑巾を絞りながら扉を開ける。
すると――目の前に、昨日まで荒れ果てていた隣の空き家が、まるで一晩で生まれ変わったかのように華やかに飾られていた。

「……え?」
思わず目をこすった。

色鮮やかな布が窓辺にかけられ、木製の看板には金色の塗料で文字が刻まれている。
軒先には香辛料の袋や乾燥した薬草の束まで吊り下げられており、異国の市場のような雰囲気だ。
そして、暖簾には見覚えのある大きな文字が――

《玉蓮商会》

「お、おいおいおい……!?」
声が裏返った俺の耳に、背後から聞き覚えのある笑い声が響く。

「ほっほ……おはようさんじゃな」
振り向くと、玉蓮が背負い袋を下ろし、したり顔で腰に手を当てていた。

「ぎ、玉蓮さん!? なんでここに!?」
「決まっておる。信用に値する隣人が見つかったゆえ、腰を落ち着けただけのことよ」

「そんなノリで引っ越してくるなぁぁぁ!」
俺の叫びを完全にスルーして、玉蓮は悠々と店先を整えていく。
背負い袋からは薬草や鉱石が次々と取り出され、棚に並べられていく。
香辛料の香りが風に乗って漂い、朝の通りを一気に賑やかに変えてしまった。

渚さんは隣の光景をちらりと見やり、口元に柔らかな笑みを浮かべた。
「……賑やかになりそうですね、倫太郎さん」

「賑やかっていうか……騒がしすぎる未来しか見えないんですけど!?」
頭を抱えながら、俺は店先で威勢よく声を張り上げる玉蓮の姿を横目で見た。

(いやもう……隣が玉蓮さんって、絶対トラブルの予感しかしないだろ……!)

それでも、心のどこかでほんの少し――胸が温かくなるのを、俺は否定できなかった。
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