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王国編
8-出発
しおりを挟むそして一夜明けた。
オクソセスへ行く準備を整えて明日馬車で出発する。
元々着ていた(先日の件で焦げたが美穂の異能で再生した)服では目立つので、新調する事になった。なろう系ならお約束だ。
陰葦は弓使いっぽい格好、美穂はローブ整えてとんがり帽子でザ・魔法使いみたいな格好、俺は何か剣士っぽい格好だ。異能や魔法の適性を考えてこうなった。技術面に関して言うのは野暮ってやつだな。多分。
昼間は市場で必要そうなアイテムを調達、今は宿屋で夕食を取りながらこれからの事について話し合っているところだ。
「剣聖か~、どんな人なんだろう」
「絶対つよいよね。だって伝説だもん」
「市場で聞いた感じ人柄も良さそうだし、強い人に鍛えてもらえるなら丁度いい」
強くなるのは目先の目標として、問題はどれくらいの強さが欲しいかだ。よく漫画とかで「何故力を求める? その力で何を成したい」的なこと質問してるイメージがあるが、実際明確なゴールを設定せずに物事に取り組むのはまずいな。何年も修行に費やすつもりは無いが、短期間で何とかなるとも思っていない。そうだな。一先ず今のランクに似合った実力は欲しいし、当分の個人的な目標はそれでいいか。
「俺は先ず今のランクに似合った実力が欲しい」
「なら僕は総也と同じランクを目指そうかな」
「なら私も。皆仲良くお揃いが一番だよね」
なるほどな。やはり俺はマイルドなサ◯ケ枠だったんだな。全くもって天才ではないが、主人公のいい刺激になれるよう精進しようじゃないか。
翌朝、三人で予約した馬車を待つ。この世界には公共交通機関のようなシステムはまだなく、個人タクシーならぬ個人馬車があるらしい。待つこと30分程、予定より遅れて馬車がやってくる。聞いたところによるとこういうのは大体時間通りには来ないらしい。まぁ日本人の感覚としては馴染みないが、海外の電車とかはそんな感じらしいし変な事ではないか。
はしゃいでいる美穂に連れられて馬車に乗る。
「人生初馬車だよ。初馬車!」
「はしゃぎ過ぎだよ美穂」
「そういう陰葦こそ。楽しそうじゃん」
「そ、そんなことないよー」
俺は空気だ。これでいいのだ。
二人のやり取りを聞きながら数時間、馬車の中で昼飯を取る。よなろう系でよくある馬車の揺れなんかは全然気にならない。スプリングのようなものは付いていなかったが、専用の魔導具を使用してある程度快適に過ごせるらしい。冷静に考えて何が不便かという価値観さえ同じなら科学が魔法に置き換わっただけで、解決出来る事に大きな差ない筈だ。
「とまれ!」
大きな怒鳴り声と共に馬車が止まる。
「どうしたのかな」
「ちょっと見てくる」
「俺も行く」
3人で馬車を出るとなろう系でよく見る山賊達がいた。17人か18人ってところだな。俺達の方をニヤニヤと見ながら頭領らしき男が近寄ってくる。
「安心しな大人しくしてれば手荒な真似はしねぇ。金目のものと女奪った後、タコ殴りにして逃がして背後から弓矢で殺すだけだ」
何も安心出来ないし、全部言ったなこいつ。敵対するのは確定したので武器に手を伸ばすと盗賊達が一斉に襲いかかってくる。
美穂が土魔法で拘束、陰葦が創造した矢を放ち盗賊達を倒していく。いい連携技だ。
俺は流魔法で動きを加速して、熱魔法で熱した剣で斬った瞬間に塊魔法で運動エネルギーを一点集中させるスタイルで敵を倒していく。『犠牲』を使ったカウンター技はいざという時の必殺技ということで、使い所は見極めていこうと思う。
十数分ほど戦って賊達を全員倒す。
ご都合主義のおかげか、人を斬っても何にも思わない。何人かは死んでいるのに。 ・・・・今は考えても仕方ない。
「総也。大丈夫?」
「ん? 大丈夫だぞ」
「あーーー!!!」
美穂の叫び声に振り向く。
「どうした!?」
「ばっ、馬車が・・・・」
馬車? あれ? 俺達がさっきまで乗っていた馬車がない。
少しの間呆然とした後、陰葦と顔を見合わせる。
「もしかして奪われた?」
「或いは逃げたか」
命あっての商売だ。逃げたにしても文句は言えないな。馬車から徒歩になったのは痛手だ・・・・許さんぞ、馬車のおっさん!
これ以上ここにいてもどうしようもないので仕方なくその場を後にしようとした瞬間、突然白髪の老人が目の前に現れる。
「災難だったな、君達」
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