闇堕ちヒロインと呪われた吸血鬼は至極平凡な夢を見る〜吸血鬼になった僕が彼女を食べるまで〜

手塚ブラボー

文字の大きさ
4 / 53
第1章 ラスラ領 アミット編

03 リディアと僕

しおりを挟む
 僕のたった一人の妹サラは、街一番の美人だった。

 それに加え学業も超が付くほど優秀。
 成績はいつもトップをキープ。
 僕と同じく父さん譲りの緑の瞳グリーンアイは、サラの魅力を一層増したし、とても希少なそれは彼女を更に高貴なものに見せた。

 クラスの男子は全員が漏れなくサラのことを好きだったし、女子だってサラと仲良くしたがった。
 サラと仲良くすれば自分のレベルや立ち位置も上がると思ったのだろうか。
 だけれど実際は違った。

 自分とサラを否応なしに比べられることで、余計に惨めになるのだった。
 その気持ちは痛いほど解る。

 僕はいたって平凡。

「サラちゃんのお兄ちゃんなのに、なんだか普通なのね……」
「きっと複雑な理由があるのよ……」

 そんな陰口は何度も叩かれたことがあった。
 因みに僕もサラも父さんと母さんの子供だ。
 複雑な理由などない。


 これがもし同性の男兄弟ならば、嫉妬の一つもしたのかもしれない。
 サラが女の子じゃなかったら僕は耐えられなかったのかもしれない。

 しかし僕とサラは別の生き物なのだ。
 そう理解できたのは、僕のこれまでの人生においての美点だと言える。
 生まれた時からサラは美しかった。
 普通の赤子とは明らかに違う次元にいる。
 ひょっとするとサラは天使なのではないだろうか。
 本気でそう思ったりもした。

 サラをだと認めることで、僕は普通に生きていける。
 むしろ嫉妬でもしていた方が僕自身の為になったのかもしれないが。


 僕は美しく優秀な妹を溺愛した。
 サラの為ならこの身を投げ売ったってかまわない。
 サラの幸せが僕の幸せだといつからか考えていた。


 先日14歳になったサラは、今まで以上に綺麗になった。
 町ゆく人々は振り返り、花も恥じらって萎む。

 許されるのであれば、サラの小さく華奢な背中に背後から抱きつき、頭皮の匂いを胸いっぱいに吸い込み吟味する。

 それが僕の生き甲斐だと自身を持って言える。

 そうすると烈火の如し平手打ちが飛んでくる。

「もう! お兄ちゃんの変態!」

 それを敢えてかわさずに頬で受け止める。
 それがお兄ちゃんだろ?
 違うかい?

「ごめん! 痛かった?」と心配されるのを含めて一セットだ。

 友人たちは気持ち悪がったけれど、そんなことはどうだっていいのだ。
 サラがいて初めて僕という人間が完成するのだ。

 前途有望な妹をサポートするのが僕の存在証明なのだ。

 …………そんな僕には目標も夢もなかった。



 石切り場の面接は簡単に終わった。
 名前、住所、年齢。それを言っただけで面接は終わり、僕は明日からこの石切り場で働く事となった。

「はい。就職祝い」

 初出勤日の朝、サラが照れた笑みで何かを差し出した。
 それは小さな箱に入って、しっかりとラッピングされている。

「私の入学祝いにもプレゼントくれたでしょ? これはお返しだよ。恥ずかしいから私のいないところで開けてよね」

 突然のプレゼントに驚いている僕にそう言った。

「じゃあ、私は行ってくるから」

 照れ隠しに大きな声でそう言うと駆けて行った。
 涙が出てきた。
 本当にいい妹だ。
 お兄ちゃんやってきて良かった。

 そのときある衝動に駆られた。
 今すぐにサラを追いかけて、ペロペロと舐め回すのだ。
 嫌がる表情を記憶に保存して、サラの肖像画を描こう。
 そしてそれをこっそりサラの部屋に飾るのだ。
 帰宅して肖像画を見たときの驚く顔が見てみたい。
 いやいや落ち着けよ。
 今日の僕は忙しいのだ。

 ペロペロは帰るまで我慢するとしよう。
 プレゼントの中身は帰ってから確認するとするか。
 楽しみだ。
 よし! 今日は頑張るぞ!

 悦に浸っていると、今度は何かが僕の肩にのしかかった。
 なんだこの柔らかいの。

「ペリドット! やっと就職決まったかー! 今度はクビにならないように気をつけろよ!」

 声の主はリディアだ。
 すらりとした長身に、程よく筋肉の付いた四肢。
 燃えるような赤髪のショートカット、男勝りの口調、目のやり場に困る程に豊満な胸。
 そして底なしに明るい性格。
 それが僕の幼馴染み、リディアだ。

「脅かすなよリディア! 大事な初出勤なんだよ? 骨折でもしたらどうする」
「なんで声を掛けただけで骨折するんだよ。
 あんたがそんなにヤワじゃないこと、あたしは知ってるんだぜ?」

 お前のその重たい巨乳がのしかかったんだよ。
 と言おうと思って止める。
 わざとじゃないんだし、次から意識されると勿体なくて何だか嫌だし。
 てゆうか、昔はこんなにデカくなかったぞ?

 騎士団の制服に身を包んだリディアは随分と立派に見えた。
 なるべくなら制服姿のリディアのことを見たくはなかった。
 置いて行かれたような気になって、少しだけ寂しくなる。




 リディアと僕は子供の頃からずっと一緒だった。
 同じように遊び、学び、悪さをした。

 15歳で大人だと認められてからは、街で働きだした僕とは違いリディアはラスラ騎士団に入団した。
 その類稀な戦闘センスと容姿も相まって、既に〝期待のルーキー〟の肩書を欲しいままにしている。
 リディアは、騎士団内で話題になっているを教えてくれた。

「ねえペリドット。吸血鬼バンパイアって知ってるか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

処理中です...