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第1章 ラスラ領 アミット編
32 シルビア
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___試験当日。
「お兄ちゃん!! 朝だよ! もうっ今日は大切な日なんでしょ!?」
「むにゃむにゃ……あと……すこしだけ……」
「何言ってんの! リディアさん来てるんだからね!」
「おーい、ペリドットー。早く起きろよなー」
もう朝……? リディアとサラ……か……だめだ……目が開かない……
「ダメだこりゃ。……よーし」
「え? リディアさん何してるの?」
……ん……? 僕の足……足が……? いいや、寝よ……
「こうして、こうして……これでよし。ふん!」
「ぎゃっ!! ま、待てリディア……! そこは筋肉痛がっ!!」
「あれぐらいの稽古で情けないなー。痛いなら解いてみろっ!」
「ちょ、ちょっとリディアさん! もう子供じゃないんだしそういう寝技は……!」
「……ん? ひゃあっ! ご、ご、ごめんペリドット……!」
痛たたた……いつまで子供のつもりだよ!
てか照れるんならそんなことするんじゃないよ……!
もう、色んな意味で目が覚めちゃったじゃないか。
ふと見るとリディアは赤面していた。
そして何故かサラまでもが赤面しているのだった。
◇◇◇
入団試験に向けて、リディアが毎晩遅くまで稽古をつけてくれた。
リディアは子供の時とは比べものにならない程に剣術が上達していた。
ラスラ領では唯一、10代で一級剣士として認められただけの実力はある。
しなやかで素早い攻撃が特徴で、誰が付けたのか蜜蜂という異名があるらしい。
期待の新人だの蜜蜂だのと人気者だな。
悔しいけれど今の僕じゃまず勝てない。
パワーの差というよりもスピードや判断力の差だろうか。
予見を使えばあるいは勝てるのかもしれないけれど、それじゃ意味がないよな。
しばらく予見を使うのはよそう。
あれは緊急用だ。
リディアの稽古は辛かった。
普段の生活では使わない筋肉が悲鳴をあげた。
魔術師にはあまり筋肉は必要ない……魔術と剣術、両立している人がいない秘密はこれなのかもしれない。
そう、魔術師は楽して強い。
前衛の剣士に守られながら、長い長い詠唱をブツブツ唱えていればいいのだ。
もっとも、レベルの高い魔術師は詠唱を端折ったりできるらしい。
アイリーンならともかく、僕には縁のない話である。
ともあれ、フィジカル重視の剣士は凄い。
矢面に立って魔術師を守りながら攻撃もこなすだなんて。
体力もそうだが、精神力が違うよな。
いやー剣士さんには足を向けて寝れませんね。
◇◇◇
試験会場は騎士団本部の営庭で行われた。
会場は既に超満員のお祭り状態だ。
剣士同士の試合が観戦できるのだ、娯楽としては十分だ。
地下闘技場となんら変わらないような気がしないでもなかったけれど、地上には地上の列記としたルールがある。
もちろん違法行為はない。
これみよがしに酒やツマミを売り歩いている商人もちらほら見掛けたが、誰も咎めようとする者はいなかった。
それを含めての試験、いや、もはや只のお祭りだってことだ。
会場では同時に4組の試合が行われる。
真剣は使用できず、参加者全員に木刀が配布された。
防具も配布されたもので、分厚い皮の装備品だった。
しっかりと着込めば、姿勢が良くなって可動域が広がった気がした。
試合後は持ち帰り自由だそうだ。
さすがはラスラ領直属の騎士団。
金の掛け方が違う。
試合のルール、即ち合格基準だが、一勝すれば合格、二敗すれば失格の逆トーナメント戦だった。
因みに相手を殺した場合も失格。
永久に試験資格を剥奪されてしまう。
もし二敗してしまっても、審査員の見立て次第では合格することもあるらしい。
要するに合格させる為の試験だということだ。
ラスラ騎士団は慢性的な人手不足だった。
それもフィリス国からの信頼が厚いからだと言われている。
フィリス国周辺、というか中央大陸は魔獣の脅威は低いとされているが、実際はここ数年で魔獣の数は少しずつ増えているらしい。
冒険者ギルドの無いアミットの周辺は、特に騎士団の活躍が望まれている。
団長である父さんが家を留守にしがちなのも、魔獣の討伐に出る機会が増えたからだ。
慢性的な人手不足とはいえ、団員の職責は他国と比較してフラットだ。
傭兵のような意味合いが大きく、討伐の参加は意外と自由だ。
歩合制度を採用しているので副業程度に籍を置く者も多いと聞く。
勿論、団長は別だけど。
リディアは仕事を休んでサポートに回ってくれた。
「ペリドット……ちょっと残念なお知らせがあるんだけど……聞く?」
リディアが耳打ちをした。
笑顔が引き攣っている。
え、なになに? 怖いんですけど?
「一回戦の相手、有名人だよ……」
「有名人?」
確か相手の名前はシルビア? とか書いてたっけ?
「うん……彼はシルビア・トレモンド。
上級貴族トレモンド家の末弟、素行が悪くて跡継ぎ争いから失脚したらしいけれど……腕の良さは折り紙付きだ……」
「僕はペリドット・アーガイル。
アーガイル家の長男、正当な後継ぎだ! 折り紙は得意な方だ」
「ふざけてられるのも今のうちだな……ご愁傷様」
と、リディアは僕の肩に手を置いた。
おいおい何がご愁傷様だ。
それに僕はふざけてなどいない。
どちらかと言うと……そうだ、ビビっているのだ。
いかにも喧嘩っ早そうなゴリゴリの不良が、くちゃくちゃと口を動かしながら、僕を眼力で殺しそうな勢いで睨みつけてきているからだ。
リディアは追い打ちをかけるように言った。
「ああ見えてシルビア・トレモンドは……B級冒険者なんだ」
「お兄ちゃん!! 朝だよ! もうっ今日は大切な日なんでしょ!?」
「むにゃむにゃ……あと……すこしだけ……」
「何言ってんの! リディアさん来てるんだからね!」
「おーい、ペリドットー。早く起きろよなー」
もう朝……? リディアとサラ……か……だめだ……目が開かない……
「ダメだこりゃ。……よーし」
「え? リディアさん何してるの?」
……ん……? 僕の足……足が……? いいや、寝よ……
「こうして、こうして……これでよし。ふん!」
「ぎゃっ!! ま、待てリディア……! そこは筋肉痛がっ!!」
「あれぐらいの稽古で情けないなー。痛いなら解いてみろっ!」
「ちょ、ちょっとリディアさん! もう子供じゃないんだしそういう寝技は……!」
「……ん? ひゃあっ! ご、ご、ごめんペリドット……!」
痛たたた……いつまで子供のつもりだよ!
てか照れるんならそんなことするんじゃないよ……!
もう、色んな意味で目が覚めちゃったじゃないか。
ふと見るとリディアは赤面していた。
そして何故かサラまでもが赤面しているのだった。
◇◇◇
入団試験に向けて、リディアが毎晩遅くまで稽古をつけてくれた。
リディアは子供の時とは比べものにならない程に剣術が上達していた。
ラスラ領では唯一、10代で一級剣士として認められただけの実力はある。
しなやかで素早い攻撃が特徴で、誰が付けたのか蜜蜂という異名があるらしい。
期待の新人だの蜜蜂だのと人気者だな。
悔しいけれど今の僕じゃまず勝てない。
パワーの差というよりもスピードや判断力の差だろうか。
予見を使えばあるいは勝てるのかもしれないけれど、それじゃ意味がないよな。
しばらく予見を使うのはよそう。
あれは緊急用だ。
リディアの稽古は辛かった。
普段の生活では使わない筋肉が悲鳴をあげた。
魔術師にはあまり筋肉は必要ない……魔術と剣術、両立している人がいない秘密はこれなのかもしれない。
そう、魔術師は楽して強い。
前衛の剣士に守られながら、長い長い詠唱をブツブツ唱えていればいいのだ。
もっとも、レベルの高い魔術師は詠唱を端折ったりできるらしい。
アイリーンならともかく、僕には縁のない話である。
ともあれ、フィジカル重視の剣士は凄い。
矢面に立って魔術師を守りながら攻撃もこなすだなんて。
体力もそうだが、精神力が違うよな。
いやー剣士さんには足を向けて寝れませんね。
◇◇◇
試験会場は騎士団本部の営庭で行われた。
会場は既に超満員のお祭り状態だ。
剣士同士の試合が観戦できるのだ、娯楽としては十分だ。
地下闘技場となんら変わらないような気がしないでもなかったけれど、地上には地上の列記としたルールがある。
もちろん違法行為はない。
これみよがしに酒やツマミを売り歩いている商人もちらほら見掛けたが、誰も咎めようとする者はいなかった。
それを含めての試験、いや、もはや只のお祭りだってことだ。
会場では同時に4組の試合が行われる。
真剣は使用できず、参加者全員に木刀が配布された。
防具も配布されたもので、分厚い皮の装備品だった。
しっかりと着込めば、姿勢が良くなって可動域が広がった気がした。
試合後は持ち帰り自由だそうだ。
さすがはラスラ領直属の騎士団。
金の掛け方が違う。
試合のルール、即ち合格基準だが、一勝すれば合格、二敗すれば失格の逆トーナメント戦だった。
因みに相手を殺した場合も失格。
永久に試験資格を剥奪されてしまう。
もし二敗してしまっても、審査員の見立て次第では合格することもあるらしい。
要するに合格させる為の試験だということだ。
ラスラ騎士団は慢性的な人手不足だった。
それもフィリス国からの信頼が厚いからだと言われている。
フィリス国周辺、というか中央大陸は魔獣の脅威は低いとされているが、実際はここ数年で魔獣の数は少しずつ増えているらしい。
冒険者ギルドの無いアミットの周辺は、特に騎士団の活躍が望まれている。
団長である父さんが家を留守にしがちなのも、魔獣の討伐に出る機会が増えたからだ。
慢性的な人手不足とはいえ、団員の職責は他国と比較してフラットだ。
傭兵のような意味合いが大きく、討伐の参加は意外と自由だ。
歩合制度を採用しているので副業程度に籍を置く者も多いと聞く。
勿論、団長は別だけど。
リディアは仕事を休んでサポートに回ってくれた。
「ペリドット……ちょっと残念なお知らせがあるんだけど……聞く?」
リディアが耳打ちをした。
笑顔が引き攣っている。
え、なになに? 怖いんですけど?
「一回戦の相手、有名人だよ……」
「有名人?」
確か相手の名前はシルビア? とか書いてたっけ?
「うん……彼はシルビア・トレモンド。
上級貴族トレモンド家の末弟、素行が悪くて跡継ぎ争いから失脚したらしいけれど……腕の良さは折り紙付きだ……」
「僕はペリドット・アーガイル。
アーガイル家の長男、正当な後継ぎだ! 折り紙は得意な方だ」
「ふざけてられるのも今のうちだな……ご愁傷様」
と、リディアは僕の肩に手を置いた。
おいおい何がご愁傷様だ。
それに僕はふざけてなどいない。
どちらかと言うと……そうだ、ビビっているのだ。
いかにも喧嘩っ早そうなゴリゴリの不良が、くちゃくちゃと口を動かしながら、僕を眼力で殺しそうな勢いで睨みつけてきているからだ。
リディアは追い打ちをかけるように言った。
「ああ見えてシルビア・トレモンドは……B級冒険者なんだ」
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