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第1章 ラスラ領 アミット編
34 鬼の所業
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ウインドはフィーナの魔術だ。
けれど、それをわざわざ教えてあげる必要もないだろう。
これは勝負だ。駆け引きだ。戦争だ。
しかしながら折角だ。
ご教示してもらえるのならいい機会。
シルビアから言われた通りにやってみようじゃないか。
少しずつ魔力を浸透させてけばいいって言ってたか……少しずつ…………少しずつ……あっ! なんだか剣先が熱くなってくるような感覚があるぞ!
「シルビアさん! こうですか?」
「お前できるじゃねぇか! それで殴れば通常とは比べ物にならないくらいの重い攻撃ができるぜ。足に集めれば移動の速度を上げることもできる。……じゃあこれはどうだ? 木刀に浸透させた魔力を少しずつ広げていくと…………どうだ? 盾のように使うことだってできんだ」
「す、すごいです! だからあんなスピードで移動できたんですね! その盾、近くで見させてもらえませんか?」
この人、めちゃくちゃ面倒見がいい……!
ていうか本当にすごい技術だ……剣士っていうのはこんな魔力の使い方をしているから前線で活躍できるんだ。
剣士に対する見方が変わっていくのが分かる。
これは発見だ。
僕はわざとらしくシルビアの教育に習った。
ちょっと気が引けるけど……これも勝負だし……
うん。
隙を見つけたら叩こう。
最低だと罵られたとしてもこれは勝負だ。
仕方あるまい。
「ああ、いいぜ! 見てみろよ!」
僕は無邪気なフリをしてシルビアに近づいた。
勿論、木刀にはしっかりと魔力を込めてっと。
いやはや教え方が上手なおかげで早くも習得してしまった。
この技術が使えるかどうかで今後の戦闘での立ち振る舞いが大きく変わってくるだろう。
木刀に魔力を込めることができるのなら、例えばその辺の石ころなんかにも応用できそうだ。
魔力を込めた石ころを敵に投げつければ、それだけで相手に遠距離攻撃を与える事も容易だ。
どうなんでしょうか。
これ、皆さんもご存じなの?
しかし、考えれば考えるほどに申し訳ない気持ちが湧いてくるなー。
色々教えてくれたし、見た目は恐そうで口調こそあらいけれど、想像してたよりもずっといい人そうなんだよなー。
あ、確かこの人って貴族出身で跡継ぎ争いに破れたらしいけど、もしかしたら、この人の良さをつけ込まれたんじゃないのか?
その可能性は十分あるよな?
うわ……きっとそうだよ……ますますやりにくくなっちゃったよ……
……でも、でもだ。
それとこれとは別の問題だ。
そもそも結局は本人の油断が招いたものなんだよな?
だとしたらだ。
冒険者だっていうのを鑑みてもそうだ。
こういう油断しがち体質も、今のうちに改めてやらないと将来的に命に関わるってことも十分に有り得る。
僕は、こんな惜しい人材をラスラ領から失いたくはないのだ!
ならば。
今ここで、僕が心を鬼にして教えてあげないといけない!
君の為ならば、僕は悪にでもなる!
そうだ、これは人助けなんだ。
これも全てはシルビア・トレモンドその人の為ではないか。
___大義名分がみつかった。
そのタイミングでフィーナの一言。
『ペリドット。やっちゃおっ!』
あ、やっちゃう?
「___ヘェーすごいや! こんな感じになるんですねー。ホント勉強になりますー!」
関心しているのは本当だが、わざとらしく演技をする僕に満足気なシルビア・トレモンド。
「えーっと魔力の盾の要領がよく分からないなー。なにかコツでもあるんでしょうか?」
「コツか? ああそうだな……お前は少し慎重になりすぎてるんじゃねえか?」
「というと、もっと多めに魔力を込めればいいのですか?」
むぐぐ。
正直言ってこれは少しコツがいる。
盾の性質を考えると強度も必要だし、大きさも重要だ。
いやまあそんなのは今日は置いておこう。
僕は魔力の盾にシルビアの注意を逸らすとゆっくりと背後に回り込んだ___
「しょうがねえなー。ま、何でも聞いてくれよ!」
ニヒルな良い笑顔。
心が痛くなる。
僕は、そんなシルビアの死角から木刀を大きく振りかぶった___
「シルビアさんっ! ごめんなさいッッ!!」
やや強め。
怪我をしない程度に、強めの一撃をお見舞い申し上げた!
バキッっっ!
魔力がこもっていたのだ、痛くないわけがない。
僕の一閃は後頭部にクリーンヒットした。
そのまま白目を剥いて倒れたシルビアに、主審が呆れた様子で近づいた。
試合続行不可能とみなされたシルビアは、第一試合を敗北。
僕は白星を勝ち取り、合格が確定した。
なんとも実りある戦闘だった。
失ったものは…………あったのだが。
その後シルビアは回復薬で直ぐに意識を取り戻し、しばらくの間落ち込んでいたが、二回戦を余裕で勝ち取り晴れて合格となった。
たまたま急用が入り本部に出向いていたリディアに、僕の卑怯な戦法は見られていなかった。
「ごめん! 応援できなかった! 大丈夫だった?」
戻ってきたリディアからの質問に、僕は目を逸らしながら
「大丈夫だった」
と笑顔で答えた。
あんな試合見せられたものじゃない……
幸いにも、あの瞬間のことはすっかり忘却の彼方といった感じのシルビアとは、入団同期としていい関係を築くこととなる。
けれど、それをわざわざ教えてあげる必要もないだろう。
これは勝負だ。駆け引きだ。戦争だ。
しかしながら折角だ。
ご教示してもらえるのならいい機会。
シルビアから言われた通りにやってみようじゃないか。
少しずつ魔力を浸透させてけばいいって言ってたか……少しずつ…………少しずつ……あっ! なんだか剣先が熱くなってくるような感覚があるぞ!
「シルビアさん! こうですか?」
「お前できるじゃねぇか! それで殴れば通常とは比べ物にならないくらいの重い攻撃ができるぜ。足に集めれば移動の速度を上げることもできる。……じゃあこれはどうだ? 木刀に浸透させた魔力を少しずつ広げていくと…………どうだ? 盾のように使うことだってできんだ」
「す、すごいです! だからあんなスピードで移動できたんですね! その盾、近くで見させてもらえませんか?」
この人、めちゃくちゃ面倒見がいい……!
ていうか本当にすごい技術だ……剣士っていうのはこんな魔力の使い方をしているから前線で活躍できるんだ。
剣士に対する見方が変わっていくのが分かる。
これは発見だ。
僕はわざとらしくシルビアの教育に習った。
ちょっと気が引けるけど……これも勝負だし……
うん。
隙を見つけたら叩こう。
最低だと罵られたとしてもこれは勝負だ。
仕方あるまい。
「ああ、いいぜ! 見てみろよ!」
僕は無邪気なフリをしてシルビアに近づいた。
勿論、木刀にはしっかりと魔力を込めてっと。
いやはや教え方が上手なおかげで早くも習得してしまった。
この技術が使えるかどうかで今後の戦闘での立ち振る舞いが大きく変わってくるだろう。
木刀に魔力を込めることができるのなら、例えばその辺の石ころなんかにも応用できそうだ。
魔力を込めた石ころを敵に投げつければ、それだけで相手に遠距離攻撃を与える事も容易だ。
どうなんでしょうか。
これ、皆さんもご存じなの?
しかし、考えれば考えるほどに申し訳ない気持ちが湧いてくるなー。
色々教えてくれたし、見た目は恐そうで口調こそあらいけれど、想像してたよりもずっといい人そうなんだよなー。
あ、確かこの人って貴族出身で跡継ぎ争いに破れたらしいけど、もしかしたら、この人の良さをつけ込まれたんじゃないのか?
その可能性は十分あるよな?
うわ……きっとそうだよ……ますますやりにくくなっちゃったよ……
……でも、でもだ。
それとこれとは別の問題だ。
そもそも結局は本人の油断が招いたものなんだよな?
だとしたらだ。
冒険者だっていうのを鑑みてもそうだ。
こういう油断しがち体質も、今のうちに改めてやらないと将来的に命に関わるってことも十分に有り得る。
僕は、こんな惜しい人材をラスラ領から失いたくはないのだ!
ならば。
今ここで、僕が心を鬼にして教えてあげないといけない!
君の為ならば、僕は悪にでもなる!
そうだ、これは人助けなんだ。
これも全てはシルビア・トレモンドその人の為ではないか。
___大義名分がみつかった。
そのタイミングでフィーナの一言。
『ペリドット。やっちゃおっ!』
あ、やっちゃう?
「___ヘェーすごいや! こんな感じになるんですねー。ホント勉強になりますー!」
関心しているのは本当だが、わざとらしく演技をする僕に満足気なシルビア・トレモンド。
「えーっと魔力の盾の要領がよく分からないなー。なにかコツでもあるんでしょうか?」
「コツか? ああそうだな……お前は少し慎重になりすぎてるんじゃねえか?」
「というと、もっと多めに魔力を込めればいいのですか?」
むぐぐ。
正直言ってこれは少しコツがいる。
盾の性質を考えると強度も必要だし、大きさも重要だ。
いやまあそんなのは今日は置いておこう。
僕は魔力の盾にシルビアの注意を逸らすとゆっくりと背後に回り込んだ___
「しょうがねえなー。ま、何でも聞いてくれよ!」
ニヒルな良い笑顔。
心が痛くなる。
僕は、そんなシルビアの死角から木刀を大きく振りかぶった___
「シルビアさんっ! ごめんなさいッッ!!」
やや強め。
怪我をしない程度に、強めの一撃をお見舞い申し上げた!
バキッっっ!
魔力がこもっていたのだ、痛くないわけがない。
僕の一閃は後頭部にクリーンヒットした。
そのまま白目を剥いて倒れたシルビアに、主審が呆れた様子で近づいた。
試合続行不可能とみなされたシルビアは、第一試合を敗北。
僕は白星を勝ち取り、合格が確定した。
なんとも実りある戦闘だった。
失ったものは…………あったのだが。
その後シルビアは回復薬で直ぐに意識を取り戻し、しばらくの間落ち込んでいたが、二回戦を余裕で勝ち取り晴れて合格となった。
たまたま急用が入り本部に出向いていたリディアに、僕の卑怯な戦法は見られていなかった。
「ごめん! 応援できなかった! 大丈夫だった?」
戻ってきたリディアからの質問に、僕は目を逸らしながら
「大丈夫だった」
と笑顔で答えた。
あんな試合見せられたものじゃない……
幸いにも、あの瞬間のことはすっかり忘却の彼方といった感じのシルビアとは、入団同期としていい関係を築くこととなる。
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