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第1章 ラスラ領 アミット編
44 特殊部隊アルファ
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感謝祭から一週間が経った。
アミットの人々はお祭り気分を引きずりながらも、いつもの生活を取り戻していった。
あの日以降、ガーネットお嬢様はうちに住むようになった。
父さんや母さんも温かく迎え入れてくれたことに安心している。
特にサラとは大の仲良しになり、何だか初めから姉妹だったみたいに思えてしまう。
妹が二人になった。
とても喜ばしいことだが、僕にとっては危険な響きでもある……
い、いや、何もしないよ?
ガーネットお嬢様が領主様の娘だということを知るのは、僕と父さんだけだった。
他に預けるところはいくらでもあっただろうに、何も言わずにうちに置いてくれたことには正直言って驚いた。
前にも言ったように、ここ数年の間、父さんと僕の関係は何だかギクシャクしている。
そんな関係がもはや普通になってしまっているのも問題ではあるのだが、父さんと向き合うときに感じていた大らかさとか、力強さのようなものが感じられなくなってしまったのが、大きな理由なのかもしれない。
要するに、僕が勝手に距離を置いているだけなのだ。
僕も大人になった。
そろそろ父さんと向き合っていかなければならない。
ガーネットが話していたように、最近のミリシオン家はどうも不穏だ。
そういった噂話は団員の中でもよく耳にするようになった。
そこで、ラスラ騎士団の特殊部隊である『アルファ』の調査が入った。
それによると、アミットの北のはずれに建つミリシオン家のお屋敷には、毎夜、不審な女が出入りしているのだという。
不審な女……
それを聞いて不穏に思わない者はいないだろう。
今やアミット中で噂になっているある女を連想させるのだ。
その女が出入りするのは決まって深夜。
それもたった一人で夜道を歩いて訪れるのだ。
明かりすら灯さずに。
いかにもきな臭い。
そして何よりも怪しいのが女の特徴だ。
フードの付いたマントを被っている分、顔つきの全体像をとらえることはできないのだが、闇夜に金色の目が光ったという。
まるで夜行性の魔獣の様に鋭く。
そして風に乗って血なまぐささが香ったのだという。
まさしくその特徴は、巷で話題の吸血鬼のそれだった。
僕が遭遇したあの吸血鬼なのかもしれない。
いやそうに違いない。
あの得体のしれない女。
グールを従えて僕を襲ったあの女である。
あれ? そういえば、どうしてあの夜、吸血鬼は僕を見逃したのだろう。
それに、なぜ、直接僕に手を下さなかったのだろう?
グールの力を試したのか?
もしかして僕の力を?
試しに来たのか?
いやいや考えすぎだろうか。
所詮は魔獣の考える事。
人間の僕たちには到底理解などできない。
特殊部隊『アルファ』は10人の精鋭で構成されていた。
少数精鋭を絵に描いたような部隊で、戦闘力、知能、調査能力、全てにおいて訓練され尽くされたラスラ騎士団の主戦力集団だ。
『アルファ』は隠密に行動し、吸血鬼の正体を暴こうと奮闘したのだが……その帰り道、一人の団員が殺されてしまう。
ルイーズさんというベテランの剣士は、部隊の最後尾を歩いていた時に急遽姿を消したという。
アルファの団員は捜索したが、朝方見つかったのは変わり果てたルイーズさんの姿だった。
その胸にはメッセージが刻まれていた。
”次は皆殺し”
奴にはそれがいつでもできたのだ。
観察しているつもりのアルファは、吸血鬼の手の上で踊らされていただけだったのかもしれない。
アルファの隊長はルイーズさんの亡骸を持ち帰ったが、傷だらけの惨さからか、家族に会わせることを躊躇ったという。
死は唐突にやってくるものだ。
この世界から魔王がいなくなって長い。
どこか平和ボケをしていたのかもしれない。
団員たちは、ルイーズさんの死を教訓にすることで、吸血鬼に立ち向かうことを誓い合った。
ラスラ騎士団が精強だと言われる所以は作戦行動の速さにある。
情報を持ち帰った参謀たちのもと、すぐに討伐隊が編成された。
潜入は明日の夜、隠密に行動し、敵の虚を衝く。
討伐隊を指揮するのはラスラ騎士団の副団長エイルさん。
メンバーには、槍使いのゼパイルさん、リディア、セブさん、そして僕が選出された。
ゼパイルさんとリディアは戦力を期待されて、僕は一度だけ吸血鬼と遭遇した経験があることから選ばれた。
僕が戦力になるとは到底思えなかったのだが、僕の役割はどうやら『おとり』らしい。
僕のように魔力を保有している団員は少ない。
知っている限りには、僕とシルビアさんだけだ。
一度襲われた経験があるということは、もう一度襲われる可能性があるということ。
断ることもできたのだけれど……そうなれば、次の『おとり』はシルビアさんで間違いないだろう。
そんなことは出来ない。
寧ろ、僕よりも明らかに強いシルビアさんの方がうまくやってくれそうな気はしたけれど……違うのだ。
違う。
この一連の吸血鬼の事件に関しては、なぜだか僕自身に当事者性が有るような気がしてならないのだ。
根拠は勿論無いのだけれど、僕自身が関わることによって、何かのトリガーになるような気がするのだ。
どうしてそう思ったのかはいくら考えても分からないのだが……
それに、僕は前回の経験から、グールとの戦闘でのイメージトレーニングが少なくともできていた。
武器を保持してさえいれば、次はいける!
……という自信こそ無いにしても、前回のように逃げ帰ることは無いのではないだろうか。
ただし、それはグールに対してはということは強調しなければならないが。
セブさんはというと、熱烈に希望したかららしいのだが、選出された理由はそれだけではないみたいだ。
セブさんに聞いても、詳しいことは教えてくれなかった。
決戦は明日。
全員から、否応なしに緊張が滲んでいた。
アミットの人々はお祭り気分を引きずりながらも、いつもの生活を取り戻していった。
あの日以降、ガーネットお嬢様はうちに住むようになった。
父さんや母さんも温かく迎え入れてくれたことに安心している。
特にサラとは大の仲良しになり、何だか初めから姉妹だったみたいに思えてしまう。
妹が二人になった。
とても喜ばしいことだが、僕にとっては危険な響きでもある……
い、いや、何もしないよ?
ガーネットお嬢様が領主様の娘だということを知るのは、僕と父さんだけだった。
他に預けるところはいくらでもあっただろうに、何も言わずにうちに置いてくれたことには正直言って驚いた。
前にも言ったように、ここ数年の間、父さんと僕の関係は何だかギクシャクしている。
そんな関係がもはや普通になってしまっているのも問題ではあるのだが、父さんと向き合うときに感じていた大らかさとか、力強さのようなものが感じられなくなってしまったのが、大きな理由なのかもしれない。
要するに、僕が勝手に距離を置いているだけなのだ。
僕も大人になった。
そろそろ父さんと向き合っていかなければならない。
ガーネットが話していたように、最近のミリシオン家はどうも不穏だ。
そういった噂話は団員の中でもよく耳にするようになった。
そこで、ラスラ騎士団の特殊部隊である『アルファ』の調査が入った。
それによると、アミットの北のはずれに建つミリシオン家のお屋敷には、毎夜、不審な女が出入りしているのだという。
不審な女……
それを聞いて不穏に思わない者はいないだろう。
今やアミット中で噂になっているある女を連想させるのだ。
その女が出入りするのは決まって深夜。
それもたった一人で夜道を歩いて訪れるのだ。
明かりすら灯さずに。
いかにもきな臭い。
そして何よりも怪しいのが女の特徴だ。
フードの付いたマントを被っている分、顔つきの全体像をとらえることはできないのだが、闇夜に金色の目が光ったという。
まるで夜行性の魔獣の様に鋭く。
そして風に乗って血なまぐささが香ったのだという。
まさしくその特徴は、巷で話題の吸血鬼のそれだった。
僕が遭遇したあの吸血鬼なのかもしれない。
いやそうに違いない。
あの得体のしれない女。
グールを従えて僕を襲ったあの女である。
あれ? そういえば、どうしてあの夜、吸血鬼は僕を見逃したのだろう。
それに、なぜ、直接僕に手を下さなかったのだろう?
グールの力を試したのか?
もしかして僕の力を?
試しに来たのか?
いやいや考えすぎだろうか。
所詮は魔獣の考える事。
人間の僕たちには到底理解などできない。
特殊部隊『アルファ』は10人の精鋭で構成されていた。
少数精鋭を絵に描いたような部隊で、戦闘力、知能、調査能力、全てにおいて訓練され尽くされたラスラ騎士団の主戦力集団だ。
『アルファ』は隠密に行動し、吸血鬼の正体を暴こうと奮闘したのだが……その帰り道、一人の団員が殺されてしまう。
ルイーズさんというベテランの剣士は、部隊の最後尾を歩いていた時に急遽姿を消したという。
アルファの団員は捜索したが、朝方見つかったのは変わり果てたルイーズさんの姿だった。
その胸にはメッセージが刻まれていた。
”次は皆殺し”
奴にはそれがいつでもできたのだ。
観察しているつもりのアルファは、吸血鬼の手の上で踊らされていただけだったのかもしれない。
アルファの隊長はルイーズさんの亡骸を持ち帰ったが、傷だらけの惨さからか、家族に会わせることを躊躇ったという。
死は唐突にやってくるものだ。
この世界から魔王がいなくなって長い。
どこか平和ボケをしていたのかもしれない。
団員たちは、ルイーズさんの死を教訓にすることで、吸血鬼に立ち向かうことを誓い合った。
ラスラ騎士団が精強だと言われる所以は作戦行動の速さにある。
情報を持ち帰った参謀たちのもと、すぐに討伐隊が編成された。
潜入は明日の夜、隠密に行動し、敵の虚を衝く。
討伐隊を指揮するのはラスラ騎士団の副団長エイルさん。
メンバーには、槍使いのゼパイルさん、リディア、セブさん、そして僕が選出された。
ゼパイルさんとリディアは戦力を期待されて、僕は一度だけ吸血鬼と遭遇した経験があることから選ばれた。
僕が戦力になるとは到底思えなかったのだが、僕の役割はどうやら『おとり』らしい。
僕のように魔力を保有している団員は少ない。
知っている限りには、僕とシルビアさんだけだ。
一度襲われた経験があるということは、もう一度襲われる可能性があるということ。
断ることもできたのだけれど……そうなれば、次の『おとり』はシルビアさんで間違いないだろう。
そんなことは出来ない。
寧ろ、僕よりも明らかに強いシルビアさんの方がうまくやってくれそうな気はしたけれど……違うのだ。
違う。
この一連の吸血鬼の事件に関しては、なぜだか僕自身に当事者性が有るような気がしてならないのだ。
根拠は勿論無いのだけれど、僕自身が関わることによって、何かのトリガーになるような気がするのだ。
どうしてそう思ったのかはいくら考えても分からないのだが……
それに、僕は前回の経験から、グールとの戦闘でのイメージトレーニングが少なくともできていた。
武器を保持してさえいれば、次はいける!
……という自信こそ無いにしても、前回のように逃げ帰ることは無いのではないだろうか。
ただし、それはグールに対してはということは強調しなければならないが。
セブさんはというと、熱烈に希望したかららしいのだが、選出された理由はそれだけではないみたいだ。
セブさんに聞いても、詳しいことは教えてくれなかった。
決戦は明日。
全員から、否応なしに緊張が滲んでいた。
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