その声が聞きたい

午後野つばな

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 ……さっきから、そうすけの気持ちが悲しい。
 店から出たそうすけは、ずっと無言だった。早足で前をゆくそうすけの後を、さとりは一生懸命追いかけた。
 そうすけ……?
 さとりは悲しかった。そうすけが、さとりに話しかけてくれないからじゃない。ちらともさとりのほうを見ないそうすけの背中は、何かに苛立っているようだった。トゲトゲしたそうすけの気持ちが切なくて、さとりの胸の中は悲しい滴でいっぱいになる。
 どうしたらげんきを出してくれる……?
 そのとき、さとりは反対側からくるひとの腕にぶつかった。
「ああ……っ!」
 勢いよく突き飛ばされたさとりは、その場に転がった。
「さと!」
 少し先を歩いていたそうすけが気づいて、慌てて戻ってくる。
「大丈夫か、さと」
『ケガはないか?』
 心配そうに顔をのぞき込み、転んださとりを抱き起こしてくれるそうすけは、もう普段通りのそうすけだった。さとりはほっとした。
「うん。おいらはへいきだ。そうすけは大丈夫か? もう、胸のあたりがチクチクしてないか?」
 さとりが訊ねると、そうすけはなぜかハッと胸を突かれたような顔をした。
「……ああ。もうチクチクしないよ」
「よかった」
 さとりはにっこりと笑った。
 転んだときに、さとりの頭から落ちてしまった茶色いものを、そうすけが拾ってくれた。
「う?」
 頭に手をのせて、不思議そうに首をかしげるさとりを見て、そうすけがほほ笑む。
「麦わら帽子だよ」
「……むぎわらぼうし?」
「そう。日差しから、頭を守るんだよ」
 さとりは、おお! と目を見開いた。すごい、世の中にはそんな便利なものがあるなんて。
「そうすけも被るか? むぎわらぼうし」
 さとりが訊ねると、そうすけは「俺はいいよ」と笑った。
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