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ずっとそうすけに会いたかった。そうすけと会えなくなって、ほかの妖怪たちには人間なんかを信じるからだと笑われたけれど、そんなことどうでもよかった。ただただ会いたくて、あのときの少年がもう一度会いにきてくれるってずっと信じていた。信じて、待ち続けた。
「おいら、おいら……、そうすけにどうしてももう一度会いたかった。そうすけの声が聞きたかった。それまで、誰もおいらなんか見てくれなかったから、話をしてくれたのはそうすけが初めてだったから、ありがとうってずっと言いたかった」
ーーこれが最後だ……。
悲しみが胸を刺し、それ以上に言葉にできない深い愛情が、さとりを満たした。
おいらはそうすけに会えて幸せだ。
さとりは微笑んだ。自分にはもう充分すぎるくらいだと思った。
会いたかったそうすけに会えた。もう一度会うことができたら、ずっと伝えたいと思っていたこともすべて言えた。でも、なぜ胸が痛むのだろう。ほかに何を望む?
「さと……」
『ああ、違う、さとじゃない。さとりなのか……』
わずかに眩しそうに目を細めたそうすけの手が、無意識にさとりのほうに伸ばされる。
触れたい、というそうすけの思いが伝わってきて、さとりは首をかしげる。さとりの正体がわかったら、そうすけが自分のことを受け入れてくれるなんて考えてもみなかったから。願うことすら分不相応な望みだと思っていたから。
『ああ、確かにさとはあのときの青年だ。さとりだ……』
そのとき、ふたりの頭をよぎったのは、まだ小学生だったそうすけと、いまとほとんど姿が変わっていないさとりの姿だった。懐かしい故郷の景色がさとりの目に映る。
『あのころ、遊んだ後、別れるときはいつも後ろ髪を引かれるような気持ちになった。笑った顔がいつもどこか寂しそうで、放っておけなかった。側にいてあげたいと思った。祖母の家にいかなくなって、なぜかいつも心のどこかに忘れ物をしたような気持ちがした。あのときはどうしてそう思うのかわからなかったけど……』
さとりだ、という喜びがそうすけの胸に満ちる。そのときさとりは、そうすけの心の目を通して、彼の目に映る自分の姿を見た気がした。
少しだけ不安そうに、戸惑った表情を浮かべて一途にそうすけを見つめる自分は、そうすけの愛おしい、触れたいという気持ちのフィルターを身にまとって、なんだか自分じゃないみたいに見える。
ふいに、そうすけが苦痛を堪えるかのように顔を歪めた。
「悪い、ちょっとだけ待ってくれ」
『俺はいま何をしようとした……?』
ためらうように戻されるそうすけの手を、さとりは焦がれる思いで目で追った。
愕然とした表情がそうすけの顔に浮かぶ。そのとき、そうすけの瞳を横切った感情はなんだろうか。驚き? 痛み? 深い後悔? それから……?
すべてが入り交じった複雑な感情の波がそうすけを襲い、打ちのめす。
『あれからずっと俺を待っていたのか。あの場所で何年もたったひとりで……。約束を破った俺を……』
そこにあるのは、約束を破ってしまった自分を責める後悔の念だった。深い苦しみがそうすけを襲う。
さとりはぷるぷると頭を振った。
違う、そうすけを責めたいのではなかった。そんなこと、これっぽっちだって望んではいない。
「そうすけ、違う。おいらは、おいらは……」
けれど、自分の気持ちを伝えることに慣れていないさとりは、うまく言葉を見つけることができない。必死な思いですがりつくさとりを、そうすけがそっと引き剥がした。
「……悪い。いきなりすぎて、まだ頭が追いついていないんだ。少しだけ考えさせてくれないか?」
ひとりになりたい、というそうすけの思いが伝わってきて、さとりはこくりとうなずいた。そうすけはさとりの横を通り過ぎると、そのまま寝室へと向かった。
『まさかさとが妖怪だったなんて……。いや、違う、さとじゃない。さとりだ。俺のことをずっと待っていたというのか? たったひとりで……。……あいつは、あの感じの悪い男はさとりの仲間なのか? 俺よりもさとりのことがわかっているようだった。……ひょっとしていまもこの考えが伝わっているのか?』
寝室からは、そうすけの苦悩と混乱が伝わってくる。
さとりは、そうすけが苦しんでいるのがつらかった。そう思わせているのは自分なのだ。そのことが何よりさとりの胸を苦しめた。そんな思いをさせたくて、そうすけに会いにきたわけじゃない。
聞いてはいけない、きっとそうすけは自分に考えていることを聞かれたいとは思っていない。そう思って耳を塞いでも、否応なしにそうすけの思いがさとりに伝わってきてしまう。
こんな能力などなければよかったのに。
さとりは生まれて初めて望まない自分の能力を憎んだ。
ーーおいらはここにいてはいけない。
白いふわふわの妖怪がさとりの足元で、遊べとぴょんぴょん跳ねる。
さとりは白いふわふわの妖怪をそっと撫でると、音を立てないよう静かに部屋を出た。
「おいら、おいら……、そうすけにどうしてももう一度会いたかった。そうすけの声が聞きたかった。それまで、誰もおいらなんか見てくれなかったから、話をしてくれたのはそうすけが初めてだったから、ありがとうってずっと言いたかった」
ーーこれが最後だ……。
悲しみが胸を刺し、それ以上に言葉にできない深い愛情が、さとりを満たした。
おいらはそうすけに会えて幸せだ。
さとりは微笑んだ。自分にはもう充分すぎるくらいだと思った。
会いたかったそうすけに会えた。もう一度会うことができたら、ずっと伝えたいと思っていたこともすべて言えた。でも、なぜ胸が痛むのだろう。ほかに何を望む?
「さと……」
『ああ、違う、さとじゃない。さとりなのか……』
わずかに眩しそうに目を細めたそうすけの手が、無意識にさとりのほうに伸ばされる。
触れたい、というそうすけの思いが伝わってきて、さとりは首をかしげる。さとりの正体がわかったら、そうすけが自分のことを受け入れてくれるなんて考えてもみなかったから。願うことすら分不相応な望みだと思っていたから。
『ああ、確かにさとはあのときの青年だ。さとりだ……』
そのとき、ふたりの頭をよぎったのは、まだ小学生だったそうすけと、いまとほとんど姿が変わっていないさとりの姿だった。懐かしい故郷の景色がさとりの目に映る。
『あのころ、遊んだ後、別れるときはいつも後ろ髪を引かれるような気持ちになった。笑った顔がいつもどこか寂しそうで、放っておけなかった。側にいてあげたいと思った。祖母の家にいかなくなって、なぜかいつも心のどこかに忘れ物をしたような気持ちがした。あのときはどうしてそう思うのかわからなかったけど……』
さとりだ、という喜びがそうすけの胸に満ちる。そのときさとりは、そうすけの心の目を通して、彼の目に映る自分の姿を見た気がした。
少しだけ不安そうに、戸惑った表情を浮かべて一途にそうすけを見つめる自分は、そうすけの愛おしい、触れたいという気持ちのフィルターを身にまとって、なんだか自分じゃないみたいに見える。
ふいに、そうすけが苦痛を堪えるかのように顔を歪めた。
「悪い、ちょっとだけ待ってくれ」
『俺はいま何をしようとした……?』
ためらうように戻されるそうすけの手を、さとりは焦がれる思いで目で追った。
愕然とした表情がそうすけの顔に浮かぶ。そのとき、そうすけの瞳を横切った感情はなんだろうか。驚き? 痛み? 深い後悔? それから……?
すべてが入り交じった複雑な感情の波がそうすけを襲い、打ちのめす。
『あれからずっと俺を待っていたのか。あの場所で何年もたったひとりで……。約束を破った俺を……』
そこにあるのは、約束を破ってしまった自分を責める後悔の念だった。深い苦しみがそうすけを襲う。
さとりはぷるぷると頭を振った。
違う、そうすけを責めたいのではなかった。そんなこと、これっぽっちだって望んではいない。
「そうすけ、違う。おいらは、おいらは……」
けれど、自分の気持ちを伝えることに慣れていないさとりは、うまく言葉を見つけることができない。必死な思いですがりつくさとりを、そうすけがそっと引き剥がした。
「……悪い。いきなりすぎて、まだ頭が追いついていないんだ。少しだけ考えさせてくれないか?」
ひとりになりたい、というそうすけの思いが伝わってきて、さとりはこくりとうなずいた。そうすけはさとりの横を通り過ぎると、そのまま寝室へと向かった。
『まさかさとが妖怪だったなんて……。いや、違う、さとじゃない。さとりだ。俺のことをずっと待っていたというのか? たったひとりで……。……あいつは、あの感じの悪い男はさとりの仲間なのか? 俺よりもさとりのことがわかっているようだった。……ひょっとしていまもこの考えが伝わっているのか?』
寝室からは、そうすけの苦悩と混乱が伝わってくる。
さとりは、そうすけが苦しんでいるのがつらかった。そう思わせているのは自分なのだ。そのことが何よりさとりの胸を苦しめた。そんな思いをさせたくて、そうすけに会いにきたわけじゃない。
聞いてはいけない、きっとそうすけは自分に考えていることを聞かれたいとは思っていない。そう思って耳を塞いでも、否応なしにそうすけの思いがさとりに伝わってきてしまう。
こんな能力などなければよかったのに。
さとりは生まれて初めて望まない自分の能力を憎んだ。
ーーおいらはここにいてはいけない。
白いふわふわの妖怪がさとりの足元で、遊べとぴょんぴょん跳ねる。
さとりは白いふわふわの妖怪をそっと撫でると、音を立てないよう静かに部屋を出た。
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