その声が聞きたい

午後野つばな

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 もはや隠すつもりのないそうすけの愛情が伝わるたびに、これまで感じたことのない痺れみたいなものがぞくぞくっとさとりの身体に走った。
「あっ!」
 さとりは目を見開いた。身体の一部に何か知らない変化が起きている。性の知識など何もないのに、本能的に恥ずかしいものだということはわかる。さとりはそうすけから隠すように、もじもじと両脚をすり合わせた。
『あ、たっちゃったのか』
 そうすけの声に、さとりはかあっと赤くなった。慌ててそうすけの腕の中から逃げようとするが、なぜだか脚に力が入らず、そのままカクンと膝から崩れ落ちそうになった。
『……あー、まっずいなあ』
 そのとき、そんなそうすけの心の声が聞こえてきて、さとりは泣きたくなった。
「ご、ごめん、そうすけおいら……っ」
「あー、違う違う、さとり。それでいいんだ。お前、いま誤解しただろ。違うよ、まずいなって言ったのは、こっちの問題」
 ほら、と腕をつかまれ、そうすけのそこに触れさせられる。手のひらにこれ以上ないくらい固くそそり立つものが触れて、さとりは思わず反射的に手を引こうとしてしまった。そうすけが苦笑する。
「さとりがこういうのに慣れてないのはわかってる。お前が俺のこと、好きだっていうのはわかるんだ。それはほんと疑いようもない。でも、それは俺がお前に抱いている気持ちと一緒かを考えると、正直自信がない」
「そうすけ?」
 どういう意味だろう……?
 そうすけの言っている意味がわからなくて、さとりは不安な気持ちになる。
 そうすけのことは大好きだ。何よりも大切で、かけがえのない。たとえば自分が何よりも大切にしているものーーそうすけからもらった石や、袋に入ったメモとそうすけのどちらかを選べといわれたら、さとりは間違いなくそうすけを選ぶ。もちろん、自分の命など比べようもない。
 でも、それだけじゃだめなの?
『……不安なんだ』
 不安……?
 さとりは首をかしげる。そうすけが悲しい気持ちでいると思ったら、さとり自身の胸も苦しくなって、どうしていいかわからなくなる。
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