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「そ、そうすけに口づけられたら、おいら、なんか身体がおかしくなって……」
さとりの言葉にそうすけが眉をひそめる。
「おかしいってどんなふうに?」
『妖怪にキスしたらまずかったか? たとえばさとりの身体に何かよくないことが起こるとか……? いや、でもそんなの誰に訊きゃあいいんだ……?』
「腰のあたりがぞくぞくって鳥肌が立ったみたいになって、なんだか胸の奥がきゅうっと切なくなって、あそこが……、おいらのあそこが……」
そこで初めてそうすけは、んん? と怪訝な顔をした。
「急にさっきなったみたいになって、も、漏らしちゃって……!」
勇気を振り絞り、さとりは一気に言い放った。
「あー、や、あの、さとりな……」
そうすけが珍しくもごもごと口ごもったと思ったら、急にその顔がかあっと赤くなった。
「ちょ、ちょっとだけタンマ……」
手をさとりの前に出し、反対側の手で自分の顔を覆い隠すように塞ぐ。けれどその隙間からのぞく頬が、耳たぶまでが真っ赤に染まっている。そうすけはいきなりソファの上にあったクッションをむんずとつかみ、さとりの見ている前で自分の顔をクッションに押し当てた。
『うおー! 何だこのかわいい生き物はー! まじかー!』
今にも転がり出しそうな勢いで、いきなりそうすけが心の中で叫んだので、さとりは心底びっくりした。
……そ、そうすけ?
ぽかんと口を開ける。
そうすけはさとりの視線に気がつくと、照れくささをごまかすように、こほんと咳をした。それから、うれしそうにふわっと笑った。
さとりはドキッとした。鼓動がさっきよりも速くなった気がする。
「さっき、俺がお前にキスしたのは嫌だったか?」
さとりは頭を振った。
「じゃあな、その後にしたほうのやつは? 気持ち悪くなかったか?」
少しだけ赤くなって、さとりはこれも否定する。気持ち悪くなかったどころか、正直気持ちよかった。
そうすけはよし、と呟くと、横からさとりの脚をすくい上げるように抱き上げ、慌ててぎゅっとしがみつくさとりをベッドへと運んだ。
『もうごちゃごちゃと考えるのはやめだ』
「これから俺はさとりのことを抱く。それは、俺がお前のことを好きで、大切で、愛しいと思うからだ。お前のことを愛したい、気持ちよくさせてあげたい。でもさとりは俺に無理につき合うことはないんだ。少しでも嫌だと思ったり、気持ち悪かったり、違和感があったらすぐに言うんだぞ。そんなことぐらいじゃ嫌いにならないから」
そうすけがさとりの目を見て告げる。そうすけの言葉は、自分をよく見せようとしたり、嘘をついたり、自分の気持ちを取り繕うことなく、まっすぐにさとりの心に入ってくる。
胸が熱くなる。
そうすけに出会うまで、さとりは自分の存在を恥じてきた。誰からも愛されない、必要とされることなんてないのだと思っていた。
そうすけの言葉は、偽りなくさとりのことが好きだと伝えてくれる。みんなから嫌われ者の妖怪であるさとりでも、ここにいていいのだと、生きていてもいいのだと教えてくれる。そして、存在することの意味を。こんなこと、自分に起こるなんて想像もしていなかったーー。
「さとり? さと……」
声もなく泣くさとりを、そうすけが困惑のこもった表情で見つめる。
「……嫌で泣いてるわけじゃないよな?」
不安そうに訊ねられて、さとりはぽろぽろと涙をこぼしながら、それでもにっこりと笑った。視界が滲んでそうすけの顔がぼやけてしまうのが嫌で、ごしごしと目をこする。それから、まっすぐにそうすけの顔を見て答えた。
「おいらもそうすけが好き。大好き」
あ、キスされる、とさとりは思った。ふっと顔の前に陰が落ちる。さとりは自然と目を閉じた。
そうすけの舌がさとりの口腔に滑り込み、歯列を辿り、そしてさっき感じてしまったところをくすぐると、絡みつくようにしてさとりの舌を吸い上げた。飲み込めなかった唾液が口の端からこぼれ落ち、くちゅくちゅと濡れた音を発した。
『さとり、感じてる。かわいい、かわいい……』
そうすけから絶えず聞こえてくる言葉が、恥ずかしくてたまらないのに、頭の芯がぼうっとなったみたいに、うまく考えることができない。
そうすけが顔を離すと、ふたりの間を唾液の糸が引いて、さとりはかあっと赤くなった。
『目の縁が赤くなってる。ふふっ、色っぽい。せっかくきれいな目をしているのに、どうしていつも隠しているのかな』
「あっ」
そのとき、洋服の裾から入り込んだそうすけの指が、さとりの胸の頂をきゅっと摘んだ。そんなところをいじっても何も出てこないのに、そうすけの指がさとりの胸を刺激するたびに、さとりはまた腰のあたりにあの痺れを感じた。
『チクビが固くなってる。コリコリッとして、何かの実みたいだ。きれいなピンク色。犯罪だろ、これ』
さとりはかあっと赤くなった。全身を羞恥に真っ赤に染め、両腕を顔の前でバッテンにして隠そうとする。
「さとり?」
『どうした? 嫌だった?』
「い、嫌じゃない。嫌じゃないんだけど、それ、恥ずかしいからやめて……」
「それって?」
そうすけが上体を起こし、顔を隠しているさとりの腕をどける。
「そ、その全部口に出すの……っ」
『口にって……頭の中ってことか?』
そうすけがさとりの前髪をかき上げる。それから、普段は隠している顔が露わになったことに、動揺しつつも真っ赤な顔で精一杯睨んでいるさとりの唇に、チュッとキスをした。
「……っ!」
さとりの言葉にそうすけが眉をひそめる。
「おかしいってどんなふうに?」
『妖怪にキスしたらまずかったか? たとえばさとりの身体に何かよくないことが起こるとか……? いや、でもそんなの誰に訊きゃあいいんだ……?』
「腰のあたりがぞくぞくって鳥肌が立ったみたいになって、なんだか胸の奥がきゅうっと切なくなって、あそこが……、おいらのあそこが……」
そこで初めてそうすけは、んん? と怪訝な顔をした。
「急にさっきなったみたいになって、も、漏らしちゃって……!」
勇気を振り絞り、さとりは一気に言い放った。
「あー、や、あの、さとりな……」
そうすけが珍しくもごもごと口ごもったと思ったら、急にその顔がかあっと赤くなった。
「ちょ、ちょっとだけタンマ……」
手をさとりの前に出し、反対側の手で自分の顔を覆い隠すように塞ぐ。けれどその隙間からのぞく頬が、耳たぶまでが真っ赤に染まっている。そうすけはいきなりソファの上にあったクッションをむんずとつかみ、さとりの見ている前で自分の顔をクッションに押し当てた。
『うおー! 何だこのかわいい生き物はー! まじかー!』
今にも転がり出しそうな勢いで、いきなりそうすけが心の中で叫んだので、さとりは心底びっくりした。
……そ、そうすけ?
ぽかんと口を開ける。
そうすけはさとりの視線に気がつくと、照れくささをごまかすように、こほんと咳をした。それから、うれしそうにふわっと笑った。
さとりはドキッとした。鼓動がさっきよりも速くなった気がする。
「さっき、俺がお前にキスしたのは嫌だったか?」
さとりは頭を振った。
「じゃあな、その後にしたほうのやつは? 気持ち悪くなかったか?」
少しだけ赤くなって、さとりはこれも否定する。気持ち悪くなかったどころか、正直気持ちよかった。
そうすけはよし、と呟くと、横からさとりの脚をすくい上げるように抱き上げ、慌ててぎゅっとしがみつくさとりをベッドへと運んだ。
『もうごちゃごちゃと考えるのはやめだ』
「これから俺はさとりのことを抱く。それは、俺がお前のことを好きで、大切で、愛しいと思うからだ。お前のことを愛したい、気持ちよくさせてあげたい。でもさとりは俺に無理につき合うことはないんだ。少しでも嫌だと思ったり、気持ち悪かったり、違和感があったらすぐに言うんだぞ。そんなことぐらいじゃ嫌いにならないから」
そうすけがさとりの目を見て告げる。そうすけの言葉は、自分をよく見せようとしたり、嘘をついたり、自分の気持ちを取り繕うことなく、まっすぐにさとりの心に入ってくる。
胸が熱くなる。
そうすけに出会うまで、さとりは自分の存在を恥じてきた。誰からも愛されない、必要とされることなんてないのだと思っていた。
そうすけの言葉は、偽りなくさとりのことが好きだと伝えてくれる。みんなから嫌われ者の妖怪であるさとりでも、ここにいていいのだと、生きていてもいいのだと教えてくれる。そして、存在することの意味を。こんなこと、自分に起こるなんて想像もしていなかったーー。
「さとり? さと……」
声もなく泣くさとりを、そうすけが困惑のこもった表情で見つめる。
「……嫌で泣いてるわけじゃないよな?」
不安そうに訊ねられて、さとりはぽろぽろと涙をこぼしながら、それでもにっこりと笑った。視界が滲んでそうすけの顔がぼやけてしまうのが嫌で、ごしごしと目をこする。それから、まっすぐにそうすけの顔を見て答えた。
「おいらもそうすけが好き。大好き」
あ、キスされる、とさとりは思った。ふっと顔の前に陰が落ちる。さとりは自然と目を閉じた。
そうすけの舌がさとりの口腔に滑り込み、歯列を辿り、そしてさっき感じてしまったところをくすぐると、絡みつくようにしてさとりの舌を吸い上げた。飲み込めなかった唾液が口の端からこぼれ落ち、くちゅくちゅと濡れた音を発した。
『さとり、感じてる。かわいい、かわいい……』
そうすけから絶えず聞こえてくる言葉が、恥ずかしくてたまらないのに、頭の芯がぼうっとなったみたいに、うまく考えることができない。
そうすけが顔を離すと、ふたりの間を唾液の糸が引いて、さとりはかあっと赤くなった。
『目の縁が赤くなってる。ふふっ、色っぽい。せっかくきれいな目をしているのに、どうしていつも隠しているのかな』
「あっ」
そのとき、洋服の裾から入り込んだそうすけの指が、さとりの胸の頂をきゅっと摘んだ。そんなところをいじっても何も出てこないのに、そうすけの指がさとりの胸を刺激するたびに、さとりはまた腰のあたりにあの痺れを感じた。
『チクビが固くなってる。コリコリッとして、何かの実みたいだ。きれいなピンク色。犯罪だろ、これ』
さとりはかあっと赤くなった。全身を羞恥に真っ赤に染め、両腕を顔の前でバッテンにして隠そうとする。
「さとり?」
『どうした? 嫌だった?』
「い、嫌じゃない。嫌じゃないんだけど、それ、恥ずかしいからやめて……」
「それって?」
そうすけが上体を起こし、顔を隠しているさとりの腕をどける。
「そ、その全部口に出すの……っ」
『口にって……頭の中ってことか?』
そうすけがさとりの前髪をかき上げる。それから、普段は隠している顔が露わになったことに、動揺しつつも真っ赤な顔で精一杯睨んでいるさとりの唇に、チュッとキスをした。
「……っ!」
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