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「さとりの夏休み」
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夕食後、さとりとビーチに出た。コテージの明かりがロマンチックに灯る中、人気のないビーチをさとりと手を繋いで歩く。
「すごいな……」
星降る空の下、まるでこの世のものとは思えない美しい景色を前にして、壮介は言葉を失った。
「昔ね、おいらの棲んでいた村でもこんな星空が見えたよ。空を見上げると星がきらきら瞬いていて、すごくきれいで、一晩中飽きることなく眺めることができたよ」
いまでは人工物の明かりに紛れて、こんな景色を日本で見ることは難しいだろう。壮介の傍らで昔話を語るさとりの表情は穏やかで、にこにことうれしそうに見えた。
壮介と再会するまで、さとりはひとりで生きてきた。壮介からしてみたら、気の遠くなるような長い時間をたったひとりで。壮介はさとりとの約束を忘れていたのに、さとりはそんな壮介の元へ勇気を出して会いにきてくれたのだ。もう一度会えたら消えてしまうかもしれない覚悟を持って。
ふいに、突き刺すような胸の痛みに襲われた。
「ごめん、さとり……!」
『ごめん……!』
なぜ自分はさとりとの約束を忘れることができたのだろう。さとりをひとりにすることができたのか。
悔やんでも悔やみきれない思いに、壮介はさとりを抱きしめた。
「そうすけ?」
壮介の腕の中で、さとりはもぞもぞっと身動きした。他人の心を読んでしまうさとりは、当然いまの壮介の後悔も聞こえてしまっているのだろう。
「あのね、おいら大丈夫だよ?」
さとりの手が壮介の頭に触れる。その手が慰めるようにそっと、何度も優しく壮介の髪を撫でた。
「さとり?」
壮介が身体を離すと、さとりはにこにことうれしそうに笑っていた。
「おいらね、そうすけと会えてすごくうれしかった。村でおいらはいつもひとりだったけど、いつかまたそうすけに会えると思ったら、ちっとも寂しくなかったよ。それにね、おいらにはこれがあったから……」
さとりはごそごそとTシャツの襟元を探ると、いつも首から下げて身につけている紫水晶を取り出した。
「もしかしてそうすけに会えたのが夢かなって思ったら、そうすけがくれたこの石がそうじゃないよって教えてくれたの。この石をね、ぎゅっと握りしめると、胸の中がなんだかあたたかくなって、そうすけと会ったときのことを思い出すことができた。だからね、おいらはちっとも寂しくなんかなかったよ」
「そうか……」
くふふ、とさとりが幸せそうに笑う。壮介は胸にこみ上げるものをぐっと堪えると、さとりを腕に抱きしめた。そうすけ? と訊ねるさとりの目から目尻に滲むものを隠すように、壮介は柔らかなさとりの髪に額を押しつけた。
『さとり』
「……愛してるよ」
愛しているなんてセリフは、外国か映画の中だけの言葉だと思っていた。けれどその存在を腕に抱いて真摯に自分の気持ちに向かい合えば、ほかに相応しい言葉など見つからないのだった。
同情なんかじゃない。たださとりを想うと、壮介の中で溢れんばかりの愛情が湯水のように湧き出てくる。それを愛といわずになんと呼ぼう。
「おいらも、おいらもそうすけが好き! 大好き!」
さとりの手が壮介の背中に回され、ぎゅっとしがみつく。壮介はさとりの頬に手を添えると、そっと口づけた。
「すごいな……」
星降る空の下、まるでこの世のものとは思えない美しい景色を前にして、壮介は言葉を失った。
「昔ね、おいらの棲んでいた村でもこんな星空が見えたよ。空を見上げると星がきらきら瞬いていて、すごくきれいで、一晩中飽きることなく眺めることができたよ」
いまでは人工物の明かりに紛れて、こんな景色を日本で見ることは難しいだろう。壮介の傍らで昔話を語るさとりの表情は穏やかで、にこにことうれしそうに見えた。
壮介と再会するまで、さとりはひとりで生きてきた。壮介からしてみたら、気の遠くなるような長い時間をたったひとりで。壮介はさとりとの約束を忘れていたのに、さとりはそんな壮介の元へ勇気を出して会いにきてくれたのだ。もう一度会えたら消えてしまうかもしれない覚悟を持って。
ふいに、突き刺すような胸の痛みに襲われた。
「ごめん、さとり……!」
『ごめん……!』
なぜ自分はさとりとの約束を忘れることができたのだろう。さとりをひとりにすることができたのか。
悔やんでも悔やみきれない思いに、壮介はさとりを抱きしめた。
「そうすけ?」
壮介の腕の中で、さとりはもぞもぞっと身動きした。他人の心を読んでしまうさとりは、当然いまの壮介の後悔も聞こえてしまっているのだろう。
「あのね、おいら大丈夫だよ?」
さとりの手が壮介の頭に触れる。その手が慰めるようにそっと、何度も優しく壮介の髪を撫でた。
「さとり?」
壮介が身体を離すと、さとりはにこにことうれしそうに笑っていた。
「おいらね、そうすけと会えてすごくうれしかった。村でおいらはいつもひとりだったけど、いつかまたそうすけに会えると思ったら、ちっとも寂しくなかったよ。それにね、おいらにはこれがあったから……」
さとりはごそごそとTシャツの襟元を探ると、いつも首から下げて身につけている紫水晶を取り出した。
「もしかしてそうすけに会えたのが夢かなって思ったら、そうすけがくれたこの石がそうじゃないよって教えてくれたの。この石をね、ぎゅっと握りしめると、胸の中がなんだかあたたかくなって、そうすけと会ったときのことを思い出すことができた。だからね、おいらはちっとも寂しくなんかなかったよ」
「そうか……」
くふふ、とさとりが幸せそうに笑う。壮介は胸にこみ上げるものをぐっと堪えると、さとりを腕に抱きしめた。そうすけ? と訊ねるさとりの目から目尻に滲むものを隠すように、壮介は柔らかなさとりの髪に額を押しつけた。
『さとり』
「……愛してるよ」
愛しているなんてセリフは、外国か映画の中だけの言葉だと思っていた。けれどその存在を腕に抱いて真摯に自分の気持ちに向かい合えば、ほかに相応しい言葉など見つからないのだった。
同情なんかじゃない。たださとりを想うと、壮介の中で溢れんばかりの愛情が湯水のように湧き出てくる。それを愛といわずになんと呼ぼう。
「おいらも、おいらもそうすけが好き! 大好き!」
さとりの手が壮介の背中に回され、ぎゅっとしがみつく。壮介はさとりの頬に手を添えると、そっと口づけた。
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