私の居場所

AKO

文字の大きさ
11 / 58

011 遠い親戚より近くの他人

しおりを挟む
「遠い親戚より近くの他人」という言葉があるけれど、私はそういう傾向があるのかないのか、母の言葉が胸に刺さっていた。

確かに歴代の彼氏はいつも同じ学校にいたから、こんなにも会えないのは、心が寂しかった。

そんな時、職場の先輩から食事に誘われた。
偶然にもこうちゃんと同じ名前の人だった。
どこかでこうちゃんを重ねてしまったのかもしれない。

私に彼氏がいることは知っていて、「それでもいい、振り向いてくれるように努力する。」と言ってくれていた。つまり告白されたということだった。

数年前のこうちゃんと同様に、私のことをよく見ているから、クリスマスの件で落ち込んでいることも察知された。

「それ、本当に仕事だって思う?貴女がこんなにも楽しみにしてるのに、彼はその価値観をわかってくれてないの?」

私は弱かった。
この時、本当に心が弱かった。
いや、やはり近くにいる人を意識して、もう私もこの人を好きになっていたのだと思う。

ふと我に返った時、私は先輩と一線を越えてしまった後だった。

でももうこれは自分の責任。
こうちゃんと付き合い始めた時のことを思い出した。
あの時、一生負い目に感じることのないように、あんなに悩んでいた別の人とのことを、全て包み込んでくれたこうちゃん。
それなのに私はここで負い目を作ってしまった。
いや、こうちゃんのこと大好きだから、裏切った自分が許せなかった。

職場の先輩には、「もう彼氏とは別れるしかない」と相談し、もちろんそれは支えると言ってくれた。

そしてクリスマスイブの日。
お互いの職場は電車で1時間半もかかるのに、私の仕事終わりの時間に連絡が来た。

「最寄り駅に着いたよ。何時に終わる?」

な、なんてこと!!
これって、こうちゃんのサプライズだったの!?
え、え、え、、、

私は取り返しのつかないことをしてしまったと、オロオロしてしまっていた。

それを見ていた先輩が声をかけてくれた、

「どうした?もし具合悪いなら今夜の予定はキャンセルでもいいよ。」
「いや、あの、、、」
説明すると、こう言われた。

「もう心は決めてくれたんでしょ。言い出すきっかけを探していたんだよね。それ、今日なんじゃない?話しておいでよ。オレはいいから。」
「うん。。。でもその後、自分がどうなるかわからない。」
「近くで待ってるよ。何時まででも。送るよ、今日は。予定はキャンセルしよう。」

私は意を決して、駅のホームへと向かった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...