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023 15年後の再会
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さだおが交通事故で!
そんな連絡が来た時は焦った。
しばらくICUにいたらしいが無事だった。
奇跡的に後遺症もなく復活したとのことで、退院後にさだおの家に行くことになり、みーたんとこうちゃんは再会を果たした。
「連絡と調整ありがとう。やっぱりこうちゃんは頼りになるな。連絡も的確だよ。」
みーたんは、自責の念を持ちつつも、正直、またこうして会えたことが嬉しくて、つい好意的なことをまた言ってしまった。
そう、5年前も匂いのことでそんなことを言って、こうちゃんを返答に困らせてしまったのに。
「じゃあ、人生まるごと頼っとけって話だよ。」
こうちゃんから、まさかの切り返しにドキッとした。
「そ、そうだね。あはは。」
「あはは。」
周りにいた友人たちが笑ってくれたから、場が和んでよかった。
それもこうちゃんは計算済だったんだろうけど。
「みーたん、少し話さない?」
「いいよ。」
帰り道、スターバックスに2人で寄った。
「やっと2人になれた。」
こうちゃんから意外な言葉が出た。
「皆が帰るの待ってたの?」
「何言ってるのよ。何十年も待ってたって話だよ。」
「こうちゃん」
「みーたん」
被った。
「みーたん、ごめん。先に話させて。」
「うん、いつも私ファーストだから、いいよ。」
「どこまで聞いてるかわからないけど、バイアスかかってるかも知れないから、こうして直接話したかった。」
「うん、私も。情報はソースをあたらないとね。」
「たぶん、相当ひどいことをしたんだと思う。思うって言うのは無責任だけど、本当に記憶が無いの。大学時代の記憶はチラホラ戻ってきたけど、新入社員から2年目の冬くらいまではさっぱり。だからね、謝りたくても謝れない。覚えてないことを反省できないし、言葉だけで謝りたくない。」
「う、ぐ、ぐすん、ぐすんっ。。。」
「おいおい、泣くかよ、ここで。オレ、悪いやつみたいじゃん!」
「ううん、泣かずにはいられない。場所変えようよ。海とか見たい。」
テイクアウトして海へと向かった。
沈黙だった。
「私が言おうとしてたこと言うね。同じ話だから。」
「うん。」
「私、本当にどうかしてた。婚約者として、女として、人として、何もかも最低だった。だから謝るのは私の方なの。でも神様は私から懺悔する機会を奪った。こうちゃんから記憶を消し去ることで、私は謝れなくなった。謝って許してもらえることではないということだと理解した。」
「記憶のこと、知ってたの?」
「こうちゃんね、あの後、たくさんたくさん愛情のこもったラブレターを、たくさんたくさんくれたの。でも私は返信してはいけなかった。それを見て、悩みも苦しみも、助けを求めることも同時に書いてあったから、私に何かできないかと、カウンセリング受けに行ったのね。」
「うん。あ、そういえば、やたらと何かを書いたという記憶が甦ってきたかも。」
「ごめん、やめとく?」
「大丈夫。今は立ち直れてるから。」
「そうしたら、こうちゃんが立ち直るには、こうちゃんの人生や精神から、私の存在を切り離さなければならないから、私にできることは遠ざかることだと言われたの。」
「そうだったんだ。ボクは大好きな人をさらに苦しめていたんだね。」
「ううん。苦しめたのは私の方だから、それは違う。何もできなくてごめんなさい。」
しばらく沈黙があった。
みーたんは涙が止まらなかった。
「思い出せない。それはごめん。だけど、何もしてなくはないんじゃない?カウンセリングに行ってくれたんだし。」
「それは私の独りよがりだよ。自分が受け止めきれなかっただけだよ。自分が楽になりたかったんじゃないかとすら思う。」
もう言葉にならないくらい泣いているみーたん。
「みーたん、それは違うよ。ボクのために行ってくれて、ボクのためにできることは遠ざかることだと言われて、そうしてくれたんでしょ。」
「そ、それを、あなたに言われたら、私はもう。。。ぐすんっ、ぐすんっ、大声で泣きたーい!!」
この時、珍しくこうちゃんは「ボク」って言っていた。
少しだけ、あの弱っていた時期に戻してしまったのかもしれない。すぐに戻ったけど。
「みーたん、ハグしていいか?」
「え、だって、、、」
「秘密だよ、もちろん。でもそのくらいならいいだろう。」
「今日も香水してないんだね。」
「ああ。」
ハグ、というよりは、みーたんはこうちゃんの胸で大泣きした。
そんな連絡が来た時は焦った。
しばらくICUにいたらしいが無事だった。
奇跡的に後遺症もなく復活したとのことで、退院後にさだおの家に行くことになり、みーたんとこうちゃんは再会を果たした。
「連絡と調整ありがとう。やっぱりこうちゃんは頼りになるな。連絡も的確だよ。」
みーたんは、自責の念を持ちつつも、正直、またこうして会えたことが嬉しくて、つい好意的なことをまた言ってしまった。
そう、5年前も匂いのことでそんなことを言って、こうちゃんを返答に困らせてしまったのに。
「じゃあ、人生まるごと頼っとけって話だよ。」
こうちゃんから、まさかの切り返しにドキッとした。
「そ、そうだね。あはは。」
「あはは。」
周りにいた友人たちが笑ってくれたから、場が和んでよかった。
それもこうちゃんは計算済だったんだろうけど。
「みーたん、少し話さない?」
「いいよ。」
帰り道、スターバックスに2人で寄った。
「やっと2人になれた。」
こうちゃんから意外な言葉が出た。
「皆が帰るの待ってたの?」
「何言ってるのよ。何十年も待ってたって話だよ。」
「こうちゃん」
「みーたん」
被った。
「みーたん、ごめん。先に話させて。」
「うん、いつも私ファーストだから、いいよ。」
「どこまで聞いてるかわからないけど、バイアスかかってるかも知れないから、こうして直接話したかった。」
「うん、私も。情報はソースをあたらないとね。」
「たぶん、相当ひどいことをしたんだと思う。思うって言うのは無責任だけど、本当に記憶が無いの。大学時代の記憶はチラホラ戻ってきたけど、新入社員から2年目の冬くらいまではさっぱり。だからね、謝りたくても謝れない。覚えてないことを反省できないし、言葉だけで謝りたくない。」
「う、ぐ、ぐすん、ぐすんっ。。。」
「おいおい、泣くかよ、ここで。オレ、悪いやつみたいじゃん!」
「ううん、泣かずにはいられない。場所変えようよ。海とか見たい。」
テイクアウトして海へと向かった。
沈黙だった。
「私が言おうとしてたこと言うね。同じ話だから。」
「うん。」
「私、本当にどうかしてた。婚約者として、女として、人として、何もかも最低だった。だから謝るのは私の方なの。でも神様は私から懺悔する機会を奪った。こうちゃんから記憶を消し去ることで、私は謝れなくなった。謝って許してもらえることではないということだと理解した。」
「記憶のこと、知ってたの?」
「こうちゃんね、あの後、たくさんたくさん愛情のこもったラブレターを、たくさんたくさんくれたの。でも私は返信してはいけなかった。それを見て、悩みも苦しみも、助けを求めることも同時に書いてあったから、私に何かできないかと、カウンセリング受けに行ったのね。」
「うん。あ、そういえば、やたらと何かを書いたという記憶が甦ってきたかも。」
「ごめん、やめとく?」
「大丈夫。今は立ち直れてるから。」
「そうしたら、こうちゃんが立ち直るには、こうちゃんの人生や精神から、私の存在を切り離さなければならないから、私にできることは遠ざかることだと言われたの。」
「そうだったんだ。ボクは大好きな人をさらに苦しめていたんだね。」
「ううん。苦しめたのは私の方だから、それは違う。何もできなくてごめんなさい。」
しばらく沈黙があった。
みーたんは涙が止まらなかった。
「思い出せない。それはごめん。だけど、何もしてなくはないんじゃない?カウンセリングに行ってくれたんだし。」
「それは私の独りよがりだよ。自分が受け止めきれなかっただけだよ。自分が楽になりたかったんじゃないかとすら思う。」
もう言葉にならないくらい泣いているみーたん。
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「ああ。」
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