妹の聖女召喚に巻き込まれて異世界に行ったら王弟に監禁されて愛妾にされました

茶味

文字の大きさ
9 / 31
本編

9.寂しいお茶会



目を覚ますと、ウィリアム様の代わりにウサギのぬいぐるみが腕の中にいた。

「ウィリアム様……」

名前を呼んでも応えてくれる人はいない。
ウサギを抱えたまま、ベッドを抜け出し、シャワーを浴びる。
汚れないよう魔法がかけられているのか、シャワーをしながら腕に抱いても、ふわふわのウサギの毛が濡れることはなかった。

良かった。汚れを気にしないでどこへでも連れて行ってもらえる。
ウサギの柔らかな頭に顔を埋めると、ウィリアム様と同じ匂いがした。

シャツとパンツを纏い、庭に行きたいと強請ると、すぐに噴水の前に連れて来てくれた。

「ありがとう」

お礼を言うと、ウサギは嬉しそうに頭を揺らした。
雲一つない青空の下、薔薇の生垣に囲まれた芝生の上に、ウサギが肌触りの良い敷物を敷いてくれる。

「こんなものまで用意してくれたの? ありがとう」

頭を撫でると、今度はもこもこの両手を胸の前で交差させ、バッと広げた。動きの愛らしさに目を奪われていると、敷物の上にティーセットと僕の好きな焼き菓子が置かれている。
ウィリアム様が用意してくれたみたいだ。

「ウィリアム様……」

不在の主を想い、涙が伝う。
彼のいない時間は寂しくて、悲しくて耐えられない。
ハラハラと泣き続ける僕にウサギがそっと寄り添ってくれた。
小さな身体を抱き上げると、よしよしとふわふわの腕で濡れた頬を撫でてくれる。

「ありがとう。お茶、頂くね」

カップに口をつけると、泣いて時間が経ったのに冷めることなく適温で僕を待っていてくれた。クッキーもほんのり温められ、優しく僕を癒やしてくれる。

ふと顔を上げると、庭の隅に白いガゼボが見えた。

ーー

「ウサギさん、あのガゼボは入れるの?」

聞くと、ウサギもガゼボの方を確認するように向いたが、首を振った。
あそこへは入っては行けないということだ。

「そう」

行きたいの?とつぶらな瞳に問われる。

「ううん。たまたま目に入ったから聞いただけだよ。それより、ウサギさんは紅茶飲める?」

一人で飲むのが寂しくて聞くと、ウサギはクッキーを示した。

「クッキーの方がいいの?」

コクコクと頭を揺らす。どうぞ、と差し出すと嬉しそうにもぐもぐと食べる。その仕草がとても可愛い。

柔らかなぬいぐるみを膝に乗せ、ウィリアム様が帰って来て取り上げられるまで、仲良くお茶をして過ごした。

この日からウィリアム様がお出掛けの日は、ウサギとお茶会をするのが恒例になった。


早く赤ちゃんが来てくれたらいいのに。




感想 28

あなたにおすすめの小説

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

幼馴染が結婚すると聞いて祝いに行ったら、なぜか俺が抱かれていた。

夏八木アオ
BL
金髪碧眼の優男魔法使いx気が強くてお人好しな元騎士の幼馴染の二人です。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)