妹の聖女召喚に巻き込まれて異世界に行ったら王弟に監禁されて愛妾にされました

茶味

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本編

22.ウィリアムの過去

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ウィリアムとは召喚されたあの時が初対面のはずだ。

「どういうことですか?」

戸惑う僕に微笑みかけながら、遠い目をしたウィリアムは静かに語り始めた。

「私が父からーー当時の国王であった父から聖女を探すように言われたのは、5歳の時だった……」

ウィリアムは国内の事情と聖女の役割について掻い摘んで説明してくれた。口調も表情も淡々としていたが、5歳の子どもにどれだけの負担が掛かっていたんだろうか。
本来なら親に守られ、大事に育てられているはずの年齢で国の命運を背負わされるなんて。
今はもう終わったこととはいえ、当時のウィリアムを想像すると、胸が締め付けられる。

「どれだけ魔力を使って探しても聖女は見つからず、昔の文献にあった異世界まで捜索範囲を広げることにした」

「異世界……」

「そうだ。同じ世界と違って簡単に行き来することは出来ないから、魔力だけを飛ばして各地を“見て”回った」

魔力を飛ばすというのがイメージし辛く詳しくきくと、ドローンで空撮した映像を見るようなものらしい。
延々とひたすら映像を見ながら聖なる力が発する光を求めて端から回ったとウィリアムは言った。

「色んな世界を見て回るのは楽しそうですね」

少しでも場が明るくなればと思ってそんな言葉が口をついた。ウィリアムはきょとんとした顔で僕を見つめた後、寂しそうな顔で笑った。

「そうだな。リヒトと一緒ならきっと楽しかっただろう。一人で見てもただの景色だった。そこがどこであっても同じようにしか見れなかった」

失敗した。楽しいわけがないのに。ウィリアムは好きで世界を見ていたんじゃない。
何を見ても誰とも共有出来ず、一人でただ流れる世界を見つめていたんだ。

ウィリアムの手をぎゅっと握る。今何をどうしても、幼い日の彼が癒されるわけじゃない。でも、そうしたかった。
手掛かりもないまま、諦めることも許されず、終わりの見えない捜索をし続けることが小さな子どもにとってどれだけ辛い日々だっただろう。
彼はずっと孤独だったんだ。

「ウィル……ごめん」

「謝らなくていい。今はこうしてリヒトがいてくれる」

「そう、だね」

握った手にウィリアムの手が重なる。

「数えきれないほど沢山の世界を探し回ってようやく見つけたのが、リヒトの妹だった。見つけた時、彼女はまだ生まれたばかりでリヒトの腕に抱かれていた」

妹が生まれた時のことはよく覚えている。10歳も離れた妹が本当に可愛くて、愛しくて両親に呆れられるほど世話をしていた。
あの日々のどこかをウィリアムは見たんだろうか。

「妹を大事そうに抱きかかえ、あやす姿に一目惚れしたんだ。とても慈愛に満ちた表情をしたリヒトに」

「そんなふうに言われるほどではなかったと思います……生まれたばかりの妹が可愛くて構ってただけで」

「私はとても聖女が羨ましかった。なぜ、リヒトの視線の先にいるのが自分じゃないのかと」

仄暗い顔で笑うウィリアムに彼に初めて凌辱された時のことを思い出した。あの時もこんな目をしていた。僕を貫きながら、紅い唇を歪ませて言った。

ーーこれでお前は私のものだ。誰にも渡さない。

僕に絶望感しか与えなかったあの言葉は、16年も募らせた愛情と独占欲だったのか。

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