14 / 24
異世界編〜テイクアウトのお店はじめます〜
3.
しおりを挟むノインくんを見送ると、俺たちは市場調査がてら、着替えて出掛けることにした。
ノインくんにもらった資料によると、歩いて10分ほどのところに市場があるらしい。
「ウィン~。市場でお買い物しような」
「おかいものー!」
はしゃぐウィンクルムと手を繋ぎ、玄関のドアを開けると、町の賑わいが押し寄せた。
店に面した通りには大勢の人が行き交っている。防具に身を包み武器を持った冒険者、楽しそうに駆けていく子どもたち、大きな荷物を抱えた商人に耳と尻尾のついた獣人までいた。
異世界だ。本当に異世界に来たんだ。
これから、ここでウィンと暮らして行くのか。
ウィンクルムと繋いだ手をぎゅっと握る。
「ママ?」
俺を見上げるその姿は幼い。神の子で3歳ほどの見た目に育ち、知性は見た目以上に育っているが、まだ生まれたばかりの我が子。
意識すると途端に不安が押し寄せた。
もうここにはヴィータもノインくんもいない。
この子を守れるのは、俺だけだ。
「ウィン」
名前を呼んでしゃがみ込み、目線を合わせた。ヴィータそっくりの顔が小首を傾げる。
「なに?」
親の欲目を差し引いても、すごく可愛い子だ。治安がいいとはいえ、気をつけるに越したことはない。
「ママと約束しようか」
「やくそく?」
「そう。まず、迷子にならないように絶対手を離しちゃダメだぞ。もし、俺とはぐれたらその場から動かないで、待っててくれるか?」
「ママをさがしちゃだめ?」
「うん。2人で探して動きまわると、すれ違いになってずっと会えないんだ。分かるか?」
「うん、わかる」
「それから誰に声を掛けられてもついて行っちゃダメだぞ」
「うん。だれにもついていかない。じっとしてママがくるのまってる」
「もし、待っても待ってもママが来なかったら、パパに連絡するんだ。パパに連絡する方法は知ってるな?」
「うん! こころのなかでいっぱいパパってよぶとパパにきこえる」
「そうだ。絶対に迎えに行くけど、もしもの時は頼むな」
「うん。ぼく、やくそくする」
「ありがとう」
一度ぎゅっと抱き締めて、手を繋ぎ直した。
「よし! じゃあ、行こうか」
「うん!」
最初にやって来たのは、大きな市場。道の両脇をたくさんの屋台が軒を連ねて、食料品に限らず、衣類や日用品など様々なものが売っている。
扱っている品物のジャンルによってエリア分けされているらしく、雑然としているようで規則的に並んでいた。
まずは市場調査を兼ねて腹ごしらえをしようと、食べ歩き出来る料理のエリアにやって来た。
主食は主にパン。それも硬いパンが主流のようで日本人お馴染みのふんわり食感のものはどこにも売ってなかった。食べ方もそのまま齧るか、スープにつけるくらいで、サンドイッチのような物は見当たらない。
俺は硬いパンでも我慢できるけど、ウィンには厳しいかもしれないな。
米や麺料理はないかと探したが、米料理は見当たらず、麺はショートパスタをスープで煮たものが売られているだけでスパゲティはない。
ショートパスタのスープならウィンでも食べられるか。
「ウィン、何か食べたいものあった?」
「うーん? よくわかんなかった」
「そっかー。じゃあ、俺が食べたいものでいい?」
「いいよ~」
ウィンからOKをもらったので、ショートパスタ入りのスープを2人分買った。トマトベースのスープに細かく切った根菜とベーコンみたいな燻製肉、1センチ大の捻ったパスタが入っている。
「熱いから気をつけてな。ふーって息を吐いて冷まして食べるんだ」
お椀とスプーンをウィンクルムに渡すと、一生懸命にふーふーと息をはき、冷ましている。
かわいい姿を見ながら、一口食べる。正直、見た目より美味しくない。トマトの味とベーコンの塩気がうっすら感じられるがそれだけだ。根菜とパスタはよく煮込まれていて、口に入れた瞬間、無くなる。煮込まれている割に味は薄い。
なんだろう、この食べ応えの無さ。
とてもこのスープにパンを浸す気にならない。
「ママぁ……」
「ウィン、残ったら俺が食べるから無理しなくていいぞ」
「ごめんなさい」
気にするなと言いながら汁椀を受け取り、さっと掻き込んだ。
何か他にウィンが食べられそうな物あるかな。
ぐるりと見て回ったが、つまみになりそうなものや串焼きなどのガッツリしたものは見つかったが、小さい子が好みそうなものは見つけられなかった。
仕方ない、食材を買って家で作るか。
いつまでもお腹を空かせているのは可哀想で、野菜と硬いパンに牛乳っぽいものを買い込んで家へ戻った。
45
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる