リスタート 〜嫌いな隣人に構われています〜

黒崎サトウ

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そばにいる方法(10)

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 英司は転がった千秋をまず上から抱きしめると、まず「好きだよ」と耳元で囁いた。

 今日はいつもよりたくさん抱きしめられているせいか、もうすでに千秋の頭はどろどろである。

「柳瀬さん、キス……」

「ん、はいはい」

 ぐいぐいと肩を引くと、英司が唇を寄せてきた。

 ゆっくりと触れると、そのまま上唇や下唇を挟んで遊ばれる。

「ん……っ」

 早く深いのがしたくて自ら口を開いて舌を出すと、今度は焦らさず絡めとられた。

 お互いの熱を交換しながら、腰がじわじわ痺れてくるのを感じる。

「んんっ……」

「……千秋、脱がすぞ」
 
 しばらくキスを堪能したところで、英司が少し離れてそう言った。

「ん、早く……」

 脱がしてほしい。

 二人お互いを脱がせると、何にも隔てられないままもう一度抱きしめ合った。

 素肌が触れるのが気持ちいい。柳瀬さんだと、これだけですごく満たされる。

 でも、このままもっと深く、奥までまざり合いたい。

「あ……っ」

「もう触るぞ」

 英司は体にキスを落としつつ、早くも後孔に指の腹を押し当てた。

 それだけで期待が止まらなくて、欲しくてたまらなくなって、

「はやく……っ」

 と、英司にしがみついてしまう。

「千秋、もうこれ以上煽るな……っ」

 今日はずっとわがままな千秋に、英司は余裕を無くして苦しげに眉を寄せている。

 その表情を見ると、千秋はドキドキした。柳瀬さんにこんな顔をさせているのは、俺なんだと。

 指を入れられると、それだけで恐ろしく気持ちよくて、柳瀬さんの指だと思うとすぐいってしまいそうになる。

 慣らすように優しく腹の中を撫でるその指に、千秋はひたすら身を捩った。

「も、指、や……っ」

「ん?いや?」

「やだ……っ」

 駄々をこねるように首を振ると、英司が愛おしそうに聞いてくるので千秋はもっと縋りたくなった。

 はやく、繋がりたい、柳瀬さんと。

「はやくいれてっ……」

「っ……もう少しな?」

「いやだっ」

 ほぐし足りないから、という英司は真っ当なのに、焦らされてるのが嫌で千秋はがばっと起き上がった。

 いきなり起き上がった千秋に英司が驚く。

「千秋どうした?え、おいっ」

「柳瀬さんがいじわるするから……!も……っ」

 千秋は英司の肩に手をかけて、全体重で英司を後ろに倒した。

 そして、こんなことは今までしたことは一度もない、千秋は英司の上に乗っかったのだ。

「千秋、まじか……」

 やばいって、とまた意味のわからないやばいを繰り出す英司を無視して、すっかり大きくなっている彼のものを掴む。

 舐めたかったけどそれだとすぐ止められそうだったので、英司のおかげですでにとろとろな自分のそこに宛がった。

 英司は少しを体を起こして、ふー……と辛そうな吐息を漏らしながら、千秋の様子を興奮気味に見守っている。これは、止めないらしい。

「ん……柳瀬さん、やだっ、これ……」

「やだって、自分でやったんだろ?」

「だって、入らなっ……!」

 やったことがないので慣れてないのは当然だが、思ったよりもなかなか入ってくれない。入口に何度もちゅっと触れるだけだ。

 さすがに英司も千秋も焦らされて、どんどん息が上がっていく。千秋の方はすでに涙目だ。

「ほら、そのまま腰落として……」

「ん……」

 英司に両腰を掴んで支えられると、すぐに入る感じがわかった。

 言われたとおり、腰を落としていく。

「あ、あ……っ」

「くっ……」

 ずっと欲しかったそれがずぶずぶと入ってきて、なかの熱い存在に千秋は体を震わせる。

 そのまま全て飲み込んでしまうと、いつもより奥まできてるそれに耐えられなくなって、ぺたりと座り込んだ。

「はい、った……」

「よしよし、がんばったな」

 褒められるようにそう言われると、またむずむずしてくる。

「ん……」

「おい、大丈夫か?」

 動き始めようとする千秋に気づいて、英司ができるのか?と心配そうな目を向けてくる。

 失礼な、完全に知らないわけじゃないし、できるはずだ。

 そう思って、自分の知識を総動員させて動いてみる。

「ん……あ」

 じれったい。

 じれったいのが嫌で上に乗っかったはずなのに、余計じれったい。

 ゆるゆる気持ちいいけど、いつもみたいな英司がするときの刺激を得られないのだ。

「う……やだ……っ」

「今日は素直だけど、いつもに増していやいやだな」

「だって、柳瀬さんが」

 動いてくれないから、と言おうとしてやめた。上に乗っかったのは自分だ。

 とは言っても半泣き状態の千秋に、英司は、

「どうしてほしいか言ってみ?」

 と、意地悪モードを発動してきた。

 普段絶対に言わないようなことを、こういうときを狙って言わせるのが大好きなのだ、この人は。

 でも、これ以上自分で自分を焦らしてどうする。はやく、柳瀬さんと気持ちよくなりたい。

「柳瀬さん、う、動いてほし……っ」

 顔を上気させ、息荒くだらしなく口を開けて英司を欲しがる自分を鏡で見たら、きっと卒倒してしまうだろう。

 でも、柳瀬さんだけならいい。だって、

「よく言えました」

 こんなに喜んでる。

 動いてくれる気になったのがわかって、思わず中をきゅっと締め付けると英司の顔が歪んだ。

 そして、そのまま一気に突き上げられる。

「んあぁっ!」

「きっつ……」

 押し上げられるように大きな声が出た。動いてとは言ってもいきなりだなんて、でもそれが恐ろしく千秋の欲しいところを当てていく。どんどん早くなる律動に千秋の声は大きくなるばかりだ。よかった、隣が柳瀬さんの家で。

 でもなんとか声を抑えようと指を噛むと、「こら」と両手ごと絡み取られてしまう。繋がっている手が熱くて、溶けてしまいそうだった。

「あっ、あ……柳瀬さんっ」

 何度も何度も下から揺さぶられて、ほしかったのはこれだと言わんばかりにきゅうきゅう締め付けて英司を離さない。

「千秋……っ」

 もっと密着したくて体を英司の方に倒すと、自らキスをして英司の舌をねだる。英司は千秋の全てを受け入れるように優しく体を抱いて、お互いだけを感じられるキスをした。

「んんっ……はあっ」

 どこもかしこも英司で、英司のことしか考えられなくなったとき、千秋はもうすぐに限界が訪れるのを感じとった。このまま英司の腕の中で、ただ英司だけを見て感じて達してしまいたい。

「はっ、う……も、だめっ……」

「いって、千秋」

「いっちゃ、あ……あっ……!」

 力強く抱きしめられながら千秋はビクビクと体を震わせて達してしまうと、英司は頭を撫でてくれた。

 幸せな心地が身を包んで、身体中が浮くような感じがする。ずっとこのなかで漂っていたい。

「可愛い」

 達する千秋に、英司はいつもそう言う。

 こんなぐちゃぐちゃで、ただ快感に善がってるのが可愛いのか?と毎回思う。でも、英司が自分で気持ちよくなっているのを見ると嬉しくなるから、それと同じなのかもしれない。

 少し経ったところで、今度は英司がいくまでまたゆさゆさと揺られた。

 そして英司が達すれば、いつもの千秋ならここで終わろうとする。……英司に続行されることがほとんどだが。

 しかし、今日はそうしているうちにまた欲しくなってきてしまった。どうしよう、まだまだ足りない。まだまだ英司が足りない。持て余した熱がじんじんと疼きを取り戻していく。

「柳瀬さん、もう一回……」

「………………まじか」

 ティッシュを持ってこようと動く英司を遮るようにまた上に乗ると、英司は色々溜めた末にそう言った。

 でも、もうわかる、これは喜んでいる。そしてやっぱりまた、今度はさっきよりも激しく千秋を抱いた。たまには素直もいいかもしれない。

 こうなれば、良循環か悪循環か。

 いつの日かは三回連続で限界を感じたというのに、この日は千秋がねだったおかげでそれ以上に互いの体に溺れることとなった。ずっと、お互いがお互いであることを感じていた。

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