72 / 75
最終話
しおりを挟む「お茶淹れました」
「おお、ありがとうな」
温かいお茶が入ったマグカップを手渡す。誕生日に渡したそれは、千秋宅の英司専用としてすっかり馴染んでいる。
「そういえば白石さん、模試の結果が良かったって喜んでましたよ」
「お、まじか。今年卒業だろ?」
英司の横に座ると、俺たちもがんばらなきゃな、と眩しい笑顔を向けられた。英司は前より表情豊かになった気がする。
医者を目指す英司、教師を目指す千秋。二人はいつしか、共にがんばる、という意識を自然と持つようになっていた。
「恵理子も留学するって言ってたな」
「え、そうなんですか?」
「おう、なんか最高の医者を見つけたとかなんとか」
恵理子も変わらず学問に弛みないアグレッシブさを見せているらしい。
そうなると、恵理子から英司の昼食写真をこっそりもらえなくなるということか。それは少し寂しい。
「寂しい?」
「え?」
心の中が読み取られたのかと思って、ぱっと驚いて顔を見た。
「いや、当たり前だけど周りって徐々に変化していくだろ。そういうの、寂しいのかなって」
「……柳瀬さんはどうなんですか?」
「んー、まあ、そこまで思わねえな。千秋もいるし」
「お、俺関係ありますか?」
いきなり名前を出されて驚く。絶対関係なかった。
「関係あるよ」
落ち着いた低い声が、部屋にすんと響いた。
「俺は、千秋が変わらずそばにいてくれれば、寂しくない」
穏やかに、真剣に言った英司は、横に座る千秋の手を取ると甲にキスを落とした。
こんな恥ずかしいことをされて嬉しいなんて、千秋も随分この人に掴まれている。そして、千秋も同じようなことを思っているだなんて。
……だから、これはその雰囲気に乗せられただけだ。
「……俺、ずっと柳瀬さんのそばにいたいです」
そう言った後に、やはりとんでもない恥ずかしさが襲ってきて千秋は顔を真っ赤にさせた。やっぱり、自分にこういうのはハードルが高い。今のなし!と言いたくなってしまう。
でも、千秋の手を繋いだ英司が嬉しそうに笑ったので、プラマイちょっとプラスかな。
好きだった人は許せない人に、その人は今、ずっとそばにいたい人になった。
繋がれた手を繋ぎ返す。たまに、こっちから繋いでみる。
そうすれば寂しくないだろう。
そういう自分たちを、ずっと紡いでいけばいい。
【完】
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる