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兄の家へと洋吉は向かっていた。手みやげにいなり寿司が入った包みを持っていた。女将さんからだ。教えてもらうのになにもないのでは悪いと言われたのだ。風呂敷に入れる前の艶やかないなり寿司はうまそうだ。甘しょっぱいダシの匂いがしてきそう。
秋の気配がそこはかとなく、洋吉の精神を刺激する。秋の特有の干いた風、暖かい日差し、気持ちのよい青空である。洋吉は視線を上げて薄く伸びた雲を見ていた。
坂道が多いこの町に兄が住んでいる。洋吉は坂をあがると、密集したように集まる小さな一軒家を見つける。兄の家だ。兄は留守ということ、それくらい幼子ではない洋吉はわかった。
戸を何回か、たたいた。ごめんくださいと呼びかける。洋吉の声によって。奥から細君の声が聞こえた。
「あら、洋吉さん。教えてくれればいいのに。主人は留守よ」
困ったようにまばたきを繰り返していた細君は洋吉は笑った。
「じゃあ、ここで」
「そんなことを言っているんじゃないの。まあお上がりくださいな」
軽い調子で細君は言った。
「ムネ子さん。今、出かけているのよ」
ムネ子とはお手伝いさんのことだ。田舎から出てきた女だ。ムネ子の鷹揚さが細君にはあっていた。お茶を出しながら細君が座る。
茶は湯気が立ち、洋吉は暖かな部屋に気持ちが緩んでしまった。
「これ、下宿先の女将さんから」
「あら、そんなの気にしなくてもいいのに。うわあ、豪華なものを」
「いいから」
「そうね。わかったわ。で、めったに来ない洋吉さんがなんの用かしら」
洋吉は思わず苦笑いをもらした。洋吉にはこの兄の細君には負けてしまう。洋吉の表情をみた細君は小さく笑って「なにかしら」と言った。
「実は、洋服の作り方を知りたいと女将さんが」
「それは私も知りたいわ。でも洋吉さんにはわかるかしら。洋服と着物、作り方が違うようなの。私は流行りものに目がないけど。わからないのよね」
「そうですか。ありがとうございます」
「じゃあ、私もなにか女将さんに渡さなきゃね」
ニコッと笑っていた。兄が下宿先に遊びに来ること、それが洋吉にはわかった。はあとため息をついた。細君は楽しげに笑っていた。細君の邪険のない笑みがそこにあった。
風呂敷が軽くなって洋吉はお茶がごちそうになり、お手伝いのムネ子も加わり、談話をしていた。太陽の位置がかわり、時間が過ぎた頃、洋吉は兄の家を後にした。洋吉の足は自然と神社に来ていた。
紅葉が風に吹かれ、紅葉の絨毯の底から見えた。洋吉はさああと風が吹く秋風に、トンボが一匹ゆうゆうと泳ぐように飛んでいた。彼は秋だなとつぶやいた。
山道を散策する。ゆったりとした足取りである。黄色い木々を見ながら、山道が明るく感じる。日差しのせいか、それも葉の色のせいか、洋吉にはわからなかったが。すこぶる気分はいい。
泣き声が聞こえるまでは。
ひらひらと紅葉や紅葉した黄色い葉が雨のように降りしきる中で、庸子が泣いていた。洋吉の足音も気がつかず、彼女は声を殺しているようだった。嗚咽がかすかに聞こえる。洋吉は迷っていた。話しかけていいのだろうか。
ただ、洋吉の足は自然と前に出た。人の気配がしたのだろう。彼女の眼鏡を外した幼い視線が洋吉とかち合った。洋吉は笑いかけた。ぎこちなかった。
そうしてなにも言わなかった。
「……」
彼女はハンケチで顔を拭いた。はれぼったい彼女の顔に眼鏡がかけられた。
「お見苦しいところを」
消え入りそうな声で彼女は言った。洋吉はからかうこともなくただ。
「気にすることじゃない」
「……」
洋吉の言葉に庸子はどう答えていいのかわからなかった。そんな庸子の気持ちが洋吉には伝わってくる。
「ありがとうございます」
庸子はぶっきらぼうに言った。恥ずかしさがあったのかもしれない。洋吉は庸子の肩を触ろうとした。庸子は怯えたような顔をした。庸子の顔を見つめながら洋吉はなぜこんなにも庸子が怯えるのか不思議だった。彼の手は宙をさまよい、やがて上着のポケットに収まった。
「男の人は怖いかい」
洋吉の言葉に庸子はうなずいた。
「気を悪くしましたか」
いやと洋吉は答えた。洋吉の言葉を信用していないのか庸子は困ったような顔をしていた。洋吉は彼女を安心させるために笑いかけた。
「君は、好きな人がいないのかい」
洋吉の言葉に庸子は、かああっと顔を赤く染めた。その薄紙を真っ赤にしたようなそれは洋吉自身愉快なのか、不愉快なのかわからなかった。ただ、ウブな反応はかわいらしくあり、その好意は自分に向けられているならば楽しいが。
「まるで女学生みたいなことを言うんですね」
怒ったような口調で庸子が責めるようにいう。洋吉はちょっとだけ考えて「お節介かな」と答えた。
「ええ。とても。これでも私。怖いけれど、男の人といるのは慣れています」
彼女の言葉を聞いた洋吉はちょっとだけ不快になった。洋吉の気持ちを知らずに庸子ははきはきという。
「使用人の松尾、それに一馬。それに家庭教師の先生」
家庭教師の先生という言葉に洋吉は庸子の赤くなった頬を見ていた。そうして、意地悪なことを言いそうになる自分がいることに気がついた。
「好きな相手は家庭教師みたいだね」
「違いますから。確かに家庭教師の先生はすてきです。あなたより意地悪ではないし、ハンサムです」
「私はいつ、意地悪をした」
「今ですよ」
「こんなに親切にしているのに」
「親切な人は親切をしたなんて言いませんよ」
ムッとしている洋吉に庸子は気の毒に思ったのか、まあ優しい人というのは認めますと言った。それでは洋吉の気が収まらなかった。
庸子が自分以外の人を好きということで意地悪をしたいと感じているのに。庸子は洋吉を意地悪な人というのは気持ちがいいものではない。
彼は自分にある刺々しい思いを俯瞰する余裕などなかった。
「もういい。一人で泣きたまえ」
「ええ。ありがとう。親切な洋吉さん」
皮肉だとわかっていた。それでも洋吉は振り返ろうとする自分を抑えつけ、スタスタと歩いていった。彼女の視線が張り付いているような、そんな気が洋吉にはした。洋吉はそんなもの、まやかしだと心の中で言い募る。
彼女がなぜ泣いていたのか、洋吉にはわからなかった。洋吉は家庭教師の恋で泣いているんだと決めつけていた。そんな彼は女将さんに今日の結果をいう気にはなれなかった。
下宿先に帰ると女将さんに出迎えられた。女将さんに言うべきか迷っていた。
「義姉さん元気でしたか」
「まあ」
「あらひどい顔」
さすがに女将さんは鋭い。しかし、女将さんに言わなければならないと洋吉は気を取り直した。
「どうやら、義姉は洋服の作り方を知りませんでした」
「あら、残念」
「洋服と着物の作り方は違うそうで。そんなことを言っていました。いなり寿司、ありがとうございますと言って、私のところに訪ねてくるそうです」
火鉢から湯気がでている中急須に茶を入れた女将さんはあらまあまあと言っていた。彼女は洋吉の義姉が来ることに驚いていないようだ。
「騒がしくなるかもしれません」
洋吉が頭を下げると女将さんはクスクスと笑い出していた。
「別に。責めませんよ。にぎやかになるのは好きよ。それは本当よ。洋吉さんが若い人達を連れてくるのも嫌いじゃないといえば」
「すみません」
下宿先でどんちゃん騒ぎをしたこと、それを洋吉は思い出した。洋吉は小さくなっていた。女将さんは茶を出す。
「まあ、茶でも飲んで落ち着きなさい」
そう女将さんに言った。女将さんは目を細めた。それはなにかを洋吉に重ねているのかもしれないし、ただそうやっているだけかもしれない。
洋吉は遠慮しかちに茶を手に伸ばす。茶碗は温かく、洋吉の手にすっぽり収まる。茶碗をのぞけば濃い緑茶の香りと色だ。洋吉は鼻から吸い込んでため息のような息がもれた。
洋吉は一口ずつ、茶を飲んだ。彼は寂しさを覚えていた。一緒に庸子とこの茶を飲めたらよかった。それは妄想に近い。洋吉にはわかっていた。
庸子が誰かを好きということは洋吉ではない。洋吉はそれに対して庸子を責めることはできまい。彼は暗い面もちで茶を一口だけ、飲んだ。
庸子に失礼なことを言った後悔があったからだ。自分が子供じみたことをした。相手の気を引きたいばかりに、意地悪とも思えるからかい。慰めるならばまだしも。
「洋吉さんは針仕事しなくていいの」
洋吉は己の考えに沈んでいたことに気がついた。
「義姉がやってくれます」
「まあ。義姉さんになにかした」
「いいえ」
「大変なのよ。針仕事って」
女将さんがからかうように言った。洋吉はなぜかほっとして「ええ、そのようで」と答えた。洋吉の言葉に女将さんは笑って「わかっていないわよね」と呆れているような口調で言っていた。
「わかったところで」
「自分でするようになったらいかがですか」
まったくと洋吉に対して女将さんが朗らかな調子で言った。
「それか、誰かに頼むんですね。かわいい女の子に」
そう言われて洋吉の頭の中には庸子の顔が自然と浮かんでいた。洋吉は暗い気持ちになりながらもまあと答えた。
「いいじゃないの。私も主人にやらされたわ。男の人って針仕事は苦手みたいね」
「ええ。そうです」
軽口をたたく洋吉に女将さんは満足そうな顔をした。
秋の気配がそこはかとなく、洋吉の精神を刺激する。秋の特有の干いた風、暖かい日差し、気持ちのよい青空である。洋吉は視線を上げて薄く伸びた雲を見ていた。
坂道が多いこの町に兄が住んでいる。洋吉は坂をあがると、密集したように集まる小さな一軒家を見つける。兄の家だ。兄は留守ということ、それくらい幼子ではない洋吉はわかった。
戸を何回か、たたいた。ごめんくださいと呼びかける。洋吉の声によって。奥から細君の声が聞こえた。
「あら、洋吉さん。教えてくれればいいのに。主人は留守よ」
困ったようにまばたきを繰り返していた細君は洋吉は笑った。
「じゃあ、ここで」
「そんなことを言っているんじゃないの。まあお上がりくださいな」
軽い調子で細君は言った。
「ムネ子さん。今、出かけているのよ」
ムネ子とはお手伝いさんのことだ。田舎から出てきた女だ。ムネ子の鷹揚さが細君にはあっていた。お茶を出しながら細君が座る。
茶は湯気が立ち、洋吉は暖かな部屋に気持ちが緩んでしまった。
「これ、下宿先の女将さんから」
「あら、そんなの気にしなくてもいいのに。うわあ、豪華なものを」
「いいから」
「そうね。わかったわ。で、めったに来ない洋吉さんがなんの用かしら」
洋吉は思わず苦笑いをもらした。洋吉にはこの兄の細君には負けてしまう。洋吉の表情をみた細君は小さく笑って「なにかしら」と言った。
「実は、洋服の作り方を知りたいと女将さんが」
「それは私も知りたいわ。でも洋吉さんにはわかるかしら。洋服と着物、作り方が違うようなの。私は流行りものに目がないけど。わからないのよね」
「そうですか。ありがとうございます」
「じゃあ、私もなにか女将さんに渡さなきゃね」
ニコッと笑っていた。兄が下宿先に遊びに来ること、それが洋吉にはわかった。はあとため息をついた。細君は楽しげに笑っていた。細君の邪険のない笑みがそこにあった。
風呂敷が軽くなって洋吉はお茶がごちそうになり、お手伝いのムネ子も加わり、談話をしていた。太陽の位置がかわり、時間が過ぎた頃、洋吉は兄の家を後にした。洋吉の足は自然と神社に来ていた。
紅葉が風に吹かれ、紅葉の絨毯の底から見えた。洋吉はさああと風が吹く秋風に、トンボが一匹ゆうゆうと泳ぐように飛んでいた。彼は秋だなとつぶやいた。
山道を散策する。ゆったりとした足取りである。黄色い木々を見ながら、山道が明るく感じる。日差しのせいか、それも葉の色のせいか、洋吉にはわからなかったが。すこぶる気分はいい。
泣き声が聞こえるまでは。
ひらひらと紅葉や紅葉した黄色い葉が雨のように降りしきる中で、庸子が泣いていた。洋吉の足音も気がつかず、彼女は声を殺しているようだった。嗚咽がかすかに聞こえる。洋吉は迷っていた。話しかけていいのだろうか。
ただ、洋吉の足は自然と前に出た。人の気配がしたのだろう。彼女の眼鏡を外した幼い視線が洋吉とかち合った。洋吉は笑いかけた。ぎこちなかった。
そうしてなにも言わなかった。
「……」
彼女はハンケチで顔を拭いた。はれぼったい彼女の顔に眼鏡がかけられた。
「お見苦しいところを」
消え入りそうな声で彼女は言った。洋吉はからかうこともなくただ。
「気にすることじゃない」
「……」
洋吉の言葉に庸子はどう答えていいのかわからなかった。そんな庸子の気持ちが洋吉には伝わってくる。
「ありがとうございます」
庸子はぶっきらぼうに言った。恥ずかしさがあったのかもしれない。洋吉は庸子の肩を触ろうとした。庸子は怯えたような顔をした。庸子の顔を見つめながら洋吉はなぜこんなにも庸子が怯えるのか不思議だった。彼の手は宙をさまよい、やがて上着のポケットに収まった。
「男の人は怖いかい」
洋吉の言葉に庸子はうなずいた。
「気を悪くしましたか」
いやと洋吉は答えた。洋吉の言葉を信用していないのか庸子は困ったような顔をしていた。洋吉は彼女を安心させるために笑いかけた。
「君は、好きな人がいないのかい」
洋吉の言葉に庸子は、かああっと顔を赤く染めた。その薄紙を真っ赤にしたようなそれは洋吉自身愉快なのか、不愉快なのかわからなかった。ただ、ウブな反応はかわいらしくあり、その好意は自分に向けられているならば楽しいが。
「まるで女学生みたいなことを言うんですね」
怒ったような口調で庸子が責めるようにいう。洋吉はちょっとだけ考えて「お節介かな」と答えた。
「ええ。とても。これでも私。怖いけれど、男の人といるのは慣れています」
彼女の言葉を聞いた洋吉はちょっとだけ不快になった。洋吉の気持ちを知らずに庸子ははきはきという。
「使用人の松尾、それに一馬。それに家庭教師の先生」
家庭教師の先生という言葉に洋吉は庸子の赤くなった頬を見ていた。そうして、意地悪なことを言いそうになる自分がいることに気がついた。
「好きな相手は家庭教師みたいだね」
「違いますから。確かに家庭教師の先生はすてきです。あなたより意地悪ではないし、ハンサムです」
「私はいつ、意地悪をした」
「今ですよ」
「こんなに親切にしているのに」
「親切な人は親切をしたなんて言いませんよ」
ムッとしている洋吉に庸子は気の毒に思ったのか、まあ優しい人というのは認めますと言った。それでは洋吉の気が収まらなかった。
庸子が自分以外の人を好きということで意地悪をしたいと感じているのに。庸子は洋吉を意地悪な人というのは気持ちがいいものではない。
彼は自分にある刺々しい思いを俯瞰する余裕などなかった。
「もういい。一人で泣きたまえ」
「ええ。ありがとう。親切な洋吉さん」
皮肉だとわかっていた。それでも洋吉は振り返ろうとする自分を抑えつけ、スタスタと歩いていった。彼女の視線が張り付いているような、そんな気が洋吉にはした。洋吉はそんなもの、まやかしだと心の中で言い募る。
彼女がなぜ泣いていたのか、洋吉にはわからなかった。洋吉は家庭教師の恋で泣いているんだと決めつけていた。そんな彼は女将さんに今日の結果をいう気にはなれなかった。
下宿先に帰ると女将さんに出迎えられた。女将さんに言うべきか迷っていた。
「義姉さん元気でしたか」
「まあ」
「あらひどい顔」
さすがに女将さんは鋭い。しかし、女将さんに言わなければならないと洋吉は気を取り直した。
「どうやら、義姉は洋服の作り方を知りませんでした」
「あら、残念」
「洋服と着物の作り方は違うそうで。そんなことを言っていました。いなり寿司、ありがとうございますと言って、私のところに訪ねてくるそうです」
火鉢から湯気がでている中急須に茶を入れた女将さんはあらまあまあと言っていた。彼女は洋吉の義姉が来ることに驚いていないようだ。
「騒がしくなるかもしれません」
洋吉が頭を下げると女将さんはクスクスと笑い出していた。
「別に。責めませんよ。にぎやかになるのは好きよ。それは本当よ。洋吉さんが若い人達を連れてくるのも嫌いじゃないといえば」
「すみません」
下宿先でどんちゃん騒ぎをしたこと、それを洋吉は思い出した。洋吉は小さくなっていた。女将さんは茶を出す。
「まあ、茶でも飲んで落ち着きなさい」
そう女将さんに言った。女将さんは目を細めた。それはなにかを洋吉に重ねているのかもしれないし、ただそうやっているだけかもしれない。
洋吉は遠慮しかちに茶を手に伸ばす。茶碗は温かく、洋吉の手にすっぽり収まる。茶碗をのぞけば濃い緑茶の香りと色だ。洋吉は鼻から吸い込んでため息のような息がもれた。
洋吉は一口ずつ、茶を飲んだ。彼は寂しさを覚えていた。一緒に庸子とこの茶を飲めたらよかった。それは妄想に近い。洋吉にはわかっていた。
庸子が誰かを好きということは洋吉ではない。洋吉はそれに対して庸子を責めることはできまい。彼は暗い面もちで茶を一口だけ、飲んだ。
庸子に失礼なことを言った後悔があったからだ。自分が子供じみたことをした。相手の気を引きたいばかりに、意地悪とも思えるからかい。慰めるならばまだしも。
「洋吉さんは針仕事しなくていいの」
洋吉は己の考えに沈んでいたことに気がついた。
「義姉がやってくれます」
「まあ。義姉さんになにかした」
「いいえ」
「大変なのよ。針仕事って」
女将さんがからかうように言った。洋吉はなぜかほっとして「ええ、そのようで」と答えた。洋吉の言葉に女将さんは笑って「わかっていないわよね」と呆れているような口調で言っていた。
「わかったところで」
「自分でするようになったらいかがですか」
まったくと洋吉に対して女将さんが朗らかな調子で言った。
「それか、誰かに頼むんですね。かわいい女の子に」
そう言われて洋吉の頭の中には庸子の顔が自然と浮かんでいた。洋吉は暗い気持ちになりながらもまあと答えた。
「いいじゃないの。私も主人にやらされたわ。男の人って針仕事は苦手みたいね」
「ええ。そうです」
軽口をたたく洋吉に女将さんは満足そうな顔をした。
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