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1章 鬼界転生
7話 3人の王子たち
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一刻も早くこの脅威の事を父や兄に伝えなければならない。
砂浜から街へ戻った俺は、風力車に乗って王都へと向かう事にした。
風力車とは簡単に言えば空飛ぶ馬車である。馬の代わりに風の精霊の力を利用しているのだ。
「王都に向かってくれ」
操者の兵士に行き場所を伝えてクッションの効いた席に座り込む。程なくして車が浮かび南東に向けて飛び立った。窓から下を見れば街の建物が次々と過ぎ去って行く。やがて建物が疎らになり、代わりに大きな川が現れた。この川は北から南東方向へと国を斜めに横断している大河だ。この大河の中流辺りに王都はある。
「あれー? あれー?」
真横で間延びした声。
見れば大地の精霊ウィリデアが困惑した様子で俺の肩の傷口に触れている。
「どうしてだろー? 傷が治らないよ、アルアルー」
大地の精霊には大抵の傷を癒す力がある。俺が受けた矢の傷もすぐに治せるはずなのだが上手くいかない。
これといい、先程の戦いで精霊魔法がことごとくかき消された件といい、やはり転生鬼人衆には精霊魔法を無効化する力があるのだろう。そう考えて間違いない。とすると、厄介だ。アルタイア軍の戦力は大きく精霊の力に依存している。それが通じないとなれば、あの砂浜の時のように成す術もなく倒されてしまう。
「うぅー、うぅー」
「もういい、ウィリデア。それよりラヴェンナの具合は?」
「思わしくありません」
俺の疑問に答えてくれたのは火の精霊リサンドラだった。
「精霊の泉で安静にさせていますが、まだ意識が戻りません」
「死ぬ、なんてことは?」
俺は精霊が死ぬのかどうか知らなかった。それはリサンドラも同じだったらしい。とにかくこんな事は初めてなので見守るしかない、とのことだった。
「しかし、心配は要りません。このリサンドラ、ラヴェンナの分までアルセル様の為に働く所存でありますっ!」
彼女のその暑苦しい宣言に苦笑しつつ、再び窓の外の闇夜に目を向けた。
◆
王都に着いた時には既に夜が明けていた。
大河の両岸に渡って広がる街並みは圧巻だ。国中のあらゆる人材、品物、情報が集約している活気に満ちた街だった。
王城は川の北側にある。俺は風力車の操者の兵士を引き連れて城へと向かった。
高台の上に建てられた堅固な造りの城だ。朝日を受けた5本の尖塔が剣のように輝いて見える。城壁の外門を通った先には中へ入る為の大扉があった。見張りの兵たちが厳かに頭を下げる間に大きな扉を潜る。
眼前に絢爛豪華な造りの広々としたエントランスが広がっていた。いくつかの扉と、両サイドの壁際に弧を描いた階段がある。
俺は迷わず階段を上った。
2階部の踊り場には左右に広がる廊下と、真正面奥にある木製の大きな扉があった。その扉の先が謁見の間だ。この中に父であるアルタイア王がいる。
兵士が扉を開け、俺は室内へと入った。まるで大聖堂のような広さの謁見の間は、エントランスと同様に様々な彫刻細工が所々に施されていた。
入り口から奥まで左右両サイドに等間隔で太い柱が設置されている。その柱の上端部には四精霊を象った彫刻が彫られている。
部屋の一番奥。いくつかの段差の上にこれまた凝った造りの玉座が設置されていた。そこに座している壮年の男こそ、このアルタイア王国の王であり、俺の父親でもあるガミタリウス・アルタイアだ。彼は深刻な眼差しを俺に向けている。
玉座の左右には『ハ』の字に囲むようにいくつかのしっかりとした椅子が置かれ、そこに腰かけている者たちがいた。向かって左側には王の内政を補佐する大臣たちが座っている。さらにその後ろの柱の奥にはアルタイア軍の将軍たちが控えていた。
向かって右側には第一王子のルクセト、第二王子のトゥーア、即ち俺の兄たちやその他王家の者たちが座っている。同じく後ろには家来の者たちが控えていた。
兄たちに目線を向けていると、二人もコチラに視線を向けてきた。
長男のルクセトは少し困ったような苦笑を、次男のトゥーアはニッコリと微笑みを浮かべていた。そんな彼らに俺もニヤリと笑みを返した。
ルクセトは何事にも冷静で頭の回転が速い。ただ、体が生まれつき病弱だった。一方、トゥーアは器量はあんまりだが、穏やかな性格で誰からも好かれている。父王がどちらに王の座を譲るつもりなのかは知らないが、どちらが王になってもかつての俺は彼らの為に尽くすつもりだった。もちろん、今でもそうだ。
少なくとも、この俺には王の資格はない。前世の凛也の記憶を取り戻したことによってその認識は一層強くなった。俺に国を動かすのは向いていない。それに兄たちの方か遥かに才覚がある。俺にできることは戦いのみだ。敵からこの国を守る。その役目だけは、フラフラと国を放浪しながらでも全うするつもりだった。
なにより、俺はこの二人の兄が大好きなのだ。
「アルセルよ、随分と不吉な報せをもたらしてくれたようだな」
アルタイア王が溜息混じりに話しかけてきた。
俺は王に向き直った。
「父上、事態は思ったよりも深刻なようです。早く手を打たなければなりません――」
そして俺はこれまでの出来事を王に説明し始めた。
砂浜から街へ戻った俺は、風力車に乗って王都へと向かう事にした。
風力車とは簡単に言えば空飛ぶ馬車である。馬の代わりに風の精霊の力を利用しているのだ。
「王都に向かってくれ」
操者の兵士に行き場所を伝えてクッションの効いた席に座り込む。程なくして車が浮かび南東に向けて飛び立った。窓から下を見れば街の建物が次々と過ぎ去って行く。やがて建物が疎らになり、代わりに大きな川が現れた。この川は北から南東方向へと国を斜めに横断している大河だ。この大河の中流辺りに王都はある。
「あれー? あれー?」
真横で間延びした声。
見れば大地の精霊ウィリデアが困惑した様子で俺の肩の傷口に触れている。
「どうしてだろー? 傷が治らないよ、アルアルー」
大地の精霊には大抵の傷を癒す力がある。俺が受けた矢の傷もすぐに治せるはずなのだが上手くいかない。
これといい、先程の戦いで精霊魔法がことごとくかき消された件といい、やはり転生鬼人衆には精霊魔法を無効化する力があるのだろう。そう考えて間違いない。とすると、厄介だ。アルタイア軍の戦力は大きく精霊の力に依存している。それが通じないとなれば、あの砂浜の時のように成す術もなく倒されてしまう。
「うぅー、うぅー」
「もういい、ウィリデア。それよりラヴェンナの具合は?」
「思わしくありません」
俺の疑問に答えてくれたのは火の精霊リサンドラだった。
「精霊の泉で安静にさせていますが、まだ意識が戻りません」
「死ぬ、なんてことは?」
俺は精霊が死ぬのかどうか知らなかった。それはリサンドラも同じだったらしい。とにかくこんな事は初めてなので見守るしかない、とのことだった。
「しかし、心配は要りません。このリサンドラ、ラヴェンナの分までアルセル様の為に働く所存でありますっ!」
彼女のその暑苦しい宣言に苦笑しつつ、再び窓の外の闇夜に目を向けた。
◆
王都に着いた時には既に夜が明けていた。
大河の両岸に渡って広がる街並みは圧巻だ。国中のあらゆる人材、品物、情報が集約している活気に満ちた街だった。
王城は川の北側にある。俺は風力車の操者の兵士を引き連れて城へと向かった。
高台の上に建てられた堅固な造りの城だ。朝日を受けた5本の尖塔が剣のように輝いて見える。城壁の外門を通った先には中へ入る為の大扉があった。見張りの兵たちが厳かに頭を下げる間に大きな扉を潜る。
眼前に絢爛豪華な造りの広々としたエントランスが広がっていた。いくつかの扉と、両サイドの壁際に弧を描いた階段がある。
俺は迷わず階段を上った。
2階部の踊り場には左右に広がる廊下と、真正面奥にある木製の大きな扉があった。その扉の先が謁見の間だ。この中に父であるアルタイア王がいる。
兵士が扉を開け、俺は室内へと入った。まるで大聖堂のような広さの謁見の間は、エントランスと同様に様々な彫刻細工が所々に施されていた。
入り口から奥まで左右両サイドに等間隔で太い柱が設置されている。その柱の上端部には四精霊を象った彫刻が彫られている。
部屋の一番奥。いくつかの段差の上にこれまた凝った造りの玉座が設置されていた。そこに座している壮年の男こそ、このアルタイア王国の王であり、俺の父親でもあるガミタリウス・アルタイアだ。彼は深刻な眼差しを俺に向けている。
玉座の左右には『ハ』の字に囲むようにいくつかのしっかりとした椅子が置かれ、そこに腰かけている者たちがいた。向かって左側には王の内政を補佐する大臣たちが座っている。さらにその後ろの柱の奥にはアルタイア軍の将軍たちが控えていた。
向かって右側には第一王子のルクセト、第二王子のトゥーア、即ち俺の兄たちやその他王家の者たちが座っている。同じく後ろには家来の者たちが控えていた。
兄たちに目線を向けていると、二人もコチラに視線を向けてきた。
長男のルクセトは少し困ったような苦笑を、次男のトゥーアはニッコリと微笑みを浮かべていた。そんな彼らに俺もニヤリと笑みを返した。
ルクセトは何事にも冷静で頭の回転が速い。ただ、体が生まれつき病弱だった。一方、トゥーアは器量はあんまりだが、穏やかな性格で誰からも好かれている。父王がどちらに王の座を譲るつもりなのかは知らないが、どちらが王になってもかつての俺は彼らの為に尽くすつもりだった。もちろん、今でもそうだ。
少なくとも、この俺には王の資格はない。前世の凛也の記憶を取り戻したことによってその認識は一層強くなった。俺に国を動かすのは向いていない。それに兄たちの方か遥かに才覚がある。俺にできることは戦いのみだ。敵からこの国を守る。その役目だけは、フラフラと国を放浪しながらでも全うするつもりだった。
なにより、俺はこの二人の兄が大好きなのだ。
「アルセルよ、随分と不吉な報せをもたらしてくれたようだな」
アルタイア王が溜息混じりに話しかけてきた。
俺は王に向き直った。
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