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23話 アイトさん、コイツらはノームですよー
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「ナナさん! さっきは何をしたの?」
僕は彼女の突然の登場に驚きの声を上げる。
「ん? あぁ、さっきですね。何か上の方が騒がしいなと思ったら、アイトさんの合図が見えたんです。で、何か醜い化物がいるじゃないですか」
彼女とシシーは僕たちより下の方の幹で戦っていたから、百年王が現れたことに気づいていなかったようだ。
「だから、ちょうどいい所にちょうどいいモノがあったので、それを投げつけてやったんです!」
ナナさんは大指をグッと立てて笑顔で言った。
「そのちょうどいいモノって私のことよね!? あなた、何てことをしてくれるの! 髪も服も血だらけじゃない!?」
上の方からシシーが降りて来た。
彼女の身体と服は百年王の血や臓物で汚れきっている。
「えー、別にいいじゃん。洗い流せばいいんだしー」
「あなたねぇ!?」
シシーが怒りも露わに飛びかかろうとした時、誰かがあっと叫んで空を指し示す。
見れば、大樹の上空を覆っていた厚い雲が霧散していく。眩い太陽の光が辺りを照らし出した。
「あの雲は百年王の力によるモノだったのか?」
イルヴァーナが誰ともなしに疑問を口にする。
変化が起こったのは天気だけではなかった。
生気がなく、沈黙していた大樹の幹が脈打つように震え出す。枯れ細った枝の先から青々とした葉が生えてくる。
霞んでいた古代樹に色が戻ってきた。
どこからともなく小鳥たちがやってきて、歌声を奏でる。
小動物たちが枝から枝に飛び移って行く。
そんな光景を、僕らは呆気に取られながら眺めていた。
「ありがたしや、救世主の皆さま方」
突然、老人の声が辺りに響いた。
気がつけば、僕らの周りに小人たちが集まっていた。みんな先端が細くなっている赤い帽子を被っている。
その中で、髭面の小人が一歩前に出て、恭しく頭を下げている。
どうやら彼が話しかけてきた老人らしい。
「わしはノーム族の長を務めておる者です」
老人はそう自己紹介した。
すると、イルヴァーナたちは唖然とした様子で彼らをマジマジと見つめている。
「ノーム! あの大地の妖精か!?」
イルヴァーナは信じられないように首を振る。
「百年前から姿を消していたと教えられていたが……」
「我々はみな、あの怪物の呪いによって封じられていたのです」
ノームの長は悲しげに首を振る。
カルネスト湖のウンディーネたちと同じ状況だったらしい。
「しかし、こうして皆さま方があの者を倒して下さった。何と感謝してよいか。是非、お礼をさせて頂きたい」
「ふーん、じゃ、わらわを女王として崇め奉りなさい」
ナナさんがノームの長に命令口調で言い放つ。
「あのヘビ野郎を倒したのはこの雑魚どもじゃなくて、わらわと、こちらのアイトさんだぞ」
ちゃっかり僕の名前まで入れてくれるナナさん。
そんな彼女と僕を交互に見比べるノームの長。
僕はハラハラとした気持ちでそんな彼は眺めた。前の水の妖精の時は、ナナさんに文句を言って酷い目にあっていた。
ノームたちだって急に女王にしろだなんて要求を受け入れるはずがない。
と、思っていたのだけど……。
「ははぁ、女王様」
ノームの長はナナさんの前で頭を下げた。
「ナナ女王様とお呼びなさい」
「ははぁ、ナナ女王様~」
今度は周りのノームたちも一斉に頭を下げた。
「ちょっと待ちなさい!」
シシーが割って入ってきた。
「なにか? てか、臭いからあんまり近寄らないでくれる?」
「誰のせいだと思っているの!?」
鼻をつまむナナさんに、シシーが詰め寄る。
「というか、そこよ!? あの百年王にトドメを刺したのは私でしょ!? 感謝されるべきは私なんじゃないの!?」
そう抗議するシシーにヤレヤレと頭を振るナナさん。
「料理人が調理器具を使って美食を作ったとして、賞賛されるのは料理人であって、調理器具ではないざましょ?」
「何よ、その変な例え!?」
再び飛びかからんとしているシシーの肩をイルヴァーナが掴む。
「落ち着けシシー。この状況で無駄に争う必要もない」
イルヴァーナに諌められ、シシーはナナさんを睨め付けながらも踵を返した。
「ふん! でも、これは貰っていくわよ!」
シシーは赤い石を掲げて見せた。
あれは確か賢者の石とかいうモノだ。百年王の中にあったものだろうか?
「どうぞご勝手にー どうせ偽物だしー」
ナナさんは気にする風もなく手をヒラヒラと振る。
「私たちは一度王都に戻るよ。さっきの戦いでボロボロだからね。君たちは……好きにするといい」
どうやら僕たちのことは一応放っておいてくれるらしい。
「だが、ここもカルネスト湖も再調査させてもらう。いいかな、ウンディーネ、そしてノームの女王様?」
「ダメだ。勝手に登ってきたら死罪にする」
「はは、恐い恐い」
イルヴァーナたちは立ち去っていった。
僕は彼女の突然の登場に驚きの声を上げる。
「ん? あぁ、さっきですね。何か上の方が騒がしいなと思ったら、アイトさんの合図が見えたんです。で、何か醜い化物がいるじゃないですか」
彼女とシシーは僕たちより下の方の幹で戦っていたから、百年王が現れたことに気づいていなかったようだ。
「だから、ちょうどいい所にちょうどいいモノがあったので、それを投げつけてやったんです!」
ナナさんは大指をグッと立てて笑顔で言った。
「そのちょうどいいモノって私のことよね!? あなた、何てことをしてくれるの! 髪も服も血だらけじゃない!?」
上の方からシシーが降りて来た。
彼女の身体と服は百年王の血や臓物で汚れきっている。
「えー、別にいいじゃん。洗い流せばいいんだしー」
「あなたねぇ!?」
シシーが怒りも露わに飛びかかろうとした時、誰かがあっと叫んで空を指し示す。
見れば、大樹の上空を覆っていた厚い雲が霧散していく。眩い太陽の光が辺りを照らし出した。
「あの雲は百年王の力によるモノだったのか?」
イルヴァーナが誰ともなしに疑問を口にする。
変化が起こったのは天気だけではなかった。
生気がなく、沈黙していた大樹の幹が脈打つように震え出す。枯れ細った枝の先から青々とした葉が生えてくる。
霞んでいた古代樹に色が戻ってきた。
どこからともなく小鳥たちがやってきて、歌声を奏でる。
小動物たちが枝から枝に飛び移って行く。
そんな光景を、僕らは呆気に取られながら眺めていた。
「ありがたしや、救世主の皆さま方」
突然、老人の声が辺りに響いた。
気がつけば、僕らの周りに小人たちが集まっていた。みんな先端が細くなっている赤い帽子を被っている。
その中で、髭面の小人が一歩前に出て、恭しく頭を下げている。
どうやら彼が話しかけてきた老人らしい。
「わしはノーム族の長を務めておる者です」
老人はそう自己紹介した。
すると、イルヴァーナたちは唖然とした様子で彼らをマジマジと見つめている。
「ノーム! あの大地の妖精か!?」
イルヴァーナは信じられないように首を振る。
「百年前から姿を消していたと教えられていたが……」
「我々はみな、あの怪物の呪いによって封じられていたのです」
ノームの長は悲しげに首を振る。
カルネスト湖のウンディーネたちと同じ状況だったらしい。
「しかし、こうして皆さま方があの者を倒して下さった。何と感謝してよいか。是非、お礼をさせて頂きたい」
「ふーん、じゃ、わらわを女王として崇め奉りなさい」
ナナさんがノームの長に命令口調で言い放つ。
「あのヘビ野郎を倒したのはこの雑魚どもじゃなくて、わらわと、こちらのアイトさんだぞ」
ちゃっかり僕の名前まで入れてくれるナナさん。
そんな彼女と僕を交互に見比べるノームの長。
僕はハラハラとした気持ちでそんな彼は眺めた。前の水の妖精の時は、ナナさんに文句を言って酷い目にあっていた。
ノームたちだって急に女王にしろだなんて要求を受け入れるはずがない。
と、思っていたのだけど……。
「ははぁ、女王様」
ノームの長はナナさんの前で頭を下げた。
「ナナ女王様とお呼びなさい」
「ははぁ、ナナ女王様~」
今度は周りのノームたちも一斉に頭を下げた。
「ちょっと待ちなさい!」
シシーが割って入ってきた。
「なにか? てか、臭いからあんまり近寄らないでくれる?」
「誰のせいだと思っているの!?」
鼻をつまむナナさんに、シシーが詰め寄る。
「というか、そこよ!? あの百年王にトドメを刺したのは私でしょ!? 感謝されるべきは私なんじゃないの!?」
そう抗議するシシーにヤレヤレと頭を振るナナさん。
「料理人が調理器具を使って美食を作ったとして、賞賛されるのは料理人であって、調理器具ではないざましょ?」
「何よ、その変な例え!?」
再び飛びかからんとしているシシーの肩をイルヴァーナが掴む。
「落ち着けシシー。この状況で無駄に争う必要もない」
イルヴァーナに諌められ、シシーはナナさんを睨め付けながらも踵を返した。
「ふん! でも、これは貰っていくわよ!」
シシーは赤い石を掲げて見せた。
あれは確か賢者の石とかいうモノだ。百年王の中にあったものだろうか?
「どうぞご勝手にー どうせ偽物だしー」
ナナさんは気にする風もなく手をヒラヒラと振る。
「私たちは一度王都に戻るよ。さっきの戦いでボロボロだからね。君たちは……好きにするといい」
どうやら僕たちのことは一応放っておいてくれるらしい。
「だが、ここもカルネスト湖も再調査させてもらう。いいかな、ウンディーネ、そしてノームの女王様?」
「ダメだ。勝手に登ってきたら死罪にする」
「はは、恐い恐い」
イルヴァーナたちは立ち去っていった。
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