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27話 アイトさん、どこですかー?
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意識を取り戻した時、ゆらゆらと揺れ動く松明がまず目に入った。
その明かりに岩壁や岩の天井が不気味に照らされている。洞窟の中のようだ。
今僕は椅子に座らされていた。
手足を動かそうとするが縛られているらしく、動かせない。
「気が付いたようね」
先程モンスターに襲われかけていた女性だ。
てことは、あれは僕に対する罠だったわけだ。
「演技が上手だね」
僕の言葉に女は軽く笑みをみせる。
その際に鋭く尖った歯が見えた。
「君は亜人。吸血鬼か?」
そう問いかけると彼女は頷いた。
やはりそうだったか。
血の気のない肌に対して、唇だけが鮮やかな赤色だったこと、そして先程見えた牙のように尖った歯。
吸血鬼の特徴だった。
このアナフィリア王国には大きく分けて四つの種族が存在している。
人間、モンスター、妖精、そして亜人だ。
亜人の中でも様々な種類が存在していて、吸血鬼は人間の生き血を啜る種族だと聞いたことがある。
「何で僕を捕まえたわけ?」
まさか、僕の生き血を吸い取ってしまう気だろうか?
僕は目線だけを動かして洞窟内を見やる。
彼女の他にも何人かの亜人たちがいた。みんな警戒した様子で僕のことを眺めている。
「安心して。別にあなたの血を吸い取ってしまうだなんて考えていないから」
僕の考えを察したのか、女吸血鬼はそう言った。
「ただ、あなたに訊きたいことがあるのよ」
「訊きたいこと?」
僕は少し離れたところにある机に視線を向ける。そこに短剣とクロスボウが置いてあった。
「あの魔神たちは何を企んでいるの?」
「え?」
思わぬ質問に驚いてしまう。
「あなたたち、他の土地で百年王を倒して来たのよね? 私たちの仲間が確認しているわ」
「別に僕たちは百年王たちを故意に倒して回っているわけじゃない。偶然だよ」
僕は本当のことを言った。
しかし、彼女は固い顔つきをしている。
「それを信じろと? ここにも百年王がいるのに?」
「え?」
彼女には驚かされてばかりだ。
「いや、僕らはそんなこと知らなかった。ホントに偶然なんだよ」
「信じられないわね。あの魔神たちに百年王を倒されるわけにはいかないの」
「どうして?」
「言い伝えがあるからよ。百年王が死ぬと良くないことが起きると」
わからない。
この女吸血鬼は何を言っているのか?
「むしろ良いことの方が起きていると思うけど。妖精たちやその土地の封印が解かれるんだ」
「知ってる。だけど、それはあなたたち人間にとってのメリットでしょ? 私たち亜人にとっては災いでしかない」
魔力向上は人間だけに恩恵があるということだろうか?
それで力を付けた人間が害を為す可能性があるとか?
確かに人と亜人の関係は良好ではないと聞いたことがある。
うーん、面倒なことに巻き込まれてしまったようだ。
「わかったよ。僕たちはウーゼンから出て行く。百年王とはもう関わらない。だから、解放してくれないか?」
女吸血鬼は他の者たちと目配せし、再び僕に視線を向ける。
「そう言ってくれるのはありがたいけどね。だけど、ダメよ。あの魔神たちは始末しないと」
「何だって!?」
「魔神がいる限り、いつだって百年王が狙われるリスクがあるの」
女は僕を指差す。
「あなたには囮になってもらうから。殺すことはできなくても、再び封印することはできるはずよ」
ナナさんを封印?
そんなこと、絶対させるわけにはいかない!
僕は机の上の短剣に集中した。
旅の道中、ナナさんに教えてもらった遠隔魔術。
魔術印が刻まれている物なら、触れていなくても魔力を流して操作することができるのだ。
ただ、構造が複雑になる程難しくなるので、今の僕では短剣で精一杯だった。
だけど、短剣さえ引き寄せられれば……
「あなた、何をしているの?」
女が眉を顰める。
僕は彼女の言葉を無視して短剣に魔力を流した。
短剣が僕の方に飛んできて、両手足の縄を切り裂く。
自由になった手で短剣を掴み、女の喉元に短剣を当てる。
「動くな! 誰かが動けば彼女の首を切る!」
僕の言葉に他の亜人たちはピタリと動きを止める。
「私のミスね。魔術師としてのあなたの力量を見誤っていたわ」
「君の見る目は正しいよ。僕には魔術師と呼ばれるだけの技術なんてない」
机の上のクロスボウを取り、彼女に短剣を突きつけたまま、僕は出口に向かった。
「こんなことで逃げ切れると思う? 下手な抵抗はやめて。私たちは無駄にあなたを傷つける気はないわ」
「そんなことはどうでもいいよ」
僕たちは洞窟の外に出た。
そこは山の中腹らしく、下の方にウーゼンの街が見えた。
こんなところまで連れて来られていたのか。
雪で覆われた斜面をこのまま駆け降りて行くのは無謀に思える。
「考え直してくれた?」
「……」
女の問いかけを無視して、洞窟の方を見やる。
他の亜人たちがジリジリと距離を詰めて来ていた。
その明かりに岩壁や岩の天井が不気味に照らされている。洞窟の中のようだ。
今僕は椅子に座らされていた。
手足を動かそうとするが縛られているらしく、動かせない。
「気が付いたようね」
先程モンスターに襲われかけていた女性だ。
てことは、あれは僕に対する罠だったわけだ。
「演技が上手だね」
僕の言葉に女は軽く笑みをみせる。
その際に鋭く尖った歯が見えた。
「君は亜人。吸血鬼か?」
そう問いかけると彼女は頷いた。
やはりそうだったか。
血の気のない肌に対して、唇だけが鮮やかな赤色だったこと、そして先程見えた牙のように尖った歯。
吸血鬼の特徴だった。
このアナフィリア王国には大きく分けて四つの種族が存在している。
人間、モンスター、妖精、そして亜人だ。
亜人の中でも様々な種類が存在していて、吸血鬼は人間の生き血を啜る種族だと聞いたことがある。
「何で僕を捕まえたわけ?」
まさか、僕の生き血を吸い取ってしまう気だろうか?
僕は目線だけを動かして洞窟内を見やる。
彼女の他にも何人かの亜人たちがいた。みんな警戒した様子で僕のことを眺めている。
「安心して。別にあなたの血を吸い取ってしまうだなんて考えていないから」
僕の考えを察したのか、女吸血鬼はそう言った。
「ただ、あなたに訊きたいことがあるのよ」
「訊きたいこと?」
僕は少し離れたところにある机に視線を向ける。そこに短剣とクロスボウが置いてあった。
「あの魔神たちは何を企んでいるの?」
「え?」
思わぬ質問に驚いてしまう。
「あなたたち、他の土地で百年王を倒して来たのよね? 私たちの仲間が確認しているわ」
「別に僕たちは百年王たちを故意に倒して回っているわけじゃない。偶然だよ」
僕は本当のことを言った。
しかし、彼女は固い顔つきをしている。
「それを信じろと? ここにも百年王がいるのに?」
「え?」
彼女には驚かされてばかりだ。
「いや、僕らはそんなこと知らなかった。ホントに偶然なんだよ」
「信じられないわね。あの魔神たちに百年王を倒されるわけにはいかないの」
「どうして?」
「言い伝えがあるからよ。百年王が死ぬと良くないことが起きると」
わからない。
この女吸血鬼は何を言っているのか?
「むしろ良いことの方が起きていると思うけど。妖精たちやその土地の封印が解かれるんだ」
「知ってる。だけど、それはあなたたち人間にとってのメリットでしょ? 私たち亜人にとっては災いでしかない」
魔力向上は人間だけに恩恵があるということだろうか?
それで力を付けた人間が害を為す可能性があるとか?
確かに人と亜人の関係は良好ではないと聞いたことがある。
うーん、面倒なことに巻き込まれてしまったようだ。
「わかったよ。僕たちはウーゼンから出て行く。百年王とはもう関わらない。だから、解放してくれないか?」
女吸血鬼は他の者たちと目配せし、再び僕に視線を向ける。
「そう言ってくれるのはありがたいけどね。だけど、ダメよ。あの魔神たちは始末しないと」
「何だって!?」
「魔神がいる限り、いつだって百年王が狙われるリスクがあるの」
女は僕を指差す。
「あなたには囮になってもらうから。殺すことはできなくても、再び封印することはできるはずよ」
ナナさんを封印?
そんなこと、絶対させるわけにはいかない!
僕は机の上の短剣に集中した。
旅の道中、ナナさんに教えてもらった遠隔魔術。
魔術印が刻まれている物なら、触れていなくても魔力を流して操作することができるのだ。
ただ、構造が複雑になる程難しくなるので、今の僕では短剣で精一杯だった。
だけど、短剣さえ引き寄せられれば……
「あなた、何をしているの?」
女が眉を顰める。
僕は彼女の言葉を無視して短剣に魔力を流した。
短剣が僕の方に飛んできて、両手足の縄を切り裂く。
自由になった手で短剣を掴み、女の喉元に短剣を当てる。
「動くな! 誰かが動けば彼女の首を切る!」
僕の言葉に他の亜人たちはピタリと動きを止める。
「私のミスね。魔術師としてのあなたの力量を見誤っていたわ」
「君の見る目は正しいよ。僕には魔術師と呼ばれるだけの技術なんてない」
机の上のクロスボウを取り、彼女に短剣を突きつけたまま、僕は出口に向かった。
「こんなことで逃げ切れると思う? 下手な抵抗はやめて。私たちは無駄にあなたを傷つける気はないわ」
「そんなことはどうでもいいよ」
僕たちは洞窟の外に出た。
そこは山の中腹らしく、下の方にウーゼンの街が見えた。
こんなところまで連れて来られていたのか。
雪で覆われた斜面をこのまま駆け降りて行くのは無謀に思える。
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「……」
女の問いかけを無視して、洞窟の方を見やる。
他の亜人たちがジリジリと距離を詰めて来ていた。
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