底辺冒険者、ギルドを辞めて最強鬼畜魔神(美少女)とキャンピングカーで旅に出る

一本坂苺麿

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64話 赤き波動

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 赤い閃光が周囲一帯に走り、突風が吹き荒れる。
 あまりの眩しさに僕は腕で目を庇う。

『やったか!?』

 センター長がウィング越しに興奮した様子で尋ねてくる。
 僕は答えられぬまま、閃光が収まっていくその地点に目を凝らす。

 レーザー・ネットはかき消えていた。
 ただそこには、魔神王イースのみがポツンと浮かんでいる。その腹部には大きな穴が空いており、金色の血が流れ続けている。

 かなりのダメージを与えられたようだ。それもそのはず、千年王に供給されていた疑似賢者の石のエネルギーと同等分を凝縮して放ったのだから。

 だけど、トドメを刺すまでには至っていない。それにはやはり本物の賢者の石の力が必要なんだ。

「アイトくん、亜人王たちが戻ってくるまでヤツにダメージを与え続けて修復させないようにしないと」

 イルヴァーナの言葉に僕は頷く。
 魔神王の修復力がどの程度のモノなのかわからないけど、きっとそう時間は掛からないはずだ。

 イースの側に2隻のシャトルが近づいていく。

 その時ーー

「UGGGGGAAAAAAAAOOOOOOOOAAAA!!!」

 声にもならぬ叫びをイースは発した。
 ギラリと光る赤眼で僕を睨み据えると、突進してきた。
 その衝撃で彼に近づいていたシャトル2隻は破壊され墜落していく。

 それは今までで最も速い突進だった。
 彼の黄金の拳が僕の腹部に叩き込まれる。魔力とウィングでガードしたが、衝撃で後方のシャトルに激突する。

「このクソガキがあぁぁぁぁぁぁ!! よくも私をおおおおおOOOOOOOAA!!!!!」

 罵倒の言葉を叫びながらイースはさらに僕に飛びかかって来る。

 僕はNanazonからロケットランチャーを構え放った。
 イルヴァーナも魔剣の斬撃を放ち、周りの天使たちも攻撃を仕掛ける。

 その瞬間、なぜか時がゆっくりと流れているように感じた。
 イースの身体から金色の波動が発せられる。
 波動に当てられた僕たちの攻撃は掻き消される。しかし、波動はそれでも消えず僕ら全体を包み込む。

 それは強烈な悪意だった。
 生きとし生ける者すべてに対する憎悪。
 その波動に当てられた機械は機能を停止し、墜落していく。そして生命体はその命を終える。

 死の波動。

 命を失った天使たちが次々と落下していく。
 僕やイルヴァーナなどの魔力を纏っている者たちだけが生き残っている。

 これが魔神王の全力ーー

「UGGGGGGGGAAAAAAAAAAAA!!!!!」

 イースが飛びかかって来た。
 肥大した右拳が僕の顔面を殴りつける。

 僕の身体は地上まで一気に叩きつけられた。
 屋根を破壊し、床面さえも崩壊させる。

 朦朧とする頭で周囲を見ると、そこが王城であることがわかった。
 身体を動かそうとするが、あらゆる所の骨が折れているのだろう、上手くいかない。

 破壊された屋根の上空にイースが浮かんでいた。黄金の剣を下に構えている。僕を串刺しにする気なのだろう。

「アイトさん! アイトさん!!」

 僕の胸の辺りにナナさんが寄り添っていた。僕を助けようとしてくれているが、その小さな身体では何もできそうにない。

「臓物すべて抉り出してやるぞ!!」

 イースが上空から剣の切っ先を下に構えながら僕の方に落下してくる。


「アイトッ!!」

 突然、黒猫の声がしたかと思うと、僕の頭上を緑の壁が覆い尽くす。

「おい、無事かアイト!?」

 僕の顔を黒猫が覗き込んでいる。

 僕らの頭上を覆っているのがとても大きな木の枝であることがわかった。古代樹よりも遥かに大きい。

「これはユグドラシルの枝だよ。まったくミミのヤツ、とんでもないもんをしまい込んでやがったぜ」

 黒猫は見上げながら言った。枝の上ではイースの怒号が聞こえる。この枝に遮られてこちらに来れないらしい。

「ニニアリアは?」
「倒したよ。それより何とか間に合ったぜ」

 黒猫が視線を向けた先、そこには亜人王やクイーナたちがいた。その後ろには魔術師に肩を貸された状態のイルヴァーナの姿が見える。彼女も金色の波動に当てられて大怪我を負ったらしい。

「おいお前ら急げ! あんまり長くは持たないぞ!」

 亜人王たちが駆け寄ってきた。

「賢者の石は?」
「おう、これだ!」

 亜人王は赤い液体が入ったボトルを取り出した。

 これが賢者の石……?

「賢者の石は古代樹の根本にあったの。そこから別次元の領域に通じていて」
「まったく酷い目にあったぜ。アルゴン・クリプトンの野郎!」

 その時、頭上の枝が大きく揺れ動く。

「お前ら! その話は後にしろ!」

 黒猫は自分の口の中に手を突っ込むと何か大きなモノを吐き出した。
 それは小振りの盃だった。

「これに賢者の石を注げ!」

 亜人王は顔をしかめながらボトルの蓋を開け、中身を盃に注ぐ。

「わらわが!」

 ミニナナさんが盃を受け取ると、僕の口元に当てる。

「さぁ、飲んでくださいアイトさん!」

 その時、枝が激しい音を立てて折れていく。できた隙間からイースの姿が見える。彼も俺の姿を、そして俺が飲まされようとしている液体を見ている。

「ま、まさかそれは!!」

 イースは絶叫しながら残りの枝を吹き飛ばした。

「やめろおおおおおおおおおお!!!!」

 イースはその身体から金色の死の波動を放つ。
 それと同時に僕は賢者の石を飲み干した。

 死の波動が黒猫や亜人王たちに降り注ごうとしている。

 僕の全身に熱い何かがこみ上げてくる。

 ーーあなたの望みは?

 そんな声が僕の頭に響いた。不思議とそれが賢者の石の問い掛けであることがすぐに理解できた。

 僕の望みは……

「誰も傷つけさせない!!」

 瞬間、僕の身体から赤き波動が放たれた。
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