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それでも時は過ぎる
しおりを挟む目覚まし時計の音で、俺は目覚めた。カーテンの隙間から朝日が射し込んでいる。ベッドから出て、洗面所で歯を磨きながら、俺はまだ寝惚けていた。瞼が落ちそうになる眠気もこらえて、鏡を見ると─。
「ぅわっ!?」
「お早う、吉岡」
鏡には、俺の背後にぬらりと立つ鷹木の姿が映っていた。
「びっっっくした、気配消すのやめろよ!」
「済まない。今度から気をつける」
ほんとうに驚いた。こいつデカいし顔は青白いしで怖いんだよ。まあ、その顔色も前と比べれば大分マシになったけどな。最近はよく眠れているのか、心做しか隈も薄くなったように感じる。健康な体になっていくのは良い事だ。今までは、起きれないから朝飯も抜かしてたらしい。発展途上の男子高校生の分際で何たる横暴か。実家にいたときも、弟妹たちには何がなんでも朝飯を食わせていた。それを聞いて怒り狂った俺は、次の日から、鷹木を叩き起して食堂へ連行している。
この日も、二人で食堂へ向かい朝飯を取り、その流れで一緒に登校まですることになった。ここ最近では定番のルーティンとなりつつある。
寮と学校は敷地は別だが、歩いて5分ほどで辿り着く。俺たち以外にも、学校へ向かう生徒で道は溢れていた。取り留めのない会話をしながら、教室へ向かう。そして定番と化した光景がもうひとつ。
「生徒会長だ!」
「道を開けろ!!生徒会役員のお通りだ!」
甲高い声と共に、ザッと道が開けた。モーセの海割りのように開けた道を、堂々と歩いてくるのは、やたらキラキラした顔の男たち。──生徒会だ。
「はぁ…西園寺様かっこよすぎる…」
「健様…今日も麗しい…」
一方、道端で固まっている可愛らしい見た目の男の子たちは、生徒会親衛隊の皆さんだ。生徒会のために生き、お互いを牽制しあう存在──。入学してからずっと、この光景を見続けてきたので、すっかり慣れてしまった。
生徒会には関わらないのが得策だと、去年の一年間で学んでいる。生徒会には絶対服従。そして、それ以上に目を付けられたらマズイのが、生徒会親衛隊である。彼らの前で生徒会について悪く言ったりすれば──…。考えるだけで恐ろしい。
生徒会の集団が、俺たちの所へ差し掛かる。全員、格式高い家柄の子息であり、Sクラス在籍生徒でもある。
「なあ、改めて見ると異様な光景だな……」
「そうだな………」
もちろん、囁き声での会話である。
× × × × × ×
「なあ~」
「んー?」
「鷹木っているじゃん?あいつ、最近変わったよな~」
上の空で聞き流していた友達の声に、ドキンと胸が高鳴った。
「さ、さあ…?どこら辺が?」
「前まで病人みたいな見た目で、休みも多かったのに最近は元気じゃん。静かなとこは変わらないけど」
「あ、ああ…そういう…」
ビックリした。鷹木が人外だって勘づかれたのかと思った。まあ、見た目は人間と変わらないし、バレる要素がないんだけど。
以前、『お前インキュバスって言う割には人間と全然見た目変わんないよな』と尋ねたことがある。すると鷹木は、『当然だろう。見た目が違えば、警戒される』とまるで俺がトンチンカンな質問をしたかのような扱いをされた。そういうもんか。
俺はチラリと、一人大人しく着席している鷹木へと視線を向ける。教室の一番後ろ端、背筋をしっかり伸ばしている様子は、やっぱり武士みたいだ。
あいつが最近元気なのも、当然のことだ。なぜなら、あいつはオナニーを我慢することを辞めたから。好きなだけ、一日何回でもシている。もちろん、俺の私物にチンコを擦り付けるというおぞましい行為はしないと誓わせた。破ったら放逐だ。人外なんだから天界なり地獄なりに帰りやがれ。あと、流石に毎回見せつけられるのは嫌なので、俺のいない時間か、トイレでやれと条件を出した。そして、鷹木はそれを呑んだ。
───あの日の告白は、お断りさせて、いただいた。
いくら男同士のアレコレに慣れてしまったとはいえ、俺の恋愛対象は女の子だ。それに、鷹木のことはまだ何もしらない。鷹木は大して傷ついた様子でもなく、それ以降も俺と普通に接してくれる。
ぼんやりと鷹木を眺める。均整の取れた体つき、無頓着な長めの黒髪、前髪の間からたまに見える一重の目は切れ長で、思慮深げな雰囲気だ。鼻は高くて、とても綺麗だ。
今まで、同室だというのに鷹木の顔をまじまじと見たことすらなかった。興味も無かったし。それが不思議なものだ、一度気づいてしまうと、その顔の端正さにしか目がいかない。
ふと、鷹木がこちらを見た。視線がバチッとかち合う。
そんな必要はないのに、咄嗟に視線を逸らしていた。胸が高く鳴っている。…………何なんだコレ。
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