あの頃のあなたに

そら

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結婚式

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5月21日、日曜日は大安で、この日は中学校からの同級生、亜紀の結婚式に呼ばれていた。亜紀は結婚当初純平に見せた友達の写真のうちの一人で、志織と同じ高校に通っていた。
「久しぶり!」
結婚式を行うホテルの列席者の控室で志織に会う。志織はすぐにわたしに気が付き、手を上げてにこやかに微笑んだ。
「久しぶり。元気だった?」
志織に会うのは志織が出産してしばらくしてからだから、一年ぶりくらいか。
「元気だったよ。」
しばらく志織と話していると、亜紀と同じく中学生のころから仲の良くなった友達、美優が合流した。一通り挨拶を済ませた後、わたしはあることに気づく。
「あれ、美優、お腹…。」
美優はお腹をさすり、満面の笑みで言う。
「うん。今5か月。」
途端に、わ、という歓声が小さく上がる。
「よかったね!」
志織と言い合って、
「身体大切にね。暑さ寒さは大丈夫?何かあったら何でも言ってね。」
志織は美優の腕をさすり、優しく声をかけた。志織は一人目を産んでいるから、何かとアドバイスができるのだろう。志織からはマウントではない、友達のために何か力になってあげたい、という純粋な暖かさを感じた。
式は滞りなく進み、お開きとなった。
わたしは純平がホテル前まで迎えに来てくれ、志織もまた旦那さんが迎えに来てくれるらしく、電車で帰るという美優とはホテル前で別れた。
「でも、本当に良い式だったね。」
志織が心底嬉しそうに言う。わたしと志織たちは高校は別々だったが、亜紀と志織は高校が一緒だったので、亜紀のことをわたしよりも知っているはずだ。
高校を卒業した後の春休みに、中学校時代の同窓会があった。誰が集合をかけたのかは覚えていないが、そのときに亜紀は用事があるからと欠席した。志織、美優と共に出席したわたしは、本当に亜紀は予定が合わないのだと思っていた。だが、どうやらそうではないのではないか、ということを中学から志織たちと同じ高校へ行った女の子が言って回っていた。亜紀は高校時代にいじめにあい、不登校になり高校を卒業できなかった。だから、同窓会にも来ないのではないか――。亜紀が高校生の頃にどんな学生生活を送っていたのかはわたしは知らないが、人の過去を勝手に噂するその同級生に腹が立った。彼女は仲の良かった志織にそれとなく亜紀が欠席した理由を聞いていたが、志織は「用事があるみたいだよ」と何があっても亜紀については話さなかった。
わたしたちが志織に亜紀の高校時代のことを尋ねることはなかったし、志織も話さなかったから、結局亜紀が高校を卒業できなかったのかははっきりとはわからない。だが、思えば結婚式の披露宴でのプロフィールムービーは、高校時代の写真がなかったし、ゲストも高校時代の友人は志織以外来ていなかったことを考えると、もしかしたらそうなのかもしれない。
「ほんとね。亜紀も幸せそうで良かった。」
二人で余韻に浸っていると、一台の車がゆっくりと前を通り、運転手が手をあげる。志織の旦那さんだ。結婚式で会ったとき以来だ。
「じゃあ、また。」
志織が手を振る。
「うん、またね。また遊ぼう。」
いつのことになるやらと思いながら、純平の迎えを待つ。五分ほど待つと、純平の車が現れた。
「どうだった?」
助手席に乗り込むや否や聞かれ、
「感動した。」
短く感想を伝える。心にふと意地悪心がわき、
「志織もいたよ。」
と投げかける。純平は好みの志織がいると聞いて、どう反応するのだろうか。
しばらく待っても反応がないので、続ける。
「純平に会いたがってた。」
純平はわたしの顔をちらちらと横目で見ながら、
「えー、うそ。会いたかったな。」
と本気か合わせているのかわからないことを言う。
経験してきた過去のことを思い返す。純平は、好きな人がいると言っていた。それは一体だれなのだろうか。今聞いても、今の純平はわたしと同級生だった頃の純平ではないから、意味がない。
―また過去に戻れたらな。
夢であるなら、いつかは覚めるはずだ。目覚めたら、純平と結婚して幸せな日常を送っているわたしに戻れる。それならば。試してみるか。
わたしは近々、神社で夢の行き来のトリガーであろう儀式を試してみることにした。
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