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我慢する!
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山の学校から帰ってきてしばらくして、純平が志織に告白したという話が教室で話題になった。純平は居心地が悪そうに笑っていたが、志織はいつもと変わらず落ち着いていた。凛としたその姿に、小学生ながら肝が据わっているなと思った。
席替えをして純平とも志織とも席は離れてしまったけれど、寂しさはない。山の学校で怪談話をしてから、わたしはクラスで話す友達が増えた。自分を前よりも開放できるようになったのかもしれない。
「琴音ちゃん、帰ろう。」
志織が声をかけてくる。純平から告白を受けたと聞いて、ショックと諦めと納得と、少しの嫉妬を感じたけれど、志織を目の前にするとそんな思いも薄れていく。それほど志織は素敵な女の子だった。
季節は梅雨の時期に入っていた。じめじめと重い空気が息苦しい。
「なんで志織ちゃんは純平君の告白オーケーしてないの?」
好きな人ではなかったから、というのが予想していた答えだったが、どうやらそうではなかったらしい。
「うーん、…琴音ちゃんには悪いけど…、好きだから、かな。」
「好きだから?」
好きなら告白を受け入れるのではないだろうか。純平のことが好きなわたしに気を遣ったのだろうか。
「…あ、琴音ちゃんのせいとかではないからね。ただ…、純平君は本当はわたしのことが好きじゃない気がするの。」
わたしの中にクエスチョンマークが浮かんだ。
「どういうこと?」
「わたしのことをちゃんと見てくれていない気がする。」
志織が寂しそうに言う。
「そんなことないよ。純平君は志織ちゃんのことタイプだと思うよ。色白で目が大きくてよく笑う子が好きだから。」
「…本当のわたしを知ったらがっかりするよ。それに純平君、琴音ちゃんといるときのほうが、楽しそうに笑うの。本当に楽しそうな笑顔。」
わたしはそんなことないと言おうとして、志織の泣きそうな表情に固まってしまった。純平はいつも笑顔なので意識したことはなかったが、本当にそうなのだろうか。
近くに咲いていたオオキンケイギクの花をブチっとむしりとり、花びらをちぎる。
「好き、きらい、好き、きらい、好き…。」
花弁は、わたしの好き、という言葉とともに散っていく。
「そんなことないよ。ちゃんと純平君は志織ちゃんのこと好きだよ。」
志織の顔を見る。
「顔がタイプって、…一番長続きするんだよ。」
うらやましい、と言おうとして抑える。大丈夫。心配ない。自分に言い聞かせる。
「うん…、ありがとう。」
話して落ち着いたのか、志織はいつもの笑顔を見せる。
「でも、琴音ちゃんは良いの?」
本当は少しいやだと言ってしまえればこのずしりと重い胸も軽くなるだろうが、そうすると志織に鎖を繋いでしまう。良いの、と聞かれると余計に心が苦しくなる。どうせなら悪女になってほしい。
「…うん、大丈夫だよ。」
笑顔を作るとひきつってしまう気がして軽く口角を上げる。今できる精一杯の強がりだった。
その後に志織とどういった会話をしたのかは覚えていない。分かれ道で別れて、わたしは急いで家に帰った。暗くなる前に、神社へ行きたかった。ランドセルを置いて母にちょっと遊んでくると告げ、返事を待たずに外へ飛び出す。自転車にまたがる。陽は一日の疲れを癒すために、山のかげに見えなくなろうとしていた。
席替えをして純平とも志織とも席は離れてしまったけれど、寂しさはない。山の学校で怪談話をしてから、わたしはクラスで話す友達が増えた。自分を前よりも開放できるようになったのかもしれない。
「琴音ちゃん、帰ろう。」
志織が声をかけてくる。純平から告白を受けたと聞いて、ショックと諦めと納得と、少しの嫉妬を感じたけれど、志織を目の前にするとそんな思いも薄れていく。それほど志織は素敵な女の子だった。
季節は梅雨の時期に入っていた。じめじめと重い空気が息苦しい。
「なんで志織ちゃんは純平君の告白オーケーしてないの?」
好きな人ではなかったから、というのが予想していた答えだったが、どうやらそうではなかったらしい。
「うーん、…琴音ちゃんには悪いけど…、好きだから、かな。」
「好きだから?」
好きなら告白を受け入れるのではないだろうか。純平のことが好きなわたしに気を遣ったのだろうか。
「…あ、琴音ちゃんのせいとかではないからね。ただ…、純平君は本当はわたしのことが好きじゃない気がするの。」
わたしの中にクエスチョンマークが浮かんだ。
「どういうこと?」
「わたしのことをちゃんと見てくれていない気がする。」
志織が寂しそうに言う。
「そんなことないよ。純平君は志織ちゃんのことタイプだと思うよ。色白で目が大きくてよく笑う子が好きだから。」
「…本当のわたしを知ったらがっかりするよ。それに純平君、琴音ちゃんといるときのほうが、楽しそうに笑うの。本当に楽しそうな笑顔。」
わたしはそんなことないと言おうとして、志織の泣きそうな表情に固まってしまった。純平はいつも笑顔なので意識したことはなかったが、本当にそうなのだろうか。
近くに咲いていたオオキンケイギクの花をブチっとむしりとり、花びらをちぎる。
「好き、きらい、好き、きらい、好き…。」
花弁は、わたしの好き、という言葉とともに散っていく。
「そんなことないよ。ちゃんと純平君は志織ちゃんのこと好きだよ。」
志織の顔を見る。
「顔がタイプって、…一番長続きするんだよ。」
うらやましい、と言おうとして抑える。大丈夫。心配ない。自分に言い聞かせる。
「うん…、ありがとう。」
話して落ち着いたのか、志織はいつもの笑顔を見せる。
「でも、琴音ちゃんは良いの?」
本当は少しいやだと言ってしまえればこのずしりと重い胸も軽くなるだろうが、そうすると志織に鎖を繋いでしまう。良いの、と聞かれると余計に心が苦しくなる。どうせなら悪女になってほしい。
「…うん、大丈夫だよ。」
笑顔を作るとひきつってしまう気がして軽く口角を上げる。今できる精一杯の強がりだった。
その後に志織とどういった会話をしたのかは覚えていない。分かれ道で別れて、わたしは急いで家に帰った。暗くなる前に、神社へ行きたかった。ランドセルを置いて母にちょっと遊んでくると告げ、返事を待たずに外へ飛び出す。自転車にまたがる。陽は一日の疲れを癒すために、山のかげに見えなくなろうとしていた。
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