19 / 21
リクリエーションと怪談話
しおりを挟む
お昼ご飯は、みんなでカレーを作った。谷川君が火をおこし、志織が材料を切り、わたしがカレーの仕上げをする。ご飯は純平が担当だった。
「志織ちゃん、切るの上手だね。」
「ありがとう。家で手伝ってるからかな。」
「手切らないように気をつけてよー。」
純平が声をかける。自分の担当外でもほかの人に目配りができる、いろいろなところを観察している子どもだな。何も変わっていない。
辺りからカレーのいいにおいが漂い始めたころ、わたしのお腹はすでにぐーと鳴っていた。
「ん、んまい!」
純平がカレーを頬張る。そういえば、大人になった純平は、カレーはあまり食べない人だったな。わたしが作らないからだろうか。
「うん、おいしい!」
パクパク食べていると、志織が口元を指して言う。
「口の周りにいっぱいついてるよ。」
班の中で笑いが起こった。
「おばキューじゃん。」
またまた純平が意地の悪そうに言う。なんでおばきゅーを彼が知っているのか疑問だったが、ひと笑いとれてよかった。純平の笑顔を見るのが、一番好きだ。
お腹がいっぱいになったところで、リクリエーションをした。山の中を散策するのだ。虫が嫌いな純平は、散策を嫌がっていたが強制参加させられていた。班のみんなで決められたコースを歩く。班長の谷川君は、みんなを見守るように一番後ろからついてきていた。わたしと志織と純平はそれぞれ配置を変えながら進んでいく。
「はー、つかれたー。」
道の開けたところで、純平が言った。大きな岩があったので、そこで皆で休憩をする。集合時間まではまだ時間がありそうだ。
「純平君、虫嫌いそうだけど、今のところ大丈夫?」
わたしが心配すると、
「いや、もう早く帰りたい。」
子どもらしい純平に思わず笑ってしまう。
「ほれっ。」
谷川君が純平に何かを投げた。
「うわっ。」
純平は慌てて逃げる。バッタだ。
「もーう、やめてよー。」
純平が心底いやそうに言うが、顔は笑っている。その様子を見てみんなでケタケタ笑い合った。お腹が痛くなるほど。
「さあ、そろそろ急ごうか。」
谷川君が班長らしくみんなを引っ張っていく。日はまだ明るいが、遠くに鳴くカラスがもう夕方になりそうだと告げているようだった。
夜はお待ちかねのキャンプファイヤー。それぞれの班が出し物を出し合う。クイズをやる班、ダンスをやる班、それぞれ盛り上がりをみせた。
いよいよわたしたちの班の番になった。わたしはトップバッターを自ら望んだ。いやなことは先に済ませておくタイプだからだ。マイクを片手に、わたしはある話をした。
『これはわたしの作り話と思って聞いてください。わたしの好きな人は、明るく笑う人です。いつもにこにこ楽しそうで、食べるのが好きだというのも納得の、食べる姿がかわいい人です。将来結婚したいほど好きです。…この世界ではない別の世界で、わたしたちは結婚しています。でも、その人には今別に好きな人がいるようです。また別の世界に戻ったら結婚しているし、その人と一生一緒に過ごせるからいいか、とも思うのですが、その人の過去も全部独り占めにしたいわたしもいます。わかってくれるかな。でも…とにかく、小さい頃のその人に出会えてよかった、そういう話です。』
周りがざわつくのがわかる。
「え、なに、怪談って、三神が不思議ちゃんってこと?」
隣にいた純平が言う。中身は大人でも、こんな話をするのは恥ずかしいし、やはり注目されることに慣れない。先生はパンパンと手を叩き何かを言っている。
「そういうことじゃなくて…、いや、そういうことかも。」
わたしは笑って純平に答えた。
「変な子。」
純平が小さく笑う。ふたりで並んで目の前の炎に目を向ける。虫の音色が暗闇に紛れるように遠くで聞こえ、オレンジ色に伸びる大きな炎は穏やかにその外炎を揺らしていた。
「志織ちゃん、切るの上手だね。」
「ありがとう。家で手伝ってるからかな。」
「手切らないように気をつけてよー。」
純平が声をかける。自分の担当外でもほかの人に目配りができる、いろいろなところを観察している子どもだな。何も変わっていない。
辺りからカレーのいいにおいが漂い始めたころ、わたしのお腹はすでにぐーと鳴っていた。
「ん、んまい!」
純平がカレーを頬張る。そういえば、大人になった純平は、カレーはあまり食べない人だったな。わたしが作らないからだろうか。
「うん、おいしい!」
パクパク食べていると、志織が口元を指して言う。
「口の周りにいっぱいついてるよ。」
班の中で笑いが起こった。
「おばキューじゃん。」
またまた純平が意地の悪そうに言う。なんでおばきゅーを彼が知っているのか疑問だったが、ひと笑いとれてよかった。純平の笑顔を見るのが、一番好きだ。
お腹がいっぱいになったところで、リクリエーションをした。山の中を散策するのだ。虫が嫌いな純平は、散策を嫌がっていたが強制参加させられていた。班のみんなで決められたコースを歩く。班長の谷川君は、みんなを見守るように一番後ろからついてきていた。わたしと志織と純平はそれぞれ配置を変えながら進んでいく。
「はー、つかれたー。」
道の開けたところで、純平が言った。大きな岩があったので、そこで皆で休憩をする。集合時間まではまだ時間がありそうだ。
「純平君、虫嫌いそうだけど、今のところ大丈夫?」
わたしが心配すると、
「いや、もう早く帰りたい。」
子どもらしい純平に思わず笑ってしまう。
「ほれっ。」
谷川君が純平に何かを投げた。
「うわっ。」
純平は慌てて逃げる。バッタだ。
「もーう、やめてよー。」
純平が心底いやそうに言うが、顔は笑っている。その様子を見てみんなでケタケタ笑い合った。お腹が痛くなるほど。
「さあ、そろそろ急ごうか。」
谷川君が班長らしくみんなを引っ張っていく。日はまだ明るいが、遠くに鳴くカラスがもう夕方になりそうだと告げているようだった。
夜はお待ちかねのキャンプファイヤー。それぞれの班が出し物を出し合う。クイズをやる班、ダンスをやる班、それぞれ盛り上がりをみせた。
いよいよわたしたちの班の番になった。わたしはトップバッターを自ら望んだ。いやなことは先に済ませておくタイプだからだ。マイクを片手に、わたしはある話をした。
『これはわたしの作り話と思って聞いてください。わたしの好きな人は、明るく笑う人です。いつもにこにこ楽しそうで、食べるのが好きだというのも納得の、食べる姿がかわいい人です。将来結婚したいほど好きです。…この世界ではない別の世界で、わたしたちは結婚しています。でも、その人には今別に好きな人がいるようです。また別の世界に戻ったら結婚しているし、その人と一生一緒に過ごせるからいいか、とも思うのですが、その人の過去も全部独り占めにしたいわたしもいます。わかってくれるかな。でも…とにかく、小さい頃のその人に出会えてよかった、そういう話です。』
周りがざわつくのがわかる。
「え、なに、怪談って、三神が不思議ちゃんってこと?」
隣にいた純平が言う。中身は大人でも、こんな話をするのは恥ずかしいし、やはり注目されることに慣れない。先生はパンパンと手を叩き何かを言っている。
「そういうことじゃなくて…、いや、そういうことかも。」
わたしは笑って純平に答えた。
「変な子。」
純平が小さく笑う。ふたりで並んで目の前の炎に目を向ける。虫の音色が暗闇に紛れるように遠くで聞こえ、オレンジ色に伸びる大きな炎は穏やかにその外炎を揺らしていた。
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
後宮の死体は語りかける
炭田おと
恋愛
辺境の小部族である嶺依(りょうい)は、偶然参内したときに、元康帝(げんこうてい)の謎かけを解いたことで、元康帝と、皇子俊煕(しゅんき)から目をかけられるようになる。
その後、後宮の宮殿の壁から、死体が発見されたので、嶺依と俊煕は協力して、女性がなぜ殺されたのか、調査をはじめる。
壁に埋められた女性は、何者なのか。
二人はそれを探るため、妃嬪達の闇に踏み込んでいく。
55話で完結します。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
うわさの行方
下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。
すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。
戦場から帰るまでは。
三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。
ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。
人質王女の恋
小ろく
恋愛
先の戦争で傷を負った王女ミシェルは顔に大きな痣が残ってしまい、ベールで隠し人目から隠れて過ごしていた。
数年後、隣国の裏切りで亡国の危機が訪れる。
それを救ったのは、今まで国交のなかった強大国ヒューブレイン。
両国の国交正常化まで、ミシェルを人質としてヒューブレインで預かることになる。
聡明で清楚なミシェルに、国王アスランは惹かれていく。ミシェルも誠実で美しいアスランに惹かれていくが、顔の痣がアスランへの想いを止める。
傷を持つ王女と一途な国王の恋の話。
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる