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しおりを挟む10年前、いきなりダンジョンなるものが出現し世界は困惑した。それでも、私にとってダンジョンやその関連は私の生活を変えることはなく、言うなればダンジョンはテレビの向こう側の世界であり、現実味がなかった。それが180度変わったのが7年前の悲劇である。
10年前に現れたダンジョンは世界に散らばって7つ。それが半年で21に増え、1年で49に増えた。日本にも富士の樹海に突如洋風の城が出現した。そこが富士ダンジョンへの入り口であった。半年後、神奈川県にある城跡と大阪にある城跡がダンジョン化した。半年毎に日本中の城跡がダンジョン化する中、まだ私の生活にダンジョンは入ってきていなかった。旦那と結婚して妊娠した時に初めて不安になった。東京初ダンジョンがよりにもよって日本の中心とでも言っていい城跡で、ものすごい騒ぎになり道路は常に自衛隊の車が走り、空にも自衛隊のヘリコプターが飛んでいたからだ。
自衛隊の方々がお城ダンジョンの対策にあたっているのは知ってはいたが、目の当たりにしたらすごく不安になった。東京内城跡と同時にダンジョン化した東京の有名なお寺の近くに私の両親が住んでいるのも不安を大きくした原因だった。不安な中でも無事に出産を終え初めての子育てで日があっという間に過ぎる中、それは起こった。
両親宅近くのダンジョン化したお寺からモンスターが溢れだしたのだ。
城跡のダンジョンに比べて規模が小さく中のモンスター(のちに魔物という呼び方で統一)が弱かった為、対応を後回しにされていたらしい。そのニュースが速報で届いた時は日曜で旦那と私は両親宅から少し離れた当時住んでいたアパートにいた。私は両親が心配で危ないからと止める旦那を説得して両親の元に行こうとした。一応自衛として旦那の草野球用の金属バットを車に積んで。
だけど、両親の元には行けなかった。なぜなら車で両親宅まで後5分という所までラットが溢れかえっていたから。車で旦那がラットを轢き殺した瞬間、旦那が呻いて動きを止めた。私はとにかく親のところに行かなきゃとパニックになっていて車から降りてしまった。そこにラットが襲ってきた。旦那も車から降りてきて子供を危ない目に合わせるつもりかと怒鳴られた。手に金属バットを握らされ車にたかろうとしているラットを叩けと言われた。子供を守る為に無我夢中で全長20センチ程のラットを殴って踏んだ。その瞬間、【レベルが上がりました】【スキル無音を獲得しました】という音声が聞こえた。体も熱くなった様な気もするが、それどころではなく車からラットを追い払うのに夢中だった。旦那が運転席側から助手席を開け、乗れと叫んだ。私は転がるように車に乗り車が発進した。
ひたすら車を走らせて東京を抜け隣の県に入った辺りでラジオの速報で大型のモンスターがダンジョンから出てきて暴れまわってダンジョン近くの家を壊していることを聞いた。
その辺のホテルにチェックインをしテレビにかじりついて状況を見守っていたが、数日後ミサイルを使われた時点でテレビを見るのをやめた。
同時期に他の国々でも同じような事が起こりたくさんの悲劇があった。そんな中、どこかの国のトップの方の探索者か軍人かが、スタンピードを起こさない為にはダンジョン内の魔物の間引きが必要で間引きを適切にしていればスタンピードが起きないと発表した。低階層の魔物を駆逐するだけでも効果はあるとし、実際に人海戦術で5層あたりまで魔物を間引くとダンジョンから魔物が溢れだす現象がピタリと止まった。そこから早急に国際連合探索者機関(UNSO)なるものが立ち上げられ世界共通の決まりごと、各国の法律が整えられていった。
更にその後の調査では、ダンジョンにはマザーダンジョンなるものがあり、そのダンジョンを踏破し最深部で裏ボスをやってるマザーを倒さない限りこの世からダンジョンが消え去る事はないらしいことが分かった。
今も増え続けるダンジョンはすでにマザーの子ダンジョンではなく、孫でもひ孫でもない。子の子の子の子である。やしゃごダンジョンには力はない。深くても15層~20層ぐらいまでしか層はない。が、とにかく数が多い。日本では国や都道府県、各自治体が雇用している強力な探索者がやしゃごダンジョンを潰して回ってはいる。しかし、半年に1回ダンジョン数は増える。その為、国では一般探索者を募っており、年々一般探索者に対してのバックアップや補償制度は手厚くなってきている。
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