例え変なオバサンと呼ばれようとも

もずく

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私が今いるダンジョンは今住んでいる区が管理している管理ダンジョンである。しかも、最深が10層までしかなく超初級ダンジョンである。入り口も無人の自動改札機で管理しているような底辺のダンジョン。このダンジョンを利用している人は探索者になりたての人か、近くの中級ダンジョンに飽きた人が口直しではないが、そんなかんじで潜りにくるようなダンジョンである。


人が少なく無人の自動改札があるこのダンジョンは私には都合が良かった。中級ダンジョン用の広い駐車場もこのダンジョンに対応しており、ダンジョンに入ったことを探索者カードで読み込ませるだけで駐車場代がタダになるのだ。


駐車場。そう私は車を持っている。しかも、魔道車だ。先週した長男との会話を思い出す。


「そんなにお金がない、お金がないって言うなら車を売ればいいじゃん。」


「車は売れないよ。何かあった時に車がないと、あなた達を連れて逃げられないでしょ?この車は防御力っていう守る力が強いスゴい車なんだよ?」


「嘘だ。パパが大好きな車だから売らないんでしょ!みーにそう言ってたってみーから聞いたんだから。でも、パパいつも言ってたじゃん?俺に何かあった時は車を売って何とかしてくれ!って。パパ、車を売っても許してくれるよ。」


普段からお金ないない言い過ぎたのか。いや、実際まじでヤバいくらいになかったんだけど、長男がお金に対してすごく心配性になってしまった。小学2年生の長男はものすごくいい子である。おやつを買ってなんてわがままはまず言わないし、ジュースを買ってとかも言わなくて、水道水が1番美味しいよねーとか言っている。こちらに気を使っているのが丸わかりでそんな思いをさせている事に心がギューっとしめつけられる。


車は4年前に新車一括で買った魔道車で今売っても1年以上裕福に生活出来るお金にはなると思う。しかし、やはり7年前のことが私に根強いトラウマを残しているし、旦那のことで輪をかけて何が起きるかわからないという気持ちを強くしている。


だから、何かあった時の足の確保として残しておきたい。もちろん車があった方が便利だし、それに本当に防御力が高いのだ。ダンジョンの中層で最も防御力が高いと言われる魔物、グレートカブトの羽と鋼を車製造スキルで混ぜ合わせた材料で作った魔道車はダンジョン中層の魔物数匹と体当たりをしても車体に傷はつかないことが証明されている。(ダンジョン内に車体部品をバラバラに持ち込んでダンジョン内で組み立てて中層の魔物と戦っているPR動画は旦那と何回も見てしまった。結局はそんな思い出のせいでお金がなくても売れないのかも知れない。)





スライムを電動草刈り機で魔石に変えながら集中しなくてはいけないのにつらつらと今までのことを考えてしまっていた。


魔物は大きな音に寄ってくる習性があるがスキルのおかげで草刈り機も音を出すことはなく、1匹1匹と等間隔で遭遇している。スライム討伐は慣れてしまい簡単な作業と化している。


ダンジョンに入ったのは8回目。最初のド緊張はどこかへ行き、考え事が出来る余裕も出てきてしまった。それではいかんと首を降ってダンジョンに集中する。


集中はしたが、すぐに帰らないといけない時間になったので小部屋のセーフゾーンまで戻り、そこで草刈り機の先端部分を高枝バサミに組み換えた。高枝バサミでスライムを倒すことも出来るが草刈り機の方が一瞬で済むのだ。何も武器を持っていないと不審に思われそうだし音がうるさい物を武器とするのも推奨されていない。周りに人がいないかを気にしながら無人の改札機まで急ぐ。


自動改札機手前の魔石自動交換機付近にも人がいないのを確認してさっとスライムの魔石をじゃらじゃら~と魔石導入口に入れ、お金が出てくるのを待つ。今日の売り上げはスライム28匹討伐で2800円。やっぱり2時間ちょっとで音でおびき寄せることもなければこんなものである。探索者カードに入金することもできるけれど、私は現金が欲しいので2800円が出てくるのを大人しく待った。出てきた金額は3000円。草刈り機で瞬殺していたので気づかなかったが今日も1匹レア個体を倒していたようだ。スライム1匹の魔石は100円。レア個体だとその3倍の売値。魔石300円のグリーンキャタピラーが出る3層を狩り場にすれば収入はぐんと上がるのかもしれないけど、時間は限られているし大きな荷物を抱えている(物理的に)私は安全面からいってもチマチマ稼ぐしかないのが現状である。











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