結紀のショートショート集

結紀

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雨のち、お天気雨

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パタパタッ。
雨の香りと音がしてきた。

これはかなり降られそうな予感がする。
ザーッ!それ見たことか。
幾ばくもせぬ内に雨はザーッザーッと降り出した。
さてさて、私は潜り込んだこの軒下からいつ出られるだろうか。
足元を見やると丸まった黒猫がにゃおんとひとつ鳴いた。

どうやら先客がいたらしい。
おや、お前も雨宿りかい?と尋ねると、黒猫からジロリとひと睨み利かされた。
野暮な事を聞いてしまったな。
これ以上黒猫の機嫌を損ねぬ様に、ジッと軒下で雨が上がるのを待った。
よく見ると黒猫の後ろには小さな黒猫がもう一匹いた。

同じ黒だから色が溶け込んでいてよく分からなかった。その小さな方の黒猫はどうやら寒さに震えている様に見えた。
大きな黒猫は小さな黒猫を元気付けるかの様に優しくペシペシと尻尾で撫で付けていた。
私は少しばかし思案し、自分の羽織を脱いでそっと大きな黒猫の横に置いた。

羽織にはまだ人肌の温もりが残っていた。
これを良かったら使いな。
そう、私は黒猫に話しかけた。
黒猫はまたもジロリと私を睨みつけた。
そうか、ここに私が居たらきっと使ってくれないな。
そう思った私は、まだザンザンとした雨の中へと飛び出して行った。
それ!使ってくれよなー!

黒猫は低くにゃおんとひとつ鳴いた。
ザンザンとした雨の中を転ばぬ様に駆けていく。
途中泥に足を取られながらも家路を急いだ。ようやく家が見えて来た頃、空は雨が降りながらも晴れ間が差してきた。
ほ、これは狐の嫁入りみたいだな。
とするならあの黒猫に渡した羽織は白無垢かい?

ふふ、と冗談の様に笑いながら。
私はただいま。
と家に着いたのだった。

おや、ちょっと見てご覧。
こんな所に羽織に包まった二匹の黒猫が居るよ。
ぬくぬくと温かそうにして寝てるじゃないか。
まだ雨は続いてるけど晴れ間は出て来てそろそろ雨も上がりそうかね。
二匹の黒猫は静かに夢を見ていた。
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