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初めまして、魔界の皆様。

.2 こんにちは異世界、さよなら平凡。

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バグり散らかしたテーブルノイズゲートに入ってそのまま魔界への転送が完了し、バグり散らかしたゲートは一瞬にして閉じた。
もちろん落下系のゲートだったので俺は尻もちをついた。

ドッ

「あ゙だッ!」

「あっ、ごめん!落下系のゲートって伝えてなかった!」

「ディーナってば…まーた説明抜けしたな?」

「うぅ…また怒られちゃうよぉ~!」

「大丈夫ですよ。出入りの仕方が分かれば後は普通に着地できますので。」

「そう言ってくれるととても嬉しいよぉ~!」

「あまりディーナを甘やかすとダメな子になるからやりすぎないようにね?」

「ごめんなさい甘やかすタイプなんです俺。」

「一番ダメにさせちゃうタイプだった!!」

三人でわちゃわちゃしていたところに聞き慣れた足音が一つ聞こえてきた。とても焦っていてこちらへ走ってくるような足音だった。

ダタッダタッ

「ん?馬さんの走る音が聞こえますね。」

「馬…?あ、馬人族・・・かも知れない!」

例の場所・・・・に近いからね。ディーナはまだ現物を見たことないんだったか?」

「うん、まだ話だけしか聞いたことないよ。」

「ディーナ!ジフィル!来てくれたのか!」

「ダズモス、状況はどうなってる?」

「それが…奴のせいで負傷者が増えすぎて種族が絶滅する!休憩すらもさせてもらえないし、殺めるにも失敗続きな上に見つかって他の者達が捕まったりで深刻な状態なんd…ってソイツはなんだ?現界人か!?」

「あ、ども…。」

「何故現界人を連れて来た!!?現段階でこの状況なのにどうしてなんだ!!」

馬人族の男性 ダズモスさんという人は俺に弓矢を向けた。
まぁ…その状況になってしまえばそりゃその反応になってしまうのもおかしくもないし、同じ立場になったら俺も多分同じことをしてしまうだろうと感じた。
俺は無抵抗で表情は変わらずにいたが、彼の話を聞いて気持ちはとても痛感した。

「待ってダズモス!彼女…じゃなかった!彼は本当に味方なの!今、ジフィルに例の場所に連れて行くところだったの!」

「だとしてもだ!!現界人は信用ならんし生かしてはおけん!!今ここで殺らなければ俺達は全滅する!!」

「だ、ダズモス落ち着いてくれ!彼は無抵抗なんだ!助けを求めたのは俺達なんだよ!」

「だったら今ここで反撃するかしないか確かめてもらおうか!!」

「そんなことしたら私達の努力が無駄になr」

パシュッ!!

「長門君!!」

「あれま。」

ドズッ

「ちょッ…!!?」

「ダズモス…あんたァ…!!!いくら私達と友達だったとしてもこんなこと…許さないよ…!!!」

彼の放った矢は至近距離で放たれ、俺の胸元を射った。
俺は何が起きたのかも理解はしているものの、動こうとはしなかった。反撃するつもりもないし、彼の悲しみや悔しい気持ちが籠った怒りの一矢いっしをそのまま受け止めた。
普通に痛いけど。

「…ふん。現界人の言葉なんざ信じられん。」

「きしゃああああああああッッッッ!!!!」

「ディーナ…お前やはり現界人側についたのか!!」

ディーナさんは怒りのあまり、我を忘れかけていた。
彼女達の努力を踏みにじられたという気持ちが強く、爪と牙がとても鋭くなり、彼に襲いかかろうとしていた。
その気持ちも分かるが、俺は彼の気持ちの方もとても痛いと感じているからどっちにしろ俺は二人の気持ちを分からなきゃいけないと俺は思う。

「はーい落ち着きましょーねディーナさん。」

「にゃッ!!?にゃがとちゃん!?」

「彼の気持ちはしっかり受け止めました。この一発はその例の場所とやらにいる現界人に一撃をぶち込んでやりますから。」

「お前…俺に反撃しないのか…?」

「反撃するも何も…そんなことしませんよ。現界人の俺から謝罪します。全く赤の他人ですが、その現界人は俺がしっかりシバき倒しておきます。」

「…その言葉、本物かどうか見させてもらおうか。」

「ジフィルさん。」

「な、なんでしょうか長門君ッ!!」

「案内お願いしてもらっても?」

「あ、うん。案内するよ。」

ジフィルさんに付いて来て、その例の場所とやらに向かった。
俺はその現場に着いた瞬間にとてつもない光景を目の当たりにした。
事態は深刻以上に深刻で、見ているのも辛すぎる光景だった。

「…へぇ、そういうことか。」

バシィン!!

「オラァ!!とっとと動けェ!!休んでいる暇はねェぞコラァ!!」

「ぐっ…!!」

ドタッ

「何倒れてンだテメェ!さっさと起きて働けやゴラァ!!」

ドカッ!

「あなた!!」

ダタッ

「も、もうやめてください…!夫を休ませてください!!」

「女ァ…お前も俺様に歯向かうつもりかァ…?」

ジフィルさんによると、魔界に生成される一つの鉱石は俺達の住む世界では金として変換される。暴力を振るっている現界人の奴はそれに気づいて只管ひたすらに働かせていたのだ。
俺達の住む世界にしか存在しない鉱石に変換されるって普通に凄いと思うが、魔界の鉱石そのものを変換せずに持ち込むことは不可能とのことだ。まぁそりゃそうよね。

「あの馬人の方が危ないな。見るからに脚が折れているし、あのまま放置されたままにすると感染症や壊死を引き起こして死に至る。すぐにシバき倒すので待機していてください。」

タンッ

「でぃ、ディーナ…。」

「何。」

「先程はすまなかった。彼にも後ほど謝罪をせねば…。ジフィルも迷惑をかけてしまってすまない。」

「ふふん、分かってくれたらいいよ。あとは拝見といきますか!」

「あっ…一番大事なこと言ってなかった!!」

「「え??」」

「奴は魔法を使う・・・・・んだった…!!」

「ジフィル、なんでそれすっぽかすの?!」

「大事なことすっかり忘れてたあああああああ!!!」

カサカサカサカサ…

奴が魔法を使うことを伝え忘れていたが、俺はそれを気にせずそのまま黒光りの蟲ちゃんの如くカサカサと這い回って近づいた。
もちろん俺の存在に気づかないで二人に夢中になっていたからとても助かる。俺のやり口は簡単で、気配を消したまま背後から全力で後頭部を蹴り倒すという姑息なやり方です。

「あいつの後頭部にロックオン…隙だらけだな。」

「女もろとも公開処刑してやるよおおおおおお!!!」

「…シッ!!!」

ドゴッ!!

「がっ…!!?」

「ふぃ~タイミングがズレていたら危なかったなぁ…。後頭部クリーンヒット。」

「げ、現界人…!?」

「あー…説明はあとで。皆さんは避難をするようnって出来ねーようにされてンなクソが。」

「テんメェ…どっから来やがったあああ!!」

俺を睨み、戦闘態勢に入った。
どうやら同じ日本人だ。
私利私欲の為に他の種族を利用して自身だけが得するやり口は俺にとって吐き気を催すレベルだ。

「んー…コイツ、魔法使ってンなぁ…。人間の肉じゃない硬さをしてる。」

「《火の拳骨ファイアフィスト》おぉぉ!!」

「おー、ダッサイネーミングセンス。初級レベルの魔法かよってくらいだ。ならばこちらも独学で筋肉を自在に動かすことができたから編み出した技を見せてやるか。てか、動きが大きすぎだし分かりやすいなコイツぅ!!」

ペシッ

「…は!?」

ガシッ

「ゔぐッ!?」

「首を打ち込まれた・・・・・・ことってある?」

ギリギリギリギリ…

「へっ…何を言ってン…だか…ッ!!両腕が…塞がってちゃあ…殴れねェ…だろうよ……!!」

「《首打ちパイルバンカー》」

ドズンッ!!!

「ごぽぁっ…!!?」

奴はそのまま白目を剥いて痙攣を引き起こした。
まだ死んではいないが、エグい仕打ちを受けることとなるだろう。
殺人者としてはいたくもないので、俺は奴を瀕死状態で元の世界へ送り返して不法行為をかましていたことをしっかりと証拠として残す為の鉱石の数を送り込むつもりです。

「さーてと、捕獲完了っと…。ディーナさーん!終わりましたー!」

「早くない!?」

「何が起きたんだ?!」

「あの現界人…一体何者なんだ…?」

俺は負傷者の元へ近づき、警戒されながらも疲弊していた人の元へ近寄った。

「な、何をするつもり…!?」

「妻を殺すなら俺を殺してからにしろ現界人…!!」

「よーいしょっと…ふむふむ…。疲労骨折に複数の擦り傷と切り傷からの出血の確認、このままだと感染症を引き起こすか…。馬人族の男性の方達の平均体重は馬さんの平均体重の470kgよりも少し重めだから、まずは俺一人で肩を貸したところで身長差で彼に余計な負担をかけてしまうな…。誰か怪我していない方がいれば協力をお願いできますか?」

「お、おい現界人…あんたは何をしようと…?!助けなんかいらないぞ!!」

「まぁまぁ落ち着いてください。このままだとあなたは起き上がることができなくなります。」

「!?」

「奴にやられた怪我により傷口から出血はもちろん、そこから菌が入り込んで最悪な場合、そこから感染症や皮膚の壊死などを引き起こします。応急処置ですが、少しだけでも悪い方向にいかないように時間を遅らせながらできるだけ早く治せるようにしておきます。まずは汚れを落とすことから始めなければ上手く始まらないものなので…。」

「……あんた、医者か何かなのか…?」

「雑学をほんの少し・・・・・だけ齧った程度なのであまり期待はしないでくだせぇ。そう言えばお名前聞いても大丈夫ですか…?」

「…レンデムだ。」

「レンデムさん、お仲間さんのお力を借りてほんの一瞬だけ楽な体勢に変えられますか?」

「あ、あぁ…上手くやってみる。」

彼を楽な体勢にするのは中々困難だと思う。
それは俺が一人であればの話だ。
幸い、まだ余力がある馬人族の人達がいてくれたからよかったのだが、俺だけだったらかなり時間をかけてしまうどころか、進捗がないまま終わってしまうところだった。

「ほんの応急処置でしかありませんが、少しだけ頑張ってください。ジフィルさん、魔女さんを呼んでいただけますか?彼らの傷を治すのは俺の力ではまず難しいのです。」

「あぁ、すぐに呼んで引きずり出して・・・・・・・来る!」

 (引きずり出す????)

ジフィルさんはゲートを開き、すぐに魔女さんのところへ向かった。
ディーナさんにはお水を持って来てもらうようにお願いしたところ、秒で持って来てくれました。早くない?

「レンデムさん、お水で汚れを落としますので少し耐えられますか?」

「あぁ…これくらいは耐えてみせるさ。」

「長門ちゃん、何か手伝うよ?」

「俺にも手伝わせてくれ。先程の無礼と礼を申し上げたい。」

「お礼はあとで大丈夫ですよ。今はとりあえず…他の負傷者の方々が居ますので、楽な体勢にしていただくようにお願いできますか?」

「かしこま!!」

「了解!」

「ついでにできるなら汚れを落とせたら落とすようにお願いします。」

魔女さんが来るまでせっせこと負傷した馬人族の方々の応急処置を順調に進めた。問題はそんなに起こらなかったが、唯一の問題が起きたとするならば…。

ドズッ

「…ごぷっ。」

「え…?」

「長門ちゃん!!?」

「いやぁ~普通のロープだから上手く焼き切れたわぁ~!!テメェ、よくもこの俺をコケにしたなぁ!!?このままテメェを焼き殺してやるから動くんじゃねぇぞ!!」

どうやら魔法でロープを焼き切ったようで、敵の現界人の腕は俺の体を貫通していた。
普通に致命傷を負ってしまったのだが、この時の俺は何故か落ち着いていたのだ。怖すぎるわ。
ちなみにキレました。

「はぁ…もうキレた。《骨外しジョイント・リムーブ》」

ゴキゴキゴキッ!!

「あ?何の音だ?」

「俺の腕と肩の骨を外した音だ。」

「バカだコイツ!骨を外して何ができる!!さっきは何の魔法を使ったのか知らねぇが、この俺をナメんじゃねぇぞ!!」

「悪いな、俺は筋肉を│自在に操れる《・・・・・・》んだ。」

ガシッ

「…え?はあああああ!?!?」

「生け捕り、強制送還は不可能と見た。ここで貴様を即座に殺す。」

「伸びきった腕でどうやってやろうとしているんだか知らねぇが、俺がテメェをそのまま焼き殺す!!死ねえええええ!!」

「勝手に言ってろ。《首螺ボルトスピン》」

ぐりゅんッ

「ぷぁっ??」

グキッボキボキボキッ!!!

キレ散らかした俺は痛覚をガン無視し、距離を少しでも伸ばす為に骨を外して筋肉のみで奴の首を両手で鷲掴み、力いっぱい回した。
めちゃくちゃ生々しい音で少し気持ち悪くなりました助けてください。あ、通常時の俺はグロいのはゲームやアニメくらいしか見られないが、なんかヤバいレベルでグロすぎるアニメは特に見られません。トラウマになります。

「はぁ…。クッッッッッッッッ…ソ痛てえええええええええ!!!!!お腹痛ええええええええ!!!」

「お、おい…!俺達よりも致命傷じゃねーか!!誰か手当てできる奴がいたらしてくれ!俺達の恩人を死なせてはいけないぞ!!」

「魔法は使えないけれど止血なら任せて!」

ディーナさんはとても素早い動きで止血をしてくれた。
痛みはあるけれど、俺がとんでもない間抜け面をするくらいに凄く早かった。猫魔族の特徴なのか分からないけれども、その素早さをこういったことにも上手く使い分けているのは凄く起用だと感じた。
教えてもらいたいです。

「痛ってぇ…あんの野郎、潔く諦めてほしかったわ…。それなら死なずに済んで俺達の世界に送り付けて牢獄へぶち込むことができたのにさぁ…!」

「ごめん長門君!やっと来たy何その怪我ァ!?」

「あ、ジフィルさん。」

「私としたことが…新たな現界人さん、初めまして。自己紹介する前にすぐにその傷と負傷者達の傷を治すわね?」

優しい光を放ち、気がつけば傷口が塞がっていた。
応急処置済みの負傷者達全員も既に回復していた。
こういった範囲系魔法って相当な魔力や力を消費するのに、どのようなことをしていたらこんな早さで回復するのか気になったが、先に自己紹介を聞かなきゃと気づいた。

「えっと…貴方は?」

「あの人が私とジフィルを遣いにしてくれた魔女 *****っていうの!」

「…うん?ディーナさん、もう一度魔女さんの名前をお願いしても…?」

「*****って言ってるよ?」

「…ふむ、俺本人にはまだ許可されていない・・・・・・・・ようですな。」

「どういうこと?」

「ディーナ、大丈夫よ。これは私の仕業・・・・だから。というか、この子の察しがあまりにも良すぎないかしら?」

「とりあえずはアレですか。複数匹いる現界人を潰しながら魔界の運営をしたらいいってことですか?」

「そういうことだけど…まずは私の家に行かなきゃね。それと馬人族達は元の居場所に移動できるようにゲートを作っておくわね。」

「毎回助けてもらってすまない、今回も助かったよ。それと…そこの君も本当にありがとう。」

「あ、いや俺は別にお礼をされるようなことは…。」

「いいんだ。俺が礼を言いたいのだ。それに、先程の謝罪もまだしていなかったから…本当にすまなかった!」

「大丈夫ですよ。お仲間さん達が助かったならそれで俺は満足ですし、さっきのことは気にしてないですよ。思いもしっかり受け取ることができましたし(物理的に)」

「今すぐにでも私達の故郷で歓迎したいところなのだが…。」

「そ、そんなに大きくしなくても…。」

「長門ちゃん、そこは受け入れてあげた方が得なんだよっ!」

 (うーん…違う世界から来た人間な上に奴らと同じ種族だから迷惑をかけてしまわないか心配なんだよなぁ…。これ以上否定してしまったら面倒な奴だと思われちゃうし…これはアレだ。距離感を保ちながらがいいな。)

ダズモスさんはどうしてもお礼をしたくてしょうがないみたいで、準備をしておくから魔女さんとの用事を済ませてからで大丈夫とのこと。俺に降りかかったものは幸か不幸か…それは俺本人にしか分からない結果であり、運命を左右するものだった。
そもそも、俺の日常生活はどうなるの??
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