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しおりを挟む冒険者ギルド本部に着いたのは2時くらいだった。すぐに依頼ボードを確認し、一角グマ、一角ウサギ、一角ギツネ、一角狼の依頼票を外す。
他にも山菜やハーブの依頼票も内容を確認して15枚外すと、依頼受付窓口へと持って行く。空いている窓口は厳つい男性職員だった。
「すいません。私の相棒が大物を倒してしまいまして、推奨ランクを超えてるんですが依頼の受付をお願いします。」
そう声をかけて依頼票と冒険者タグをカウンターに置く。
「一角グマなんて本当に間違いなく狩って来てるんだな?ちゃんと納品できなかったら依頼失敗扱いでペナルティがつくぞ。大丈夫か?」
男性職員が心配そうな顔で俺を見る。
「今収納に入れてあるのですが、確認が必要ならここで出しましょうか?」
と尋ねる。確かに俺みたいな小僧っ子がこんな依頼を持ってきたら心配になるよね。
男性職員はウォルターを見て頷く。
「その魔獣が一緒に狩りをしたなら大丈夫か。分かった。受けてやるよ。」
そう言って次々と冒険者タグに依頼書を乗せて墨で擦り、横に判子を押した。
「この依頼書と納品物を一緒に納品倉庫へ持って行ってくれ。北門の所にある大きな石造りの倉庫だ。冒険者ギルド納品場と大きな看板が掲げられているからすぐに分かるはずだ。
納品物を確認して問題なければ納品場の担当者が依頼書にサインをくれるから、それを持って報酬支払窓口へ行け。報酬が支払われる。
今度は先に依頼を受けてから出かけるように気をつけろ。そうすりゃ森から戻ったらそのまま納品倉庫へ立ち寄れるからな。」
親切にアドバイスしてくれた。でも、特定の獲物を狙ってる訳じゃ無いからどうしようもないのよね。
「分かりました。明日からは気をつけます。それでは納品に行ってきます。」
そう言って一礼し、冒険者ギルドを出てウォルターの背に乗り、納品場へ向かった。
納品場は商業ギルドと同じくらい大きな建物だった。しかも周囲に大きな倉庫がいくつも並んでいる。デカいギルドは違うね。
俺はウォルターに乗ったまま納品場へ向かう。まだ他の冒険者たちは来ていないようで、いくつもあるカウンターはどこも書類整理をしていた。カウンターの後ろの壁には常設依頼が出ている獲物と採取物の名前、納品単位、報酬金額が書かれた木札が掛けられていた。
「すいません。依頼書が上がっていた納品物を持ってきたのですが、受け付けていただけますか?」
一番近いカウンターに座っていた女性の獣人さんに声をかける。狼か犬の獣人なんだろう。尖った耳が頭上にあり、お尻からは尻尾が生えているが、それ以外は人間と同じで顔や身体に獣毛が生えている訳ではない。ああ、そのケモミミと尻尾に触ってみたい。
獣人のお嬢さんはウォルターを見て一瞬びくりと震え身を硬くしたが、すぐに我に返って笑顔になった。
「かしこまりました。ではまず冒険者タグと依頼書をお願いします。」
お嬢さんに言われた通りタグと依頼書を渡す。
「ずいぶん沢山受けられたんですね。それではまず採取依頼から確認しますのでカウンターに載せてください。」
お嬢さんがカウンターに依頼書とカゴを並べて言ったので、指示に従いカゴに依頼品を入れていく。どれも依頼書に書かれている5倍の量を出す。多い分は買い取ってくれるだろう。
「こ、こんなに?よくこんなに採れましたね。ちょっと待ってくださいね。主任!応援お願いします!」
獣人のお嬢さんがヘルプコールを出すと、今度はウサ耳のお姉さんがやって来た。リアルバニーガールじゃん。ちょっとドキドキする(笑)。
「大きな声を出してどうしたの、ってこれは大変ね。手伝うわ。」
ウサ耳お姉さんとイヌ耳お嬢さんが2人で依頼書と納品物を確認していく。依頼書の裏面に品質と納品数を記載し、サインして判子を押す。
「全て依頼書に書いてある納品数の5倍の量を納品してもらいましたので、上乗せ可能な依頼については複数件の依頼達成とし、できない依頼についての余剰分は常設依頼が出ている物については常設依頼として複数件の依頼達成として、それ以外は余剰分についてはギルドで買い取りになります。どの納品物も非常に品質が良いので、買い取り額を上乗せします。
次は狩りの獲物を確認させていただきます。あちらの解体台の横にある石畳を敷いてある場所にお出しください。」
ウサ耳お姉さんに言われたので俺はすぐに移動し、石畳の上に一角グマ、一角ウサギ、一角ギツネ、一角狼を次々と出していく。
一角グマは3頭、一角ウサギは23羽、一角ギツネは27匹、一角狼は17頭だった。
「・・・・・・」
ケモミミお姉さんズは目を丸くして獲物の山を見ていた。俺みたいな小僧っ子がこんなに沢山の獲物を持ち込んだらそりゃあ驚くよね。
「ん、んんっ!」
咳払いするとようやく我に返った。慌てて依頼書と獲物を確認していく。依頼書の裏面に品質や納品数を書き込んでいく。
一度カウンターに戻り、サインをし判子を押してウサ耳お姉さんが話しだす。
「一角グマについては単発依頼なので1頭で依頼達成となります。残る2頭はギルドで買い取りになります。
他の獲物については上乗せ可能な依頼については複数件の依頼達成とし、出来ない依頼で常設依頼が出ている依頼については、余剰分は常設依頼として依頼書に書かれた単位で割り切れる数だけ依頼達成数とします。それ以外と端数についてはギルドで買い取りになります。
こちらの依頼書と小切手を報酬支払窓口へお出しください。」
俺は依頼書と小切手を受け取り一礼する。
「お手数をおかけしました。ありがとうございました。」
そう言うと2人は笑顔を見せる。
「こちらこそ沢山納品していただいてありがとうございました。これからも頑張ってくださいね。」
「でも推奨ランクを大きく超えた獲物も多いです。狼さんが一緒だと言っても危険なことに変わりはありません。くれぐれも気をつけてくださいね。」
2人からそれぞれ声をかけられる。俺は笑顔で一礼し、ウォルターの背に跨りギルド本部へ向かった。
報酬支払窓口はまだ空いていた。
一番近い窓口に行くと、綺麗なプラチナブロンドのロングヘアのお姉さんが席に着いていた。
片目隠しはして無いけど、いつも片足だけニーハイソックスを履いているキャラにそっくりだ。もちろん胸の大きさもそっくりだ(笑)。
俺は冒険者証と依頼書の束をカウンターに出す。
「依頼完了の報告です。報酬の支払をお願いします。全額冒険者証に入金してください。」
そう声をかけると、依頼書の束と小切手を見てオロオロしだす。
「こ、こんなに沢山の依頼をこなされたのですね。お疲れ様です。ただいま確認いたしますので少々お待ちください。」
そう言って機械に冒険者証をセットし、依頼書の裏面を確認しながら操作していく。
10分程で入力が完了した。お姉さんは笑顔で冒険者証と藁半紙を渡してくれる。
「お待たせしました。本日のお支払い報酬は金貨437枚となっております。全額冒険者証に入金してあります。内訳はこちらの用紙でご確認ください。」
マジか。いきなり大金持ちじゃん。
冒険者証の裏面を見ると、「金456銀99銅80」と表示されてる。スゴイね。
内訳を見ると、一角グマの討伐報酬は金貨30、毛皮が金貨10、内臓が金貨6、肉が金貨2、角が金貨2、魔石が金貨5となっていた。討伐報酬は1頭分だけ、あとはそれぞれの買い取り金額だけだ。
他の獲物は肉が安い。銀貨10~20程度だ。食用にならない肉はそんなもんか。クマと比べれば小さいから肉の取れる量も少ないしね。
一角ウサギの肉が金貨1になってた。美味いのかな?毛皮はどの獲物も思ったより高くて金貨1~3ついている。防寒着として使うのかな?
ざっと見て納品数に間違いがない事を確認して席を立つ。
「ありがとうございました。冒険者証があって良かったです。こんな大金怖くて持ち歩けませんよ。」
そう言うとお姉さんが笑う。
「レギュラー級の冒険者さんでこんなに稼げる人はいませんからね。これからも頑張ってください。」
俺は一礼して窓口を離れる。
ウォルターと共に宿に戻り、フロントで鍵を受け取った時に夕食時にエールの小樽をつけてくれるように頼み、風呂に入って夕食までのんびりする。
食事が届いたのでエールを飲みながら味わう。
今日は俺もウォルターもイノシシがメインだった。俺は分厚いステーキを、ウォルターは新鮮な生肉と内臓を堪能する。
エールの小樽を空にし、火酒を一本空けて食事を終える。
余ったパンとフルーツを収納して食器類を片付けてワゴンに乗せて廊下に出し、寝室に向かい毛布をかぶってウォルターと一緒に床で寝た。
次の日からも森に入った。ウォルターには獲物を一角ウサギ、一角鹿、一角イノシシに絞ってもらう。肉の買取額が高いからだ。それぞれ20頭ずつを目安にしてもらった。
俺は採取をしながら近くに来た獲物を獲るスタイルだ。一角ウサギ、一角ギツネ、一角鹿など獲物を選ばずに狩っていく。銃も獲物によって使い分ける。
午後3時くらいまで森で過ごし、ギルドに納品して報酬を受け取る。毎日金貨400枚前後の稼ぎがあり、冒険者証に記録された残高はスゴい金額になっていた。
あまりにも納品数が多いと値崩れを起こすのではないか、と心配もしたが、それ以上に人口が多いので全く心配ないとの事だった。
森に入るようになってから4日目、報酬支払窓口に行くと、窓口のお姉さんが
「少々お待ちください。」
と言って後ろの席へと向かう。副ギルドマスターを呼びに行ったんだな。
すぐにヨセフさんがやって来た。
「タカさん、新しくモンスターテイマーになった方が明日の午後遅くに到着します。まずはご挨拶だけでもお願いしたいので、明日は宿で待機して貰えませんか?迎えの馬車を行かせますので。」
それは良いけど、新しくモンスターテイマーになった冒険者が冒険者ギルド本部に到着してから迎えの馬車を寄越したら、1時間くらい待たせる羽目になんないかな?疲れてるだろうに可哀想じゃん。
「それだと到着した冒険者を待たせてしまう事になりますよね?だったら午前中だけ森に入って、午後早めに納品してそのままギルドで待ってますよ。その方が手間がかからないでしょう?」
そう言うとヨセフさんがしきりに恐縮する。
「確かにそうですが、タカさんもお客様な訳ですから、こちらでお待たせするのもどうかとも思うのですが。」
そもそも本部まで呼びつけてるんだから、変な所で遠慮なんてしなきゃ良いのに(笑)。
「私は構いません。では明日は午前中だけ森に入り、午後早めに納品して、そこの食堂で遅い昼食を取りながら待たせてもらいます。よろしいですね?」
ヨセフさんに確認すると頭を下げられた。
「助かります。どうぞよろしくお願いします。」
これでようやく同じ職業の人と出会えるわけだ。楽しみだな。
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