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第二章
蓮花の憂鬱
しおりを挟む死にたい・・・・・・・
「紫苑さんに好きだと伝えてしまった。」
俺は今、猛烈に後悔している。
何であんな、八つ当たりのように思いを吐き出してしまったんだろう。
紫苑さんは、そんなことを思ったことは、一度もないと言っていたけれど、俺のあの告白を聞いて絶対めんどくさい奴だと思っただろう。
ああ、もう、カッコ悪い。
あんなの幼児のわがままではないか。
あんな告白では、振られてしまっても仕方がない。
紫苑さんは、考えてくれると言ってくれた。
時間が欲しいと。
そりゃあそうだ。
俺と彼女が出会ってから、まだひと月もたっていないのだから。
「返事はまだ、もらえなかった。でも……紫苑さんは、考えてくれると言ってくれた。俺のことをもっと知ろうとしてくれている。まだ、チャンスはある!」
そう思って、何とか気持ちを立て直そうとしたけれど、やっぱりなんだか落ち着かなくて、結局、俺は一睡もできないまま、朝を迎えた。
「・・・・・・・朝。」
俺は重い腰を上げて、制服に着替えた。
顔を洗うために洗面台へ行く。
鏡に映った俺はクマがくっきりと出ていて、血の気のない顔をしていた。
「ひどい顔・・・・こんな顔、とても紫苑さんに見せられません・・・」
俺は、昨日作った、親子丼の入った重箱を紫苑さんの家の前に置き、学校に、今日は休むと連絡した。
俺は、ずる休みというものを今日、初めてしてしまった。
夜、三か月ぶりだろうか、蓮玲姉上からメールが届いた。
《今日、蓮花の通っている高校から貴方が今日、学校を休んだと連絡が来ました。蓮花、体は大丈夫ですか?》
「蓮玲姉上・・・。」
俺は、胸の奥がジーンと熱くなった。
蓮玲姉上は、俺がたった一日休んだだけで、自分の体の心配をして、メールを送ってくれたのだ。
俺は急いで返信をした。
〚身体は何も問題はありません。ちょっと、今日、学校へ行きたくなかったので休みました。心配していただき、ありがとうございます。俺は平気です。〛
《そう。それはよかっ・・・・・って蓮花⁉学校に行きたくないって、まさか学校でいじめられてるんじゃ…⁈》
〚俺は別にいじめを受けて学校に行きたくなかったのではありません!皆さんには、とてもよくしてもらっています。〛
《では、今日なぜ蓮花は学校に行きたくなかったの?》
〚・・・・・・・・。〛
《蓮花?》
〚・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。〛
《姉上に言えないようなことなの?》
〚違います!〛
《ねえ、蓮花。ひさしぶりに姉上とお茶でもしましょう。明日の十時にいつものカフェで。》
〚はい!〛
スマホを持つ手が震える。
嬉しい。
明日、蓮玲姉上に会うことができるのだ。
姉上は仕事が忙しいようなので会いたくてもなかなか会うことができない。
姉上は俺の唯一の心を許せる家族だ。
姉上のほかにも俺には四人の兄がいるが、自分が物心つく頃にすでに四人とも独り立ちをしてしまったので、俺が、兄上にあった回数は・・・・三・・四回くらいだろうか。
ほぼ、他人のようなものだ。
だが、蓮玲姉上はよく、俺の遊び相手になってくれていた。
俺に料理を教えてくれたのも姉上だ。
同じ材料で料理をしたとしても、なぜか蓮玲姉上の作った料理は激マズ・・・・・いや、とても独特な味になったが。
だから俺は気付かなかった。明日、蓮玲姉上に、紫苑さんのことを話すことになることに。
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