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第三章
すれ違う
しおりを挟む――――盗み聞き――――
「ハア~~~。」
紫苑は大きなため息をついて自分のお気に入りのクッションに顔をうずめた。
高校から帰ってすぐに疲れが押し寄せてきた。
もう嫌だ
何で人生ってこんなにもうまくいかないの?
「どうしたの?紫苑ちゃん。そんな大きなため息をついて。」
妹の緑山稟玖(みどりやま ぴんく)が紫苑の部屋と稟玖の隙間を覗き込んで聞いてきた。
稟玖は稟玖の彼氏の田中希来里(たなか きらり)から誕生日プレゼントにもらったくまのぬいぐるみに顎を乗せていた。
紫苑は、立ち上がって冷蔵庫まで行き、牛乳を取り出して透明なコップに牛乳を注ぎ、一気に飲み干した。
「ぷっはぁぁ!!」
ダン!!
飲み終えたコップを机にたたきつける。
「し、紫苑ちゃん?」
「別れちゃった.....」
「・・・・・・・・・・・・・。」
紫苑は、その場でガン泣きしながら崩れ落ちる
「ううわわわわわわあわわわわわああああああああん!蓮花君と別れちゃったよぉ!」
稟玖はそれを聞いて、不思議そうな顔をした。
「蓮花君って、、、紫苑ちゃんが一週間前に付き合いし始めた子だよね。もう別れたの?紫苑ちゃん、蓮花君に振られた?」
「違う!」
「ふーん。じゃあ、紫苑ちゃんが蓮花君を振ったの?」
「う、うん、まあ、そうなるかな・・・・・・」
稟玖は意外そうな顔をして紫苑に聞いてきた。
「なんで?」
「え。」
「だから何でよ。紫苑ちゃん、滅茶苦茶イケメンな恋人ができたー、って、浮かれてたじゃん。しかも毎日美味しい愛妻弁当作ってきてくれるんでしょ。そんなにも愛されてるのに何が不満だったのかな~って、思ったから。」
「確かにそうなんだけど・・・」
「そうなんだけど?」
「なんか、疲れたっていうか、、、」
「?。あー、もしかしてアンチにぐちぐち言われた?それとも相手の愛が重すぎるとか?」
「うん。どっちもかな。」
「わぁお。」
「蓮花君がクラスのみんなに紫苑と恋人だって言っちゃったから、黒川ファンクラブの当たりが紫苑に来ちゃってね。蓮花君は、紫苑が嫌味を言われているの全然気づいてくれないし…蓮花君は自分の気に入らないことを言われたらみんなの前で血の気のない顔で泣いてわめいて笑い転げるし・・・・・・・・・・・・・。」
紫苑の話を聞いて稟玖は手をたたいた
「なるほど!いくら蓮花君がイケメンで紫苑ちゃんのタイプだとしても、中身がダメ人間だったから別れたってわけね!」
「そーゆ―こと!それに蓮花君とは本当に付き合っていたわけでもないしね。『恋人という名の友達』、だったわけだし。」
「なに、そのめんどくさい設定。そのややこしい関係が今回のことにつながったんじゃない?」
「そう・・・・そうかもしれないね。」
ピンポーン!
家のインターフォンが鳴った。
誰か宅急便でも頼んだのだろうか。
紫苑は、慌ててコートをサッと着て玄関に向かう。
ドアを開けたら
「れ、蓮花君!?ど、どうしたの?」
………………………………………………………………………………
俺は家に着いたら、すぐに家にある材料を使ってお菓子作りを始めた。
俺は料理をしているときは落ち着いていられる。冷静でいられるのだ。
ボウルを出し、中に卵の黄身を入れる。
白砂糖を入れる。
中身が白っぽくなるまで混ぜ、牛乳を入れ、混ぜる。
小麦粉をふるい、ふんわりと優しく混ぜる・・・・・・・
「しまった・・・・・正気を失っていた。」
何で、紫苑さんの前であんな醜態をさらしてしまったんだろう。
正気を失っていたとしか思えない・・・・
いや、失っていた。
ボウルを600ワットの電子レンジに入れ、三十秒チンする。
三十秒たったら、急いで中身を混ぜ、さらに一分チン!
一分たったら、急いで中身を混ぜ、バニラビーンズ少々入れて混ぜる。
ああ、嫌だ。
紫苑さんと恋人でなくなってしまうなんて!
まあ、もともと『恋人という名の友達』、だったのだが。
何とかより戻せないだろうか、出来れば本当の恋人に。
出来上がったカスタードクリームを平たいさらに移し、ラップして冷蔵庫に入れ、冷ます。
カスタードクリームを作ったボウルをサッと洗い、卵を入れる。
レンジでチンしたバターもボウルに入れ、混ぜる。
……………………………………………………………………………………
…………二時間後…………
「シュークリーム、作りすぎてしまった、、、。」
紫苑さんにおすそ分けをしに行こうかな
……でも、行っていいのかな?
いいよね⁈
ただの友達でも、おすそ分けぐらいしても・・・・・・良い、のだろうか。
「っつ!」
紫苑さんが幸せそうな顔をして俺の作ったシュークリームを頬張る様が目に浮かんだ。
そうだ、彼女はおいしい食べ物を食べることが好きなのだ。
このシュークリームを食べてもらえば、コロッと都合の悪いことを忘れてくれるかもしれない。
そうでなくても、胃袋をつかまれてくれるかもしれない!
俺はすぐさまシュークリームを持って、家を出た。
ほんのひとつまみ程度の俺の醜い期待とともに。
紫苑さんの家の前につくと、紫苑さんと誰かの話し声が家から漏れて聞こえてきた。
案外ココのマンションの壁は薄いようだ。
俺も次から外へ声が漏れないように気を付けよう。
良くないことだとわかっていながらも、ついつい聞き耳を立ててしまうのはどうしてだろう。
『なに、そのめんどくさい設定。そのややこしい関係が今回のことにつながったんじゃない?』
『そう・・・・かもしれないね。』
?
そのややこしい設定とは何のことだ?
難しい遊びでもしているのだろうか。
入れてほしいとお願いをしたら俺も遊びに参加できるだろうか
いやいや、だめだ。
そんなこと聞いてしまったら、紫苑さんに盗み聞きをしていたことがばれてしまう。
俺は勇気を出してインターホンを押した。
ピンポーン!
誰かが急いでこっちにくる…
ガチャ!
ドアが開き、紫苑さんが出てきた。
「れ、蓮花君!?ど、そうしたの?」
「あの、、、、シュークリームを作りすぎてしまったので、おすそ分けに、、、、」
「シュークリーム?!嬉しい!紫苑、シュークリーム大好きなの!ありがとう!」
「い、いえ、、、」
シュークリーム、紫苑さんに喜んでもらえて良かった。
紫苑さんは、俺に対して普通に接してくれていた。
それがとても、俺にとってうれしかった。
『なに、そのめんどくさい設定。そのややこしい関係が今回のことにつながったんじゃない?』
なぜだろう…・
紫苑さんじゃないほうの女の人が言った言葉がさっきから俺の頭の中でループしている…
いやな感じだ。
「どうしたの?蓮花君。体調悪い?」
「いえ・・・・少し考え事を…」
しまった、顔に出ていたか。
紫苑さんの前では、変なところは見せたくないのに…
ああ、何でいつもこうなんだろう!
その後、俺は割り切れない思いのまま、家のベットに突っ伏してそのまま眠った。
――――『何でそんなことするの、蓮花君。』――――
「昨日、蓮花君、苦しそうな顔をしてたな。・・・・そんなにショックだったのかな、恋人やめたこと。」
紫苑は、少し、罪悪感にさいなまれながら、階段を下りていた。
次の授業はグラウンドで長距離走だ。
紫苑は、体を動かすことは嫌いだ。
疲れるからだ。
だから、普段の授業の倍疲れる長距離走はもっと嫌いだ。
「はあ」
走りたくないな・・・・・・
ドンっ
誰かに後ろから背中を強く押された
「うわっつ!」
落ちる
階段から
落ちる
頭から
落ちる!!!!
私は痛みを覚悟してぎゅっと目をつぶった
ぼすっ
・・・・・・・・・・・?
痛くない
何で?
「大丈夫かい?紫苑君。」
紫苑の下からカエアンの声が聞こえてきた。
どうやら紫苑はカエアンのことを下敷きにしてしまったらしい
「ご、ごめんね!」
「僕は平気さ!紫苑君は怪我とかだいじょいぶかい?」
「う、うん。確か紫苑、後ろから、背中強く押されて、、、」
誰がそんなひどいことをことをしたんだろう・・・・・・
紫苑は、そう思って、階段を見上げた
蓮花君がいた
苦しそうな表情をして、こちらを見下ろしていた。
え
なんで?
まさか蓮花君が紫苑を突き飛ばしたの?
なぜ?なんで?
蓮花君とは友たちだと思ってたのに
「何でそんなことするの、蓮花君。」
気がついたら紫苑は、そうつぶやいていた
紫苑の声は、周りに人がいなかったせいかよく響いた。
紫苑が言った言葉に蓮花君は、驚いた顔をした。
ああそうか
そうだよねー!
嫌いだからだ
紫苑のこと、嫌いになったから、階段から突き落としたんだ
「紫苑も、紫苑のこと階段から突き落とす奴なんか、蓮花君のことなんかっ大っ嫌い!」
途端に蓮花君は、傷ついたような顔をした。
何?
自分は紫苑の事階段から突き落としておいて、紫苑に大嫌いと言われたら傷つくの?
意味が分からない!
もう、許さない!
いつも・・・・・・いつもいつもいつも紫苑だけ!!
…………………………………………………………………………
・・・・・・・・・・・・本当に蓮花が紫苑君を階段から突き落としたのかな?
もし、蓮花が犯人なら、紫苑君のことを突き落とした後、加害がばれぬよう、すぐにその場を去るのではないだろうか。
それに、あの顔。
絶対に誤解してたよね蓮花君
まあ、あの体制じゃ、そう思うか
それに、紫苑君が階段から落とされたことだって、紫苑君の口から聞いて初めて知ったみたいだし・・・
紫苑君に伝えたほうがいいかな?
いや、別にいいか。
僕はあいつが嫌いだし!
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